悪魔とスライム3

「…やったか?」

数秒置いた後、地面に着地したフェンリルが手で軽く払う仕種をすると、神殺しの魔獣は煙のように消えていく。
魔獣が食らった跡に残ったのは、黒焦げになった瓦礫と地面、そして炎に包まれた丸い物体だった。フェンリルがそれに近づき見てみると、物体は燃えながら沸騰し、マグマのように熱を放っていた。

フェン「これ、さっきのヤツ…だよな?」
「あ…ああああついよぉ…おお」
フェン「生きてんのか!?マジかよ…はぁ」

苦しそうに呻く物体、フェンリルはちょっと可哀想になり燃えるその物体に触れ、ボソッと呟く。

フェン「デア・フロガ」

すると、その物体から熱が引いていき、物体を覆っていた炎はフェンリルの手のひらに吸い寄せられるように集められ、軽く拳を握ると消えてしまった。
熱が取り除かれた物体は、ぷるぷるした透明な物体となった。だが、元の幼女のサイズと比べると、とても小さくなってしまったようだ。サッカーボール程の大きさしかない。

フェン「小さくなったな、お前」
「じょうはつしちゃったんだよ、しばらくはひとのかたちにもなれないよー…」
フェン「正当防衛だ、謝らねぇぞ」
「もうたべないよ、あついのいやー」

幼女(だと思われる物体)はそう言うと、スライムのように地面を這っていき、隙間から排水溝へと入り込んでしまった。

フェン「おい、大丈夫なのか」
(自分でやっておいて言うのも変だけどよ)
フェンリルは四つん這いになり、排水溝の隙間から声を掛ける。返事はないが気配はある。体が元に戻るまで、ここに隠れるつもりなのか。

フェン「お前、腹へってんだったな。飴しかねーけど、食うか?」

フェンリルの問いかけに数秒の沈黙の後、幼女は排水溝から無言で手(だと思われる透明な触手のようなもの)を伸ばし“寄越せ”と催促する。フェンリルはちょっと笑うと、腰のポーチから飴玉を3つ取りだし、幼女の手に乗せる。
排水溝に手が引っ込むと、すぐに聞こえる包装紙を剥がす音。

「……おいしい」
フェン「だろ、元の世界から持ってきたもんだ。味わって食えよ」

幼女に敵意が無いと分かったフェンリルは、排水溝の近くの瓦礫に腰掛ける。戦いで疲れたので少し休憩するつもりのようだ。

「…おれいはいわないからね、もうあめはかえさないし」
フェン「別にいいよ」
「…へんなやつ」
フェン「お前もな」

「…あんたきらい」
フェン「はっ、俺もだよ」
 

作者:R

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年05月24日 00:47