銃さえあれば問題ないよねっ!

作者:R


レン「こちら異常なし、ドゾー」
スイ「こっちも異常なーし」


怜と透伊は今、ヌシの大事な銃が保管してある武器庫の前に来ている。武器庫とはいっても廃墟の中を片付けてそれっぽく銃を並べてあるだけで、たいしたセキュリティはなく入り口を金網と鎖で覆い、南京錠がかけてある程度だが。

レン「それにしても…物資が不足してるこの世界で、よくこれだけのモノを集めたわね」
スイ「全くだよ、どこから見つけてくるんだか」

透伊はため息をつきながら、白衣のポケットから大小様々な針金を取り出す。

スイ「さてと、怜ちゃん見張り頼むよ」
レン「うん」

南京錠の鍵はヌシが肌身離さずもっているので、盗むことは困難だった。そのため針金で地味に開けることになったのだが…。

スイ「…」カチャカチャカチャカチャ
レン「…」
スイ「…」カチャカチャカチャカチャ
レン「…」

スイ「……うん、開かない」キリッ
レン「チッ」スラッ(抜刀)

スイ「まっ…!?待って怜さん!
おおお落ち着いて!」アセアセ

ヒュンッ ガキィンッ!

スイ「…おー…真っ二つ…」
(これ切るためか、ビックリした…)

怜の短刀によって南京錠は真っ二つに切られ、床に落ちた。

レン「さ、行くわよ」チャキン
スイ「はいー…」

透伊は針金を片付け、怜の後に続く。

レン「おぉ…銃だ」

怜は目をキラキラさせながら色んな銃を見て廻る。

スイ「怜ちゃんは好きな銃とかあるの?」
レン「ない、いやどれも嫌いじゃないよ
ただ、撃てればなんでも良いと思ってる」
スイ「なるほど、こだわりはないのか」

レン「さぁて、どれを頂こうかな」

怜はかっこよさげな銀色の銃を選び、手に取ってまじまじと見つめる。
ずっしりと重く冷たいボディを久々に感じながら、表面上では無表情で、内心ワクワクしながらあれこれと弄っていた。

レン「うん決めた、これを貰おう」
スイ「終わったかい怜ちゃん」

レン「おーけ、あとは試し撃ちがしたいな
弾はどこかな…」ガララッガッシャー

スイ「怜ちゃん…!ボリューム小さめにね!
ヌシ殿地獄耳だから…!」(小声)

ヌシ「私の宝物庫で貴様らは何をやっているのだ?」
レン・スイ「!?」

スイ「怜ちゃん緊急事態だ、退路がない」

一つしかない入り口を、仁王立ちで塞いでいるヌシ。表面上はニコニコとしているが、どす黒い殺気を放っている。

レン「強行突破しかないわね」

怜は空っぽのガンホルスターに奪った銃をしまう。

ヌシ「おいおい、それは私の銃だぞ」
レン「どうせこの世界で拾ったもんでしょ、一個くらいくれてもいいじゃん」
ヌシ「何を言っている、カネがいくらあっても困らんように、銃がいくらあっても困ることはないのだ
大人しくそれを棚にもどし、私からの制裁を受けるが良い」

レン「やだね、あんたをぶっ飛ばして銃は必ずもらう」

ヌシ「ほう、私とやる気か?」
レン「やる気だから挑発してんだけど?」

 

二人は今にも食いかかりそうな気を放ってニコニコと見つめあっている。透伊は逃げることは困難であろうこの事態に頭を抱えながら、ヌシを見てそれから小声で怜に伝える。

スイ「怜ちゃん、ヌシ殿大分頭に血が昇っちゃってるから、実弾撃ってくると思うよ」
レン「上等、間合いに入ってぶった切る」
スイ「いや一応知り合いなんで手加減してくれない?」
レン「じゃあ峰打ちね、骨を砕くくらいの力で」
スイ「…」

ヌシ「逃げる算段か?無駄だ、今の私は鼠一匹逃がしはしない」

レン「あ、足下にゴキブリが」
ヌシ「ファッ!?」

ヌシが足下に気を取られた瞬間、怜は地を蹴る。二振りの短刀を抜刀し、ヌシをぶった切r峰打ちで倒すべく一気に距離を詰める。

ヌシ「甘いぞ小娘が…!」

ヌシはヌシで瞬時に懐から銃を一丁取りだし、怜の頭をぶち抜くべくトリガーを引く。普段から話す相手だろうが、銃を盗もうとする奴に容赦はしない。
怜は目前に迫る弾丸を紙一重でかわし、怯むことなく間合いを詰めていく。
そして懐に入ろうと一歩踏み出したところで怜は気がついた。ヌシがもう片方の手にも銃を握っていることに。

レン(回避…!)
怜は急ブレーキをかけバク宙で避けようとする。そして響く銃声と、被弾の衝撃で後ろに吹っ飛び、仰向けに倒れる怜。

スイ「…怜ちゃん!」

透伊は、倒れたまま動かない怜に走り寄り、抱き起こす。怜はぐったりとし、胸元からは赤い液体が溢れ出ている。

スイ「ヌシ殿!早く医者を!」

ヌシ「わっ、私は悪くないぞ!?このおなごが大人しく銃を返さないから悪いのだ!」
スイ「そんなこと今はどうでも良い!胸を撃たれてるんだ!早くしないと怜ちゃんが死んでしまう…!」
ヌシ「分かった分かった!呼んでくれば良いんだろう!?」
(盗人を撃っただけだぞ!何故私が負い目を感じなくてはならんのだ…!)

ヌシは慌てた様子で武器庫を飛び出していく。ヌシもまさかこんなことになると思っていなかったから、少しだけ、本当に少しだけ居た堪れない気分になっていた。
 

スイ「怜ちゃん……
…ぶふっ ぶはははははは!」

ヌシの背中を見送った後、透伊は笑いを堪えきれなくなり、血塗れの怜を抱えたまま笑い出す。

スイ「ヌシ殿はやっぱり単純だ!まぁ俺達が相当タチが悪いだけかもしれないけど?」

レン「ほんとね…てか“俺達”って言った?このプラン考えたのあんたでしょ」

さっきまでぐったりとしていた怜は何事も無かったかのようにむくりと起き上がり、首をコキコキと鳴らす。

スイ「いやでもこうも上手く行くとは、やられたフリが上手いね怜ちゃん」
レン「元の世界じゃ熊を相手に戦うこともあったからね」
スイ「え?」
レン「それにしても、役に立ったわね前に拾った血糊」
スイ「一体どこで拾ってきたのさ怜ちゃん…
それより弾は?当たらなかったの?」
レン「いや、当たったよほら」

怜が胸元を指差し、アーマーに突き刺さっている弾丸を摘まむ。

レン「アーマーがなかったら確実に死んでたわ、あっても衝撃で一瞬意識飛んだし…」
スイ「恐るべしヌシ殿…さぁ、あんまり長居すると帰ってきてしまう、早めにずらかろう」
レン「おーけ」

怜は立ち上がり、衣服に着いた砂利を払う。そしてふとガンホルスターから奪った銃を取りだし、もう一度眺めて見る。銃はかなり丁寧に手入れされていて、いかに大切にされているかが分かる。
(さっきはああ言ったけど、本当に小まめに手入れしてるんだ…これを貰うのは悪いかな
レン「……やっぱ辞めた」
スイ「へ?」
レン「私じゃここまで手入れしてあげれないし」

怜は元の場所に銃を戻してから、透伊の方に向き直る。

レン「それに、私はこの世界に銃を持ってこれなかった。ということはさ、私が銃を手に入れちゃったら反則な気がしない?」
スイ「えー…別に良いと思うけど」
レン「まぁ、今回は諦めてあげようかな
言い訳はすごかったけど一応医者を探しに行ってくれたわけだしね、優しいな私」
スイ「こんな芝居までうったのに!なんてもったいないことを…」
(ヌシ殿に一泡吹かせたかったのにぃいい)

スイ「じゃあ、今回は収穫ナシですか…」
レン「うん、銃は諦めてあげる。けど、実弾で私を撃ったことは許してない」
スイ「どゆこと?」
レン「フフフ…」

 

ヌシ「おい!どこ捜しても医者がみつからなkあれっ?」
武器庫に慌てて戻ってきたヌシは、素頓狂な声をあげる。何故なら、透伊も怜も跡形もなく消えていたからだ。そして数秒ポカーンとした後、自分が騙されたことに気が付いたヌシはこめかみに青筋を立て、拳をギリギリと握り締める。

「…あいつらあああああ!絶対に許さん!
私の銃をっ!…ん?」

ヌシは憤怒し武器庫を飛び出しかけるが、武器庫内をぐるっと見回すとなにも銃が盗まれていないことに気がつく。

ヌシ「何故だ?透伊と怜だぞ、ろくなことをしないに決まっている」

ヌシは懐から銃を二丁取りだし両手に構える。少し警戒しながら武器庫内を彷徨き、何かトラップが仕掛けられていないかを探るが何も仕掛けられていない。
ヌシ(あるとしたら、ロッカーの中か)
ヌシがロッカーの方を見ると、数個並んだロッカーの中に一つだけ開いているロッカーが目に入る。ロッカーはほんの少しだけ開いているが、中に何が入っているかまでは見えない、ヌシは警戒を強め、ロッカーに耳を当てる。
(…何も聞こえない)
ヌシは慎重に扉を開けて中を見るが、なにも仕掛けはなく、変わったところは無かった。
ヌシ「おかしい、銃も取らずに、罠も仕掛けずに逃げたのか?」
ヌシは変な不安に駆られ、台に座って考える。あいつらがやりそうなことはなんなのか、陰湿なババアコンビだ、きっとろくでもないことをしやがったに違いない、と。
(それにしても、なんだこの違和感)
ヌシはよく分からない違和感を感じ、少し考える。ロッカーを開けて、閉める。そして気付く。
「…どういうことだ?私は全てのロッカーに鍵を掛けておいたはずだぞ?一つだけ開いているのはおかしいじゃないか」
他のロッカーには触れず、ここだけが開けられている。
(偶然か?…いや、故意にやったんだ!)

このロッカーに入っているのは銃の弾。
「あ い つ ら … !」
ヌシはロッカーを思い切り開け放ち、中に入っているケース達をぶちまける。弾が入っているはずのケースの中には、何も入ってはいなかった。
まさかと思ったヌシはロッカーのケースを全てひっくり返すが、全てのケースが空になっている。

「…ふふっ、あはっ…あはははは…あははははははははははは!!!」

ヌシ殿、発狂。

レン「あいつの悔しがる顔が目に浮かぶわwww」
スイ「…しばらく怜ちゃんとこ泊めて」
(今日帰ったらやばい)
レン「ん?良いけど」

おわり

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最終更新:2014年05月31日 16:41