聞き込みを始めて数時間。有力な情報は殆ど無かった。結は道端のベンチに座り、ふう、と溜め息を吐いた。
(まあ、簡単に見つかる訳がないか……)
結はもう一度溜め息を吐いて、聞き込みを再開しようと立ち上がった。が、その拍子に
ドン
―――人にぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「いえ、こちらこそ……って」
ぶつかった人を見て、唖然とする。薄い肌や髪の色に、黒い瞳、そして白衣。
写真に写っている『井ノ本 透伊』そのものである。
「本当にすみませんでした。では」
目の前の人物が歩きだす。結ははっと我に帰り、彼―――彼女か?―――を呼び止めた。
「あ、あの、すみません」
「えっ当たり屋ですかすみません俺今お金無いです」
とんでもない誤解をされている様な気がする。結は早く話を切り出そうと、写真を取り出して見せた。
「井ノ本透伊さんですか?」
目の前にいる人物は少しだけ目を丸くした後、何でもないように「そうですが」と言った。