第一次ケイドロ大合戦:ゲーム開始

ポリシア 「えー、皆さんお揃いのようですね。アテンションプリーズ」


 ビルの屋上に、マイク越しのポリシアの声が響いた。

 軍用ヘリポートと思わしき、だだっ広い空間に集まった数十人の人たち。あるものはグループを作って談笑にふけり、ある者は腕を組み静かにうつ向いている。

 全ての視線が集まったのを確認したポリシアが再び口を開く。


ポリシア 「さて、ゴムパンを作ることに定評のある大塚の無責任な発言から端を発したケイドロ大会が、今まさに始まろうとしてます」

山田 「仮にも上司にそういうこと言っていいんですか……」


 横の席に座ってた山田が思わず苦言を漏らす。が、それを無視して続ける。


ポリシア 「えー、ここ司会席には、主審の神原 結さん、副審の藤堂 斎さんをお迎えしております。実況は私、ポリシアと山田さんの二人で行ってまいります。よろしくお願いします」

藤堂 「どうもー」

結  「なぜ私が……」

ポリシア 「はいはい、黙ってくださいね。ではルール説明を山田さんからしてもらいます」

山田 「そんなん聞いてないんだけど……」

ポリシア 「ケイドロ、知らないんですか?」

山田 「いや知ってるけど……たしか、警察と泥棒に分かれてやる鬼ごっこみたいだよね?」

ポリシア 「そうです。このビルを中心とした半径1キロの中で、警察は泥棒チームを全員捕獲することを、泥棒チームは警察チームの持つ宝を奪うこと勝利条件に戦っていただきます」

結  「なるほど」

ポリシア 「さらに特別ルールその①として、『相手を戦闘不能にすること』も可とされます」

山田 「戦闘不能?」

ポリシア 「要するに絶命させてもイイよー、ということです」

結  「おいッ!」

ポリシア 「大丈夫です。そのために藤堂さんにお越し頂きましたので。ゲームが終われば皆さん元通りです」

藤堂 「へぇ、そういうことだったんだね。どうりで審判としてのオファーしか来ないわけだ」

山田 「しかし、それでは泥棒チームが圧倒的に有利じゃ?」

ポリシア 「はい。そのためのルールその②、『警察チームは一度だけ、絶命しても復帰可』があります」

山田 「な、なるほど……」

ポリシア 「警察チームが保護する宝は、この大塚の変なマスクです」

大塚 「こらぁ! 変ってなんだ! これでも気に入ってるんだぞ!」

ポリシア 「大塚は黙ってください」

大塚 「あ、すみません」

ポリシア 「……さて。それでは各チームの内訳を発表しますね。えーと」


 ポケットをがさがさ漁り、小さなメモ帳を取り出すポリシア。

 彼女が告げたチーム編成は以下の通りだった。


○警察チーム○
・大塚
・言弁
・サクラカマイローゼルヴィエラ
・千登世
 
 計4名


○泥棒チーム○
・怜
・フェンリル
・茜
・日和
・アリス・セレーネ
・下着ドロ太
・七瀬
・井ノ元 透伊
・天津 中主
・霧崎 紅
・レイチェル・ウル・ドラ以下略
「ちょっと! ちゃんと紹介しなさいよ!」
・黙ってください三方ヶ原 譲
・セクシーおじさん
・紅月 更紗

 計14名



フェンリル 「こら、発表を邪魔しちゃダメじゃないか」

レイチェル 「だってみんなフルネームなのに! ムキィィィ!」

譲  「おい! 俺の方が酷いぞ!」

アリス「それにしても、このチーム分け……」

七瀬 「幹部チーム vs その他もろもろ、ってところだね」

ヌシ 「ふっふふ、これっぽっちも負ける気がしないな、透伊!」

透伊 「そですねー。人数的にも余裕ですしねー。んあー」

譲  「んじゃ、前祝いに一杯やるか?」

セクシ- 「おぉお、譲殿! お供しますぞぉ」

日和 「ちょ、ちょっと、失礼ですよぉ」

更紗 「そうだぞ。まだ勝てると決まったわけではない」

怜  「なんでもいい……早く始めよう」


 それぞれの士気は上々、といったところである。

 

 思い思いに話す参加者達の、その反対側で。


サクラ「なんか好き勝手に言われてますね」

大塚 「だね……」


 幹部組、もとい警察チームの面々が固まっていた。今回の『宝』である大塚の着ぐるみマスクを中心に、各々腰を下ろした。


言弁 「まぁ、始まってしまえば分かることだろう」

千登世「そです! 私たちのパワフルコンビネーションで一網打尽っ!」

大塚 「そうだな、うっし、頑張るか!」

言弁 「というかポリシア殿は参加されないのだな」

サクラ「『私はめんど……審判役がいるでしょうから、裏方をやります。あとめんどくさいですし』って言ってました」

大塚 「一回本音隠した意味ねぇ!!」

千登世「でもポリシアちゃんいないのは痛いねー」

言弁 「うむ。偵察や隠密に一番長けているからな……」

大塚 「まぁ今更ぼやいたってしょうがないさ。よしッ……勝つぞ! お前たち!!」

サクラ「はいっ!」

千登世「あいさー!」

言弁 「応!」


 警察チームが気合を入れたのとほぼ同時に、ポリシアが試合開始前の呼びかけをした。


ポリシア 「はい、それじゃあ始めますよー。制限時間は丁度1日です。合図のあと100秒間は警察チームは動けませんので、泥棒チームはその間に逃げてください。では結さん、合図を」


結  「うむ。それでは……」


 ポリシアの言葉に一つ頷くと、目を閉じ、静かに右手を上げる結。

 しばしの逡巡、そして。


ポリシア 「正午です」

結  「第一次ケイドロ大合戦! 始めえッッ!!」

 曇り空に響き渡る結の大喝。

 それを合図に蜘蛛の子を散らすように三々五々駆け出す泥棒チーム。

 PM00:00。第一次ケイドロ大会の火蓋が切って落とされた。

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最終更新:2014年05月29日 02:36