作者:邪魔イカ
透伊「うん。とりあえずこんな感じかな」
紅「わかった!」
透伊「よし、じゃあ早速実戦だ。ここに訓練ロボットくん5号がいるかr……」
ザシュバチバチガシャーン!!!!
(大破する訓練ロボットくん5号)
紅「透伊ちゃん!こうかな!?」キラキラ
透伊「おおっふ………そ、そうだな(もしかしたら、俺はとんでもないことをしてしまったかもしれない……)」
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ここから作者:パラソル
――世界のどこか
大塚「ん…んん??」
言弁「どうした大塚」
大塚「いや、ちょっとこの地区なんだけどさ。これ見てよ」
言弁「…異様に戦闘力の高い娘がいるな」
大塚「そう。ドーピング的な何かで急に強くなったみたいでさ」
言弁「またバランスが崩れるな…」
大塚「このままじゃ色々面倒なことになりそうだし、ゴンちゃんには悪いけどまたバランス調整頼んでいいかな?」
言弁「その呼び方はやめろ…。そこは俺の管轄じゃなかったはずだが」
大塚「んまあ確かにポリシアの管轄ではあるんだけどさ」
ポリシア「私は基本的に戦闘はしませんよ。戦える能力持ってませんし。頑張って下さい"ゴンちゃん"さん(笑)」
言弁「…お前はよほど俺に斬られたいようだな」
ポリシア「止めてください死んでしまいます(棒)」
大塚「ま、戦闘に関しては実質君がナンバーワンだしね。頼んだよ言弁」
言弁「……仕方ない。このまま放置する訳にはいかないのも事実。俺が行こう」チャキッ
大塚「さすがSAMURAI!そこに痺れる憧れるぅ!ってことで宜しくー」
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ここから作者:邪魔イカ
井ノ本透伊は悩んでいた。悩みの種は霧崎紅。その原因を作ったのは他ならぬ自分自身である。
事の発端は、透伊が紅に『あること』を教えたのが始まりだったはずだ。『あること』とは、マーシャルアーツという素手戦闘の威力を上げる奥義の様なもの。紅が教えて欲しいと言うので教えたのだが―――
「まさかこんな事になるとは………」
マーシャルアーツを習得してからの紅は、一言で言うならば正に『無双』だった。あちこちで敵という敵を蹴散らし、辺りの被害は甚大。最近は『中央』の者たちにも目を付けられたようだ。
「俺が止めなきゃ………だよなぁ」
責任の一端は自分にある。特に中央に目を付けられているならば、急がなくては。
透伊は重い腰をあげ、地下研究室を後にした。
地上に出て、目的の人物を探し出すのには時間がかからなかった。何故なら―――
ザッ ドオォオオン!!
―――こういう事だ。透伊は爆発に巻き込まれないよう、離れた場所から様子を窺うが、
「ありゃ完全にキレちまってるな……」
透伊が見据える先には、すっかり我を忘れた瞳になっている紅。圧倒的な数の怪物達―――この世界の原住民の様なものだろうか?―――が次々と宙に舞う。その衝撃で建物が崩れ、また爆発が起こった。
「いやいやいや………勝ち目ねぇだろ常識的に考えて」
しかし、そんな事も言っていられない。透伊は覚悟を決めて紅を止めに入ろうとした。
瞬間。
「!?」
透伊の頬を風が横切る。否、それは風よりも速く鋭く、透伊の頬に赤い筋を残した。
透伊が後ろを振り向くと、杖をついた男が悠然と立っていた。この男には見覚えがある。
「あんた、大塚さんのとこの……」
そう呟くと、男は杖を構えた。刀を抜く時の構え。先程の攻撃はこれだったのか。
「……邪魔をするな、小僧」
地を這うような低い声で男が言う。透伊はムッとして、
「邪魔?そりゃあこっちの台詞ですね。俺は紅ちゃんを止めに来たんです」
男は一瞬だけ顔をしかめ、ゆっくりと構えを解いた。
「図らずも、目的は同じと言うことか」
え、という透伊の漏らした声も聞いていないのか、男はスタスタと透伊の隣に立った。
「これも仕事だ。……足を引っ張るなよ」
透伊は驚いて、そして苦笑しながら
「まぁ、努力はしますよ」
と嘯くことしかできなかった。
「獣化した紅ちゃんは、一言で言えば肉体が大幅に強化された状態になるみたいです。あと皮膚が硬化して刃も銃弾も通らなくなるようですね。本人曰く痛みは感じるみたいですが」
「……ならばどうする。痛みで気絶でもさせるのか?」
「いや、そこは俺に考えがありますよ。貴方は紅ちゃんの前で派手に刀を振っていれば良い」
「………気を引けと言うことか」
「Ja!後は俺が何とかしますよ……っと!」
言い終えるが早いか、透伊は一旦その場から離れる。ある程度準備をしなければならないからだ。残された男は首をコキコキと鳴らし、紅の前に立ちはだかる。
「……乗るしかない様だな」
男はまた杖を構えた。
ガキィン!!
獣化で強化された紅の爪と、男の刀がぶつかる。
「くっ………」
幹部格でかなりの戦闘力を持つ男でも、マーシャルアーツで更に威力の上がった紅の攻撃は堪えるらしい。しかし受けきれている所を見ると、やはりこの男も只者ではなさそうだ。
(……って、んな事考えてる場合じゃねーや)
透伊は息を潜め、今か今かとその時を待った。紅と男が離れ、再びぶつかり、鍔迫り合いになる―――
(今だ!!)
透伊は紅の背後へ飛び出し、ナイフを数個投擲した。案の定、ナイフは紅の手によって弾かれてしまう。が、
「狙い通り!」
透伊がそう叫んだ瞬間、紅の身体がガクリ、と崩れ落ちた。身体からみるみる内に刺青のような紋様が消え、紅の獣化が解ける。紅は眠ったようだ。
透伊はそれを確認して、その場に腰を下ろした。
「あー、良かった。生きた心地がしなかったぜ、全く」
「……どういう事だ」
男が刀を杖に戻しながら問う。透伊はヘヘ、と力無く笑い
「投げたナイフに、俺特製超強力睡眠薬『テラネムタス』を塗っておいたんですよ。微量でも皮膚に触れれば一発で意識が飛ぶ優れものです」
「……………………成る程。硬化しても皮膚は皮膚だからな」
「何すかその間は」
かなり険しい顔をされた。少しショックだ。ほんの少しだけだが。
そんな事をしていると、後ろから、
パチパチパチ
拍手だ。その後、場違いな明るい声が響く。
「いやーご苦労様、ゴンちゃん!」
男はまた険しい顔をする。こういうノリが好きではないらしい。
「その呼び方は止めろと言っただろう………大塚」
透伊はハッと後ろを振り向く。
「それと、ご協力感謝します。井ノ本透伊チャン?」
大きな猫の着ぐるみが、不気味に笑った。
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「で、これからどうするのさ?」
猫の着ぐるみ、もとい大塚が首を傾げて問う。
場所は変わって透伊の地下研究室の一室。いつの間にか透伊が普段一緒に行動しているヌシと結も来ていた。紅をベッドに寝かせて、透伊はその前にあるソファーにどっかりと腕組みをして座った。
「こうなった責任は俺にあります。俺がどうにかしますよ」
「方法はあるのか」
杖の男、言弁がまた険しい顔をする。透伊はへら、と笑ってどこからか分厚い本を取り出した。ヌシと結の表情が凍りつく。
「ヌシ殿、結さん。しっかり押さえて下さいね」
「………分かった」
「了解だぞー」
「ってヌシ殿は何で銃をこっちに向けるんですか」
透伊の言葉を了承した結が透伊の首に腕を回して押さえ付ける。ヌシは拘束された透伊に銃を突きつけた。ヌシはハハハと笑い
「発狂した奴には殺す気でかからないと、死ぬのは私達だぞ」
「ん……まぁ確かに」
結ではないが、納得できてしまう自分が嫌だ。
「……その方法とは、一体何なのだ」
言弁が痺れを切らしたように言う。透伊は自身の顔から表情が消えるのが分かった。
「記憶操作の魔術ですよ。俺が教えたことと、その前後の出来事の記憶を消します」
言弁が押し黙る。無理も無い。普通なら有り得ないことだ。大塚は「んー」と声を漏らし、頬をぽりぽりと掻いた。
「ま、そう言うなら任せようかな。俺達は帰ろう、言弁」
言弁は納得いかない様子だったが、大塚に促され部屋を出る。大塚もそれに続いて手をヒラヒラと振って出ていった。自然と溜め息が出てしまう。
「はぁ………それじゃ、始めましょうか」
透伊は眠っている紅の額に手を翳し、呪文を唱えはじめた。
「ん………ここ、は………?」
「お、起きたかい紅ちゃん」
「え、透伊ちゃん?あれ……私……」
目が覚めた紅は、ガバッと起き上がって辺りを見回す。自分が何故こんな所にいるのか、分かっていない様子だった。透伊はそれを見てクスクスと笑う。
「昨日は沢山歩き回ったからな~。疲れてたんだろ。ぐっすり眠っていたもんな」
「えっと……昨日?」
(なーんて、本当は俺もたった今起きたんだけどね)
透伊は心の中で呟いて自嘲する。紅は未だに考え込んでいた。
「はっはっは。まぁいいじゃないか、そんな事は。みんな待ってるし、そろそろ行こう」
「んー……うん!」
まだ腑に落ちない様子だったが、諦めたのだろう。紅は透伊の言葉に元気よく頷いて、歩き出した。
こうして一連の騒動は幕を閉じた。
が―――
「透伊ちゃんの足技って、スゴく威力高いよね」
「……んん?」
「どうやって覚えたの?」
「あ、あれ……?無限ループって怖くね………?」