召喚士と萩2

「!?」

視界が急に暗くなり、咄嗟に顔を上げる。そして目の前に映り込んだものに、召喚師は目を見張った。

「う、うさぎ……?」

否。兎の被り物を被った人間だった。異様に背が高く、腰を曲げて召喚師の顔を覗き込んでいた。

「怪我してんのかァ?」

背の高い兎はどこか楽しそうに言った。声からして、この兎は雌―――否、女性であることが分かった。

「そっちの犬っころもボロボロだな」

「グゥゥ……」

『犬』と言われたのが嫌だったのか、ルフは不服そうに唸る。その様子を見て兎はやはり楽しそうに笑った。

「そう嫌そうなツラすんなよ。歩けるか?私の屋敷で手当てしてやるよ」

兎が手を差し伸べてくる。恐る恐るその手を取って立ち上がり、改めてその兎をまじまじと見つめた。兎はクツクツと笑っているだけだ。

「あの、一つ聞きたいんですがね……貴女は何者なんですか?」

兎がこちらに振り向く。そして「うーん?」と漏らしてから

「私か?私は萩だよ」

萩。それがこの兎の名前だと理解するのには少し時間がかかった。

 

作者:邪魔イカ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年05月22日 03:33