飛ばされた者達~神埼編 > ifストーリー~

目蓋が重い。力を込めて何とか目をこじ開けると、そこは見知らぬ場所だった。
否、本当は知っている場所なのかも知れない。砂埃のせいか急激に光が入ったせいか、周りがよく見えなかった。
とりあえず起き上がろうとするが、体に力が入らない。体がいやに重たい。まるで、自分の体でないような―――

「気が付いたかい」

声が聞こえた。変声期半ばの少年の様な声だ。顔は見えないが、白衣のような服を着ているのは分かる。
返事をしようと口を開くが、声が出ない。

「あー、いいよ。無理して話そうとせんでも」

人影が溜め息を吐く。そして、

「すまなかった」

突然の謝罪の言葉。影は申し訳なさそうに話し始めた。

「瀕死状態の君の命を助けるには、これしか無かった」

影は消え入りそうな声で続ける。

「その体は君にとって、重い枷になるかもしれない。でも、君は君の思うように生きてくれ」

そう言い終わると、影はすっと立ち上がり歩き始めた。

(待って)

手を伸ばしたいのに、伸ばせない。体が動かない。影と、意識が遠退く。
その瞬間、目の前を闇が包んだ。
 

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最終更新:2014年05月25日 21:23