俺は幽霊だ。
幽霊の中には、生きてる頃の記憶があるやつもいるらしい。
が、俺には生前得たであろう知識以外、何の記憶もなかった。
別にそれで困ったことはないし、特になんの感情も持たない。
記憶がないことは、どうということはない。だが……
「……っく……ぐすっ……」
目の前で泣いている少女に、何も出来ないことは、少し辛い。
生きていれば、涙を拭くことも出来るし、抱きしめることだって出来る。
でも俺は幽霊だから、ハンカチを持つことも出来ないし、少女に触れることすら出来ない。
さっきから奇跡が起きないかと、少女に触れようとしているが、全部少女を通り抜けてしまう。
それが悲しいのか、少女は余計に泣いてしまう。
何も出来ない自分が、とても悔しい。
俺は、どうして死んでしまったんだろう。
「ユウ?どうしたの?」
名前を呼ばれはっとする。
今のは夢だったんだろうか。幽霊でも夢を見るんだろうか。
そう考えていると、目の前の少女も同じことを思っていたのか、
「夢でも見てたの?幽霊でも夢を見るんだね」
そう言って、少女はにっこりと笑う。
泣いてばかりだった子が、少し変わった『友達』が出来て、人間は嫌いなままだけど、人間とも仲良くできるようになって、笑顔が増えた。
たまに泣くこともあるけれど、昔と違って涙を流しても、体温を感じることが出来るし、涙を拭いてくれる奴もいる。
それでも、たまになんで死んじゃったのか、と思うときはある。
生きていたら、人間を嫌って、人間から離れて暮らすようなこともなかったんじゃないか、と。
「さ、一緒にお散歩いこ!」
『あぁ』
けど、幽霊じゃなかったら、こんな風に笑いかけてくれなかったかもしれない。
幽霊だから笑顔に出来るんだ、と考えると、幽霊も捨てたもんじゃないな、と思う。
作者:銀