その後、依頼人達は無事お縄についた。あの大金は事務所の補修やテーブル等の修理費にあてるため、調度良かったかもしれない。
「いやー、一件落着!良かったね~」
「…………どの口が言うんだ、その台詞は」
事情聴取から戻って来たらしい透伊が、ケラケラと笑った。寧ろ何故笑えるのかが不思議だ。
「死にかけたんだぞ。お前も、私まで!」
結がそう言うと、透伊はまた笑って
「まあ、おねーさんなら大丈夫かなーって思って。警察って柔道とか必修なんでしょ?」
そこまで言われてはた、と気付いた。何故結が警官だったと知っている?
「そこの写真」
透伊が結のデスクを指差す。その先に、小さな写真立てがあった。結が警視庁に入った時の写真が入っている。左目の眼帯は無い。
「気付いたのはこの事務所に来てからだよ。まぁアイツがおねーさんに掴みかかってなけりゃ意味無かったけどね」
「そうか……」
結は呟いた後、ふ、と少し笑った。
そしてすぐに透伊の頭を掴む。いきなり頭を掴まれた透伊は「あひっ」と小さく奇声を上げた。
「だからといって、あんな無茶をして良いと思っているのか?」
「ごめんなさいおねーさん謝りますから頭を痛い痛い痛い痛い痛い」
結は溜め息を吐いて手を離した。透伊が顔を歪めて頭を押さえて蹲る。
「あうう……じゃあお詫びと言ってはなんですが、これからはおねーさんのお仕事に俺も協力するってのはどうでしょう?」
結を見上げながら、涙声で透伊が言う。
「探偵のお仕事だったら俺の研究も役に立つと思うし、おねーさんのお仕事手伝ってたら俺も新しい謎に出会えるかもしれないし、誰も損しないよ!」
またそれか。結はまた溜め息を吐き、透伊を見やった。透伊は傷みが引いたのか、ニコニコと笑っている。結もそれに釣られてフッと笑った。
「よろしく。おねーさん」
透伊が右手を差し出す。
「おねーさんじゃない。神原結だ」
色付き始めた世界に目を細め、結は差し出された手を握った。