其方に視線を動かせば、ショウくんの細い指が私のカスタード色の髪を梳いていくのが見える。一昔前の少女漫画に出てきそうなキラキラおめめが描かれたアイマスクをスルーして髪に興味を持つあたり、彼はかなりマイペースな人間だと私は踏んだ。
なんて考えながらその動向を静かに見ていると、不意にショウくんの薄い唇が緩やかに弧を描き、「プリンみたい」と紡いだ。
発言の意図がよくわからず暫く考え込んだ後、私の髪を指してそう言ったのだと気付き、なんだか妙に照れくさくなる気持ちを誤魔化すように反対側のカラメル色の髪を撫でる。
「ああ…髪のことか。
最ッ高にカワイーでしょ、超お気に入りなんだー!」
ショートヘアの右側はカラメル色で、ロングヘアの左側はカスタード色。正にプリンとしか言い様がないこのツートンカラーヘアーとは、小学三年生からの長い付き合いだ。
思い出に耽る私の隣でカスタード色の髪に触れたまま、ショウくんは再び口を開く。
「…いいなあ…」
呟くような羨望の声。
彼の、思ったことを何の躊躇いもなく言葉に出来てしまうところは、ふわふわな金色の髪をした私の友人によく似ている。
…参ったなあ。私、自分に正直な人、大好きなんだよね。
「ショウくんも、」
プリンヘアーにしちゃえーとおどけながら言おうとしたその時、突然視界が大きく歪んだ。眉間が酷く痛んで、目を開けていられない。
「……笑子さん…?」
霞む視界の中、不思議そうな顔で首を傾げるショウくんに手を伸ばす。なぜだかはわからないけど、今を逃したら、もうショウくんには会えない気がする。
だけど指先すら触れられずに、私の意識はブラックアウトした。
作者:在原