出血の止まらない腕を押さえながら、鬱蒼とした森を走り抜ける。滴り落ちる血はポタポタと地面に染み込み、赤い道を作った。
「ここまで来れば……大丈夫ですかね……」
召喚師は自分が走ってきた方向を見て呟き、木に寄りかかって座り込んだ。傍らでは一緒に逃げてきた白い狼ルフが低く唸る。
「……ダイジョウブカ、サマナー」
「いやあ、自分は平気ですが……ルフこそ怪我してますね」
「オレサマ、ヘイキ」
ルフはそう言うと、地に伏せる体勢になった。やはり消耗していたのだろう。
今回は完全に自身の油断が招いた結果だ。まさかあのような強大な悪魔が出現するとは思っていなかった。おかげで仲魔達はほぼダウン。回復させる暇も無いまま、辛うじて動けるルフと共に命からがら逃げ延びてきたのだ。
「これからどうしましょうかね……」
地面に伏せるルフを撫で力無く呟いた、その時。
大きな影が、召喚師の視界を覆った。
作者:邪魔イカ