【名前】山路 フジ (ヤマジ フジ)
【性別】女
【年齢】59歳(あと2日で60歳)
【職業】無職
【外見】
 身長145cm。腰が曲がってきており、膝や肩も痛めている。引っ詰めて後ろに縛った白髪は手入れされている様子はない。21世紀の日本人とは思えないほど老け込んでおり、70~80代ほどに見える。
 15歳で山折村に嫁いできた時は”お人形さんみたいなべっぴんさんが来なすったなぁ”などと噂になった。しかし年老いた現在ではその面影をわずかに残すのみである。

【性格】
 責任感が強い一方で、押しに弱い。後述する人物詳細にもあるが、自身の意志が薄弱。

【異能】
『転生保証 (クリア・ボーナス)』
 このVH(ウイルスハザード)において最強の異能。
 自らの望む環境・時間軸・世界線に望む状態で転生することができる。タイムリープで強くてニューゲームも、チートつき異世界転生して無双するも思いのままである。世界を改変する異能と称しても過言ではない。

 この能力は感染の瞬間に自動発動するが、実際に効果が発生するのは60時間後である。この効果は他の異能などで縮めることはできず、無効化されることもない。また、この異能をコピー・奪取などした際はその時から60時間経過しなければ、効果は発生されない。女王感染者が死亡してこの異能が消失しても、時間がくれば効果は必ず発生する。この能力の効果の発生を防ぐ方法は、能力の発動者の死亡だけである。
 要は、VH開始から約48時間に襲い来るであろう”皆殺し”を凌ぎきり、60時間生き残ることで初めて異能の本領は発揮される、ということである。

 異能の効果発揮の予兆現象として、この異能者は異能取得の瞬間と、その後6時間ごとに”女神”を視る。”女神”は、美しい女性の姿をしており、来るべき転生の設定について相談してくれる。相談は体感時間では毎回最大30分程度可能だが、実際に経過する時間は約1秒である。

 また、生命の危機に瀕した際も、”女神”が助かるためのアドバイスをくれることがある。が、能力者の知りうる情報と、持ちうる頭脳の範囲でのアドバイスしかできない。また、コピー系の異能で山路フジからこの『転生保証』を奪取した場合、その者は”女神”を視ることはできない。
 “女神”は若かりし頃の山路フジと酷似した姿であり、自我を抑圧し続けてきた山路フジが異能の取得に伴って創り出した、自我のヨリシロである。

【詳細】
 新潟県出身。旧姓は五十嵐。
 15歳の誕生日に、山路勲(イサオ)に嫁いで山路姓となる。イサオはフジより30歳年上であり、また、早逝したイサオの妻の後妻としての縁談であった。そのため内心ではフジは乗り気ではなかったのだが、”イエ”という共同体のメンツがまだまだ根強かった当時、フジが異議を申し立てることはできなかった。

 こうしてフジは山路家と旧家のため、山路家の者として生きることを決意した。が、フジが嫁いで程なく、夫であるイサオも事故によりこの世を去ってしまう。”父と母を、頼む”という言葉だけを遺して。
 イサオとの子を成すこともなく、また、前妻の子もいなかった。山路家に残っていたのは、イサオの祖父母と、イサオの前妻の祖父母のみ。4人ともが還暦を過ぎ、認知症を患っていた。

 それから、フジは4人の義理の父母の介護に追われ続けた。イサオの遺した蓄えと保険金を切り崩しながら。感謝の言葉もなく、名前さえ覚えてくれず、時に自らを罵りさえする4人の為に、フジは、日常を必死に回し続けた。

 こうして45年の時が流れた。百寿を過ぎた4人の父母はベッドから転がり出ることもなくなり、意味のある言葉を発することのない、チューブでかろうじてつながれただけの命となっていた。フジが祖父の床ずれを防ぐために寝返りを打たせていたとき、震度7の地震が山路家を襲った。すっかり古びていた一軒家は丸ごと倒壊し、4人の生命維持装置は完全に機能を停止した。

 4つのパイプベッドの隙間でうずくまり、難を逃れたフジは思った。これでやっと楽になれる、と。そしてすぐさま大きく首を横に振り、物言わぬ4人と夫の遺影に、ごめんなさい、ごめんなさい、と繰り返し頭を畳に擦りつけて謝った。

 その時である。山路フジがどこかで見た、若く美しい女性――”女神”を視たのは。

「……願い? 私の? ……ごめんなさい、お願い事をする資格なんて、私には……本当にごめんなさいね」

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最終更新:2022年12月14日 22:03