目蓋が重い。力を込めて何とか目をこじ開けると、そこは見知らぬ場所だった。
否、本当は知っている場所なのかも知れない。砂埃のせいか急激に光が入ったせいか、周りがよく見えなかった。
とりあえず起き上がろうとするが、体に力が入らない。体がいやに重たい。まるで、自分の体でないような―――
「気が付いたかい」
声が聞こえた。変声期半ばの少年の様な声だ。顔は見えないが、白衣のような服を着ているのは分かる。
返事をしようと口を開くが、声が出ない。
「あー、いいよ。無理して話そうとせんでも」
人影が溜め息を吐く。そして、
「すまなかった」
突然の謝罪の言葉。影は申し訳なさそうに話し始めた。
「瀕死状態の君の命を助けるには、これしか無かった」
影は消え入りそうな声で続ける。
「その体は君にとって、重い枷になるかもしれない。でも、君は君の思うように生きてくれ」
そう言い終わると、影はすっと立ち上がり歩き始めた。
(待って)
手を伸ばしたいのに、伸ばせない。体が動かない。影と、意識が遠退く。
その瞬間、目の前を闇が包んだ。