「おねえさん、つぎはたべちゃうからね」
フェン「そうかよ、でも猫舌じゃあ食えないぜ!クレヴォフレイム!」
フェンリルがそう唱えると自身の足元から炎が現れ、腕や足に巻き付くように体を覆っていく。
フェン「退くなら今だぞ。深追いはしないからどっか行け」
「それはできないよおねえさん、わたしはおなかがへってるんだもの」
フェン「そうかよ。じゃ、焼かれて死んでも恨むなよ…!」
フェンリルは体に炎を纏ったまま、一直線に走り間合いを詰めていく。
「むだだよ、さっきのわんちゃんみたいにたたきころしちゃうから」
幼女はそう言うと、さっきのように腕を伸ばし鞭のように振るい、両腕を横に薙ぐ。
フェンリルはわざと体勢を崩しスライディングで一波目を避けると、二波目は自身の真上を通過する瞬間に手を伸ばし、幼女の腕をガッチリと掴まえた。
幼女の腕はゼリーのようなつかみ心地で、心なしか肌が透けている。フェンリルは炎を纏った手で掴んだため、掴んだ部分がブクブクと沸騰し蒸気が立ち上る。
フェン(やっぱコイツの体、水分みたいなのでできてんのか)
「あちちちちちち」
幼女はフェンリルを振り落とそうと腕を左右に振るが、フェンリルは幼女の腕をしっかりと掴み、なかなか離れない。
「よこがだめなら、たてだー」
幼女はそう言うと、今度はフェンリルを地面に叩き付けようと腕を大きく振り上げる。幼女が振りかぶり、腕を降り下ろすその瞬間、フェンリルは幼女の真上でパッと手を離した。
「さっきとおんなじ?あはっ、たべちゃうよー」
幼女は再び体を変形させ、馬鹿みたいに大きな口を開けてフェンリルをひと飲みにしようと下で構える。
フェンリルは体に纏っていた炎を瞬時に消し去ると、真下に向かって肘を伸ばし、幼女に手のひらを向ける。
フェン「どっちの口がでかいか、コイツと勝負だ!来い、神殺しの魔獣!!!」
フェンリルがそう叫ぶと、伸ばした手のひらから大きな魔方陣のようなものが現れ、そこから巨大な狼の頭の形をした炎が出現する。
魔方陣から首までを出した巨大な狼は、ゆっくりと口を開き幼女をひと飲みにしようと、迫っていく。
フェン「食ってみろよ!神も食い殺す魔獣をなぁ!」
「そんなこうげき、あたるもんか」
幼女は狼から距離を取ろうとするが、何かを察して振り返る。その瞬間、炎で作られた犬サイズの狼が四頭、幼女に飛び掛かり、肩を押さえつけた。狼達は暴れる幼女を逃がすまいと、胴体や首にも噛みつき、唸り声を上げる。
「なんで、あついあついあちちちちち」
フェン「お前が叩き落とした炎狼達だ。形が崩れたせいでサイズはちいせぇけどな、消火されねぇ限りは操れんだぞ」
幼女はなんとか逃げようと体をくにゃくにゃと変形させるが、その度に狼達に噛みつかれ、なかなかその場から逃げられずにいる。
その間にも、神殺しの魔獣は幼女にどんどん迫っていき、あとはそのまま幼女を飲み込むだけだ。
「あ」
幼女がそう呟いた瞬間、バクンッという音と共に幼女の姿が見えなくなった。
作者:R