作者:わんこ
レイチェルが茜に向かって投げた石がたまたま結の後頭部に直撃し、たまたまそばにいた譲を巻き込んで派手な銃撃戦が始まりましたとさ。
「ナレーション長すぎなくて?」
銃弾の雨の中、のんびりとレイチェルが感想を言う。
「問題起こした張本人が何言ってんだボケ!」
それに噛み付く茜。言葉とは裏腹にこちらも腕を組んであぐらをかいている。
「何よ、文句あるの?」
「大ありに決まってんだろーがこのスカタン!!」
ドチュン。叫ぶ茜の頭に弾がかする。
「うわッ」
慌てて瓦礫に身をひそめるレイチェルと茜。舞い上がる砂埃で視界が悪く、どこから鉛玉が飛んできているのか分からない。
「あ、あぶねーなー! なんて野郎だ!」
「全くよ、石ころ一つ頭にめり込んだくらいで」
「だからそれが発端なんじゃねぇかタコ!」
「うるせええええ! お前らごちゃごちゃ言ってねぇで手伝えコラァァ!!」
瓦礫の影からウージーを乱射しながら譲が叫ぶ。近くを巡回してただけなのに巻き込まれた彼が一番不憫である。
○ ○ ○
そんな三人組の、道路を挟んだ反対側。
「うおっほぉぉおお!! 久しぶりの銃撃戦だぞ! この風! この匂い! これこそ戦場よ!」
右手でデザートイーグル、左手でM16をぶっぱなしながら歓喜の声を上げる男がいた。ヌシこと、天津中主である。
「ヌシ殿ー。テンション上がるのはいいけど、あんまりやりすぎないでくださいよー」
天津の足元で神原結の手当をしていた井ノ本透伊がのんびりとした声を上げる。のんびりとした、譲のばらまく銃弾にもあまり気にしていないような口調だ。
「任せろ! 限界突破してやろう!」
「俺の話聞いてますか、ヌシ殿? あ、それはそうと、結さんのコレ(後頭部にめり込んだ石ころ)、取れませんよー。とりあえず俺の魔法で蘇生はしましたけどー」
「構わん!」
「構わんわけないだろうが!? 人事だと思って!」
思わず叫ぶ結。
「それはともかく、今回の相手は相当な手練だぞ、透伊! まったくもって攻撃が途切れない! リロードのタイミングがまったく分からない! 久々に楽しい戦いになるなァ! あーはっはっはっは!」
高笑いを上げる天津。
「あちゃー……これもうヌシ殿には何言ってもダメですねー、結さん」
「ほっとけ。そんなことより透伊、このめり込んだ石を除けてくれ」
「人生諦めって大事ですよねー」
「諦められるかァ!! 頭に拳サイズの石めり込ませたまま余生を生きろと言うのか!?」
「大丈夫ですよー、花の絵とか書いてオシャレにすれば」
「どこが大丈夫なのか全くわからん!」
「まーまー。もっと心に余裕を持たないと早死にしまウッ」
頭に弾が当たり、ぱったり倒れる透伊。
「うわああ!? 言ってるそばから死んだ!! 主さん! 主さーんッ!!」
「構わん!」
「せめてこっちを見てから言って! 透伊が! 頭が! パーンって!」
「いやぁ、ヘルメットがなければ即死でしたよー、結さん」
「わぁあ!? お前ウル○ァリンかよ! ていうか頭! 血がピューって出てるから! 親指立てて大丈夫アピールしてる場合じゃないから!」
○ ○ ○
そんなカオスが起きている場所の近くのビルの屋上に、千登世とポリシアが立っていた。
「ねぇポリシアちゃん、これ見て!」
千登世が手を差し出して見せてきたのは、丸い球体から導火線がちょろりと出た、いかにもな爆弾だった。ご丁寧にドクロのマークまで書いてある。
「……なんですか、それ」
一応礼儀として質問するポリシア。
「うふふ、これはねー、地球破壊爆弾!」
「なんでそんな物騒なもの持ってるんですか」
「さっき拾った!」
「危ないから元の場所に戻してきてください」
「大丈夫だよ、半径100mが吹っ飛ぶくらいだから」
「なんでそんな大層な名前つけたんですか」
「ちょっと盛ってみた!」
「ごはん小を頼んだらどんぶり飯が出てきたぐらいの盛りようですね。もはや詐欺ですね。とりあえず危ないから片付けといてください」
「うん、分かったよポリシアちゃん!」
ポリシアの言葉に笑顔で応じた千登世は、
「えーいっ」
ビルの外めがけて思いっきり爆弾を投げたのだった。
銃撃戦の最中、突如降ってきた爆弾が爆発してこの戦いは終わりましたとさ。ちゃんちゃん。
○今回の戦いでの被害結果○
・神原結 (頭蓋に石がめり込む。三日後に取れた)
・天津中主 (爆風をモロに浴びてネクタイを除く服が焼けた)
・井ノ本透伊 (譲のヘッドショットを喰らったが存命中)
・三方原譲 (全身火傷と愛用のパンツが焼けた)
・茜 (瞬間移動で爆発から逃れたが、直前にレイチェルに掴まれたスカートを失った)
・レイチェル (爆風でぶっ飛ばされて両足を骨折したが、茜のスカートを手に入れたのでご満悦)
・山田 (たまたま通りかかったところに爆弾が直撃、蒸発した)