そんな素直な答えに女の子は面食らったようで、目を丸くする。
そしてすぐに呆れたような視線を送ると、
「……やっぱり、ばか…」
「えええっ…!?」
ストレートな一言に紅ちゃんがショックを受ける。でも、この接し方は大分警戒を解いてくれた証拠なのかもしれないなあ、なんて思うとすごく嬉しい気持ちになった。
紅ちゃんもそう思ったみたいで、「ひどいよー、」なんて言いながらも笑っていた。
そんなことを考えていると、不意に昼休み終了を告げるチャイムの音が鳴り響く。
「あ…アリスちゃん、お昼休み終わっちゃう!」
「わっ大変、早く戻らないと……ねえ、最後に名前教えて!」
「……まあ、名前教えるくらいはいい…か」
女の子がぼそりと呟いた言葉は風に流されて聞こえなかった。それには私も紅ちゃんも首を傾げる。
「?なんて言ったの?」
「別に。なんでもない……マイカ」
「えっ?」
「だから!私の名前……マイカ!」
小さな声だったから最初は聞き逃しちゃって、聞き返したら今度は大きな声で返ってきた。
――ちゃんと名前を教えてくれた。
ふと隣にいる紅ちゃんを見ると、その表情は花が咲いたみたいにぱあっと明るくなっていって。
「マイカちゃんかあ……素敵な名前だね!」
「…なっ…」
紅ちゃんが屈託のない笑顔を向けてそう言うと、“マイカちゃん”は顔を赤くして俯いてしまった。
作者:まふらー