とあるビルの屋上に、手すりから身を乗り出して街を見下ろしている少女が一人。
アリス(鏡)「おー、やってるやってる! イイ感じだねー!」
大きな三角帽子が風に飛ばされないよう片手で押さえながら、鏡のアリスはけらけらと笑う。
地上では、たくさんの人達が蟻のように、ちょこちょこと走り回っているのが見えた。
あちこちで煙が立ちのぼり、時折銃声や爆発音が響いてくる。
アリス(鏡)「さてさて、今の戦況を確認しようかな」
彼女はポケットから四角い手鏡を取り出し、それを覗きこむ。
アリス(鏡)「鏡よ鏡、今そっちの世界にいるのはだあれ?」
彼女が唱えると、鏡面に文字が浮かび上がる。
アリス(鏡)「あららー、もう何人かやられて……ってフェンリル! もうやられてんじゃん!」
彼女は顔をしかめた。鏡に浮かび上がったのは、フェンリル、井ノ本透伊、天津中主の3人の名前であった。
鏡の中から呼び出された者が倒されると、その魂は鏡の中へと帰される。手鏡に映っている名前は、戦闘に破れた者達の名前なのである。
アリス(鏡)「全く、しょうがないなぁ……」
溜め息をつきながら、近くに立てかけていた杖を手に取る。彼女はそれを高く掲げると、呪文を唱えた。
アリス(鏡)「『アリス・イン・ワンダーランド』!!」
一瞬杖の先が黒く光る。すると、手鏡に浮かんでいた3人の名前がスッと消えた。
これは、彼らが再び現実世界に呼び出されたという事だ。
アリス(鏡)「ふふ、鏡の住人は何度でも復活するよ。私の理想郷が完成するまではたっぷり働いてね?」
誰もいない屋上で、彼女は一人ほくそ笑んだ。
作者:パラソル