邪魔イカSS~透伊ちゃんと結さんの出会い編5~

「おねーさんのお仕事は俺をそいつらの所に『連れていく』だけなんでしょ?じゃあ俺がそいつらの所に行ったらおねーさんとそいつらとの繋がりは無くなる。んで、俺は研究室に入ることを正式にお断りすれば万事解決!誰も損しないよ!」

昨日、透伊は自信満々にそう話していた。作戦と呼ぶのもおこがましいものだが、結にはそれしか出来ることが無いので乗っておいた。実際、研究室に入るかどうかは透伊の自由だ―――依頼人が損をするということは敢えて突っ込まないでおくが。


透伊の拒絶の言葉に、男は少々面食らった顔をした。が、その直後に頭を抱えて笑いだした。

「ハハハハハハハハハハッ!嫌ですか!ならば……」

チャキッ


男の後ろに控えていた数人の男達が、一斉にナイフを取り出す。

「力ずくで」

その言葉を合図に、ナイフを持った男が透伊に襲いかかる。

「なっ………」

結は咄嗟に後ろに下がったが、透伊は白衣のポケットに手を入れて動こうとしない。ナイフが透伊に届く、という所で


ガッ


透伊が足を振り上げた。その足は男の手首にクリーンヒットし、男は痛みのあまりナイフを落として蹲った。それを見た残りの男達が透伊に向かってくる。透伊は男達の攻撃をヒラリヒラリとかわし、一人には頭に上段回し蹴り、一人には腹部に膝蹴り、もう一人は足払いで次々と倒していく。
あまりの事で思わず見入ってしまったが、よくよく考えてみればこの男達は銃刀法違反に傷害未遂、事務所で暴れられたので器物損壊も追加で立派な犯罪者である。
しかし、今の結は警官ではない。仕方なしと携帯電話を取り出し通報しようとしたその時。

「動くな!!」

すぐ後ろで、依頼人の男が声を荒げた。首の辺りに腕を回される。
取り押さえられた。
透伊が驚いた様に此方を見る。こめかみに硬い物が押し付けられた。拳銃だ。

「大人しくしていないと、この女を撃ち殺すぞ」

ぎり、と腕に力が込められ、銃を更に強く当てられる。

「……っ」
「交渉だと思っていたら大間違いですよ。そこから少しでも動けばこの女を…って」

男の言葉が止まった。結が顔を上げると

透伊が此方に向かってツカツカと歩いてきた。


「えええぇえぇぇえぇええ!?」


思わず男と声を合わせてしまった。透伊は何事も無かったかの様に歩いて来ている。

「おまっ……話聞いてなかったのか!?撃つっつってんだよ!この女を!!」
「はっはっは。撃てるもんなら撃ってみろよ。そのチャカは飾りかぁ?」
「挑発するな馬鹿あああ!」

透伊の挑発に完全に怒ったらしい。男は叫びながら銃の引き金に指をかける。

もうどうにでもなれ!


「いい加減にしろこの馬鹿者どもがああぁ!!」

結は男の襟首を掴み、そのまま勢いをつけて投げ飛ばし、床に叩きつけた。

 

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最終更新:2014年05月27日 01:30