「命のやりとりをしよう?」
瞬時に右手で刀の柄を掴み、高速で刀を抜き、首に突きつけた。
「は、はい……?」
水は思わぬ展開に驚いたのか、首を刀のある方向と反対に傾け、ひきつった笑みを浮かべている。
「つまり、殺し合いだよ。君、強いでしょ?たぶんだけど」
理玖の口元は心底楽しい、というかのように歪んでいるが、目は見開かれ、全く笑っていない。
理玖はその『笑顔』のまま、水の首を撥ね飛ばそうとスライドさせる。
「っ!」
水は側転の要領で刀を避け、少し距離を取ったところで理玖を見る。
対して理玖は避けられるのは予想していた、という様子で、刀を握り直し、水に近づく。
「あの、こういうの興味ないんですけど……」
「じゃあ大人しく死んだら?」
水が控えめな抗議をするも、あっさり死ねと言う理玖。
「戦うの嫌いなの?どうして?殺したくないからとかいう甘っちょろい理由?」
矢継ぎ早に質問をしながら、水の肩に刀を刺そうとする。
(なんなんだこの人……武器を奪ったら諦めてくれるだろうか)
水は理玖の刀を奪おうと、肉体が切れるのを厭わず刀の刃の部分を掴む。しかし――
(何?力が抜けるような……この刀のせい?)
力を奪われるような感覚に陥り、思わず刀から手を離し、後ろに跳んで攻撃を避ける。
「ふふっ、驚いた?こいつ、命を食うらしいんだよねえ」
何がおかしいのか、声をあげて笑いながら、刀の性質を話す。
その理玖の視線は、水の手に注がれていた。
「もうふさがってるね、すげえ」
感心したように言い、
「腕とか斬っても再生するの?」
と言いながら、一気に間合いを詰め、水の左腕を斬り落とそうと刀を振るう。
が、さらに後ろに跳ばれ、避けられてしまう。
「また避けるの?避けるばかりじゃなくてなにか反撃してよ」
不満そうな声をあげる理玖を見て、水は考える。
(どうやって逃げようか……そうだ!)
水が理玖の方へ向かって走り出す。
理玖は待ってましたというように、さらに笑い、水に刀を向ける。
水が理玖の間合いに入るか入らないかくらいに近づいたとき、水が跳躍した。
「!」
理玖は攻撃されると思い、防御の姿勢に入るが、水は理玖の頭上を飛び越えただけで、何もしなかった。そして、
「他を当たってくださーい!」
と叫びながら、森の中を走って行った。
「……ふっ、あはははは!」
しばらく呆気にとられていたが、心底おかしいといった様子で声をあげて笑い出した。
「ははっ、なんだあれ!くくっ、ふははっ!」
『笑い転げてるところ申し訳ないが、あいつは倒せないと思うぞ』
理玖が思い切り笑っているところに、妖刀が水を差すような発言をした。
しかし理玖は妖刀の発言を無視して、ひとしきり笑ったあと、呼吸を整えて言った。
「殺す気はないよ、殺せないだろうし」
『その割にはえらくご機嫌だな、どうしたんだ?』
「いやあ……いい玩具になってくれそうだと思って……ふふふっ」
また笑い出した理玖に、妖刀は、やっぱりこいつ変態だ、という感想を持った。
作者:銀