フェン「なあ、まだ買うのか?」
高く積み上げた荷物のせいで視界が悪い。フェンリルは前が見えずフラフラしながら、少し前を歩く少女に聞いた。
「うーん、もうちょっと!足りなかったら困るし…」
フェン「おい冗談だろ。これだけあっても足りないってのか」
視界が悪くなるほど高く積み上げた荷物、その中身全部が食い物だっていうのに。
フェンリルは今、相方の買い物に付き合わされているわけだが、様々な食べ物の匂いが混ざりあって、段々と気持ちが悪くなってきていた。
フェン「もう宿に戻るぞ…」
「ダメだよ!だってまだ、リルの分買ってないんだよ!?」
フェン「俺の分入ってなかったのか、うん。分かってた」
金はフェンリルが稼いだものだが、大食いの相方のせいでいつもあっという間になくなってしまう。フェンリルは相方の食費を稼ぐために仕事をしに行っているようのものなのだ。仕事といっても、まともな仕事ではないのだが、選んではいられない。
フェン「俺の分はもう良いから、帰るぞ」
「リル、ちゃんと食べないとダメだよ!いつ何があるか分からないんだからね!」
フェン「いやいい、マジで吐きそ…」ウプ
「もー、しょうがないなぁ…」
相方は自分のポーチの中身を漁ると、飴を一袋取りだし、フェンリルに差し出した。
「はい!」
フェン「なんだ?」
「なんかあったら大変だから、飴!12個入り、一日3つで4日分の非常食!」
フェン「それお前の好物じゃねえか」
「うん、でもあげる!」
フェン「いいよ、お前が食えよ」
フェンリルは、食べ物の恨みは恐ろしいことを知っている 。昔、相方の飯を一口頂いただけで…フェンリルは思い出して身震いをする。
「だめだめ!リルのために取っておいたんだから!」プルプルプル
フェン「…泣きそうな顔で握りしめてるくらいなら、お前が食え」
「ダメ!あげるの!」
相方はフェンリルの腰のポーチを勢い良く開けると、叩きつけるように飴をポーチの中に押し込む。フェンリルはその衝撃で大きくよろけるが、バランスを取ってなんとか踏ん張った。食い物を落としたりしたら、相方に殺されると確信したからだ。
「非常食だからね?分かった?私の目の前では食べないでね?」
目の前で飴を出したら、腕ごと食われるんですね分かります。と、フェンリルは心の中で呟いた。
フェン「分かったよ。んじゃ貰っとくぞ」
「うん!」
相方は笑顔で答えた。
作者:R