「!?」
視界が急に暗くなり、咄嗟に顔を上げる。そして目の前に映り込んだものに、召喚師は目を見張った。
「う、うさぎ……?」
否。兎の被り物を被った人間だった。異様に背が高く、腰を曲げて召喚師の顔を覗き込んでいた。
「怪我してんのかァ?」
背の高い兎はどこか楽しそうに言った。声からして、この兎は雌―――否、女性であることが分かった。
「そっちの犬っころもボロボロだな」
「グゥゥ……」
『犬』と言われたのが嫌だったのか、ルフは不服そうに唸る。その様子を見て兎はやはり楽しそうに笑った。
「そう嫌そうなツラすんなよ。歩けるか?私の屋敷で手当てしてやるよ」
兎が手を差し伸べてくる。恐る恐るその手を取って立ち上がり、改めてその兎をまじまじと見つめた。兎はクツクツと笑っているだけだ。
「あの、一つ聞きたいんですがね……貴女は何者なんですか?」
兎がこちらに振り向く。そして「うーん?」と漏らしてから
「私か?私は萩だよ」
萩。それがこの兎の名前だと理解するのには少し時間がかかった。
作者:邪魔イカ