作者:パラソル
寂れた街に轟音が響き渡る。
誰にも使われなくなった広い交差点の真ん中に、一頭の巨大な猪が崩れ落ちた。
怜「よし、任務完了。このサイズなら皆に分けても5日は持つでしょ」
怜は懐中時計を取りだし、確認する。
怜「15分20秒。うーん、さすがに鈍ってきてるなあ」
どうやら彼女は、仕留めるまでに時間がかかってしまった事が気に食わないようだ。
怜「そろそろ本気で鍛え直そうかなー」
先程仕留めた大猪を引き摺りながら、そんなことを呟いていた。
レイラ「はあ、模擬戦……ですか?」
怜「そう。最近戦うことが無かったからみんな平和ボケしちゃってるけどさ、それじゃ駄目だと思う訳よ」
レイラ「平和ならそれで良いんじゃないですか? 私は無闇に人に刀を振るいたくは無いんですけど……うーん……」
怜「だったらあんた何のために武器持ってんのさ。今鍛えなくて、本当に必要な時に役に立たなかったら意味ないと思わない?」
レイラ「まあ、確かにそうですね……。分かりました!そう言う事なら受けて立ちますよ!」
怜「オッケ!じゃあまた明日、場所はここでよろしく!」
そして翌日ーー
怜「おっすおっす^p^」
レイラ「どうもー」
ラフェ「…………」
怜「あれ、その子は?」
レイラ「ラフェリアって言います。どうしても付いてくるって言って聞かなくって……。でも戦わせないから大丈夫ですよ。」
怜「そうか。よろしくな、お嬢ちゃん」
ラフェ「…………」
レイラ「あ、あはは……ごめんなさい、この子人見知りが激しくって。じゃあラフェ、合図お願いね」
ラフェ「…うん。りょうしゃ、かまえて」
ラフェ「……はじめ」
合図と同時に二人は駆け出していた。
レイラ「はあっ!」
レイラの刀が真っ直ぐに振り下ろされる。怜はそれを左の短刀で受け、同時に右の短刀で突きを繰り出す。
怜「やあっ!」
レイラは身を屈めてこれを回避し、大きく後ろに飛び退いて怜との距離を
離した。
怜「……ッチ!」
レイラ「なかなかやりますね……。でもここからが本番です!」
再び刀を振るうレイラ。怜はこれをかわすが、すぐさま次の斬撃が襲いかかってきた。自分が得意とする間合いを確保したレイラの攻撃は、怜が詰め寄る隙など一切与えなかった。
怜「うわっ、とっ、ちょっ、危ねっ!」
怜は地面を強く蹴り、大きくバック宙してレイラとの距離を離した。
怜「い、今のはヤバかった……。あんたもなかなか……ってあれっ?」
怜が喋っている間に、レイラは目を閉じて刀を鞘にゆっくりと納めていた。
怜「ちょっ……まだ勝負は付いてないでしょーー」
怜が一歩踏み込んだ次の瞬間、レイラは目をカッと見開き、素早く刀を抜いた。怜が気付いた時には既に、首筋に刀が突き付けられていた。
怜「…………!!」
ラフェ「そこまで」
ラフェ「しょうぶあり。しょうしゃ、レイラ」
怜「は、速すぎて見えなかった……」
レイラ「ふふ、居合の構えに気が付かないあたり、対人戦にはあまり慣れてないみたいですね。私でよければまたお相手しますよ」
怜「すっ……」
怜「すっげえええええ!!!えっ、なにこれ凄い!今のが居合い斬りってやつ!?初めて見た!!いや、全然見えなかったけども!!」
レイラ「ええっ( ; ゜Д゜)!!?」
怜「レイラ様!いや、師匠!是非私に居合い斬りを教えて下さい!!」
レイラ「えっ、ええええええええええ!!?」
ラフェ「……ふふっ」
やがて怜はレイラの指導の下、短刀二本による独自の抜刀術を編み出すことになるが、それはまた別のお話。
おわり