散らばっている『もう一人の透伊だったもの』の破片を拾う。
「鏡……」
「おーい、透伊ー!」
透伊が小さく呟くと、遠くから透伊を呼ぶ声が聞こえた。ヌシと結が走ってこちらに向かってきている。
「お前も、出会ったんだな?もう一人の自分に……」
透伊の前に着いた結が、息を切らしながら問いかける。も、ということはこの二人も遭遇したのだろう。
「まあ、一応」
「しかしよく無事だったな。とっくにやられていると思ったぞ!」
「ええ……」
いつもなら笑顔で毒づき返すヌシの憎まれ口も、なんとなくそんな気分になれず適当に流す。そんな透伊の様子を不思議に思ったのか、ヌシと結はお互いに顔を見合わせた。
「どうした透伊。何かあったのか」
結が心配そうにこちらを見る。
「んー、何でもないですよ。それより早く行きましょう。今回の事、少し調べる必要があるみたいです」
二人を置いてスタスタと歩いて行く。後ろでヌシが何やら騒いでいるが、気にすることも無いだろう。
(変わってない、か……)
ふと空を見上げると、重苦しい曇天が混沌とした異世界に暗い影を落としていた。
作者:邪魔イカ