作者:まふらー
…此処は何処だろう。気が付いたらアスファルトの上に寝転がっていた。今日もいつも通り学校に行き、ちゃんと授業を受けていた筈なのに。
「あ…授業中に具合が悪くなって、保健室で休ませてもらってた…んだ」
丁度保険医さんが不在で、いいのかなと思いながらもベッドに横になった…所までは思い出した。けれどその先の記憶は無い、という事は…
「…今は、夢の中に居るのかなぁ…?」
そう呟きながらむくりと起き上がる。周りを見回してみると見事に何もない…瓦礫以外は。
見た事の無い風景、念のために自分の頬を引っ張ってみると痛かった。
痛いという事は夢じゃないのだろうか…そう考えてしまえば途端に不安が押し寄せる。
「…どうしてわたし一人なの…?こんな夢、変だよ、こわい、よ…」
これが夢なのか違うのかもわからない、でもそんな不思議な現象が起こる筈無い、もし夢じゃないとしたらずっとこのままなのだろうか、全く見覚えが無く人も見当たらないこの場所で……独りで居ると悪い考えばかりがたくさん浮かんでしまう。思わず自分を抱きしめるように膝を抱える。
「………」
音が無く、今の自分にはモノクロにも見えるこの場所はあまりにも心細くて、無性に家族に会いたくなった。暖かい温もりが恋しくなる。
「……う、…」
…このままだと泣いてしまいそうだったから近くの瓦礫に身を寄せて目を閉じた。目が覚めた時には誰でも良いから人に会えますように、出来ればこれがただの夢でありますように、と願いながら…
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ここから作者:邪魔イカ
ドォン!!
「……っ!?何……」
けたたましい爆発音で目が覚める。恐る恐る瓦礫の陰から覗くと、爆風で砂塵が巻き上げられて、遠くが見えない。
(そんな……だ、誰が………)
逃げなければ。そう思ったはいいが、体が震えて動かない。暫くそうしていると、砂塵の中から人が飛び出して来た。
一人は男。金髪を赤いリボンで結わえており、丸眼鏡をかけている。両手には拳銃を持っていた。
もう一人は女の子だ。フード付きのパーカーにショートパンツという一見普通の格好だが、袖から見える手は明らかに普通の人とは違うものだ。
「むう、ジョーの奴め。いきなりグレネードとは……久々に死ぬところだったぞ」
金髪の男が服に付いた砂を払いながら言う。だがすぐにニッと笑って
「だが、狙いは定まったな。行くぞ、キリザキ!」
「はいっ!」
男とパーカーの女の子が同時に走り出す。日和は咄嗟に瓦礫に身を隠した。足音と声が近付く。
(お願い……見つからないで……)
「……!ヌシさん、何かいます!」
パーカーの女の子の声。足音が止む。日和は息を潜めた。心臓が早鐘を打って五月蝿い。
ふと、頭上に影がかかる。振り返ってみると、パーカーの女の子が覗き込んでいた。
「え、人?」
女の子が呟く。見つかった。
(どうしよう……どうすれば………)
女の子に続いて、金髪の男も駆けて来る。
「む、どうした?」
「ヌシさん、人!飛ばされて来たのかも」
「何?」
二人の話が、日和には理解出来なかった。飛ばされた?何の話だろう?
日和が呆然としていると、金髪の男は黒い箱を取り出した。無線機のようだ。
「あー、結か?ジョーに模擬戦は中止だと伝えてくれ」
男の言葉を最後まで聞かないまま、緊張の糸が切れたのか、日和は意識を手離してしまった。