アットウィキロゴ

第18回トーナメント:決勝③




No.7156
【スタンド名】
ディメンション・トリッパー
【本体】
三船 重兵衛(ミフネ ジュウベエ)

【能力】
触れたものを急加速させる


No.7520
【スタンド名】
ロード・トリッピン
【本体】
デズモンド・ウォーカー

【能力】
触れた箇所を『滑走路』にする




ディメンション・トリッパー vs ロード・トリッピン

【STAGE:採掘場】◆iL739YR/jk





それはどこかほの暗い地。
体躯の良い二人の男が対峙していた。

『……何故だ……何故こんなことをしたぁ!』
そう叫ぶ男の足元には老若男女問わず血を流し、肢体を切り刻まれた無数の亡骸が転がる。

『これは必要な犠牲なのだ、我が友よ……』

『こんなこと……許される……わけが……』
そうゆっくりと吐き出すようにつぶやくと、その男もまたゆっくりと地に倒れ込んだ。

『物事は円。回転したならば……友よ、また会おう……』


ジリリリリリリリ!

けたたましい目覚まし時計の音に三船重兵衛は目を覚ます。

「またこの夢か……」

決勝戦を前にした重圧からか、重兵衛はたびたび悪夢を見た。
決勝の舞台で繰り広げられる激戦。
対戦相手の姿も細部の情景もはっきりとは見えないが、おぼろげには浮かんでくる。
米軍基地での乱戦、高層ビルを駆け巡るタイマン。
状況は違えども、いずれの結末も迎えるのは破滅のビジョン……

「僕に何をしろっていうのさ……」

重兵衛は汗ばんだ自分身体にこもる熱を、確かに感じていた。


「わたくし、今回の立会人を務めます『ブロンディ』と申します」

夜の闇に包まれた採石場。
その闇と同じほど深く黒いスーツに身を包む筋骨隆々とした男性が深々と頭を下げる。

その前に対峙するのは二人のスタンド使い。
星明りのみが彼らを優しく照らす。

もはや見慣れた柔道着とグローブの戦闘スタイルで構える青年
三船重兵衛/ディメンション・トリッパー

迷彩柄の軍服に身を包んだ黒人の男
デズモンド・ウォーカー/ロード・トリッピン

「勝負内容はシンプルにタイマンでのぶつかり合い。どちらか一方が戦闘不能になるまで勝負していただきます。なお、降参や敵前逃亡等、戦闘続行不可能な状況と判断した場合はその限りではございません」

一時の静寂が了承の印かと、立会人は言葉を続ける。

「それでは、勝負開始です」


「それでは、勝負開始です」

黒スーツの男が静かにそう宣言した直後、二人のスタンド使いが揃って動き出した。

「拳銃(ハンドガン)!」
「しゃあ!」

二人の手から飛び出したのはベアリング弾。
かたや重兵衛の手からはディメンション・トリッパーの能力で加速されたもの、
一方ウォーカーの手からは指に走る滑走路に沿って加速されたものが、
どちらも真っすぐと夜闇を割いて飛んでいき、宙でぶつかり合う。

牽制の射撃の間を突くように、二人はまたも同時に飛びかかる。

「砲弾(キャノン)!!」
「おりゃぁ!!」

グローブごと加速された勢いで殴り掛かる重兵衛の拳と、滑走路を滑るように加速されたウォーカーが蹴り込んで来る脚が、骨肉を軋ませて激突する。

「おいおいおいおい、これってもしかしてよぉ~」

「えぇ……どうやら、僕と貴方は……」

「「同じタイプのスタンド使い……」」

「俺もよ、これまでいろんなスタンド使いに会ってたけどよぉ、ここまで似たような能力にお目にかかるのは初めてだぜぇ~」

「僕もです。まさか牽制手段のベアリング弾さえかぶるとは思ってもいなかった」

触れたものを加速する能力。
同じような能力、同じような戦略。
これまで何かを成し遂げようと精進してきた重兵衛には分かる。
同質だからこそ相手もまた精進し、鍛え上げられた力の持ち主であることが。

「(これは……楽な勝負じゃないな……)」


*******************************

「探しましたよ…『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』……」

戦場から少し離れた岸壁。
夜風を受けて勝負の行方を見守る一人の紳士『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』に向かい、ある女性が話しかけた。

「お待ちしていましたよ、『クリームヒルド』さん……」

「全てお見通しなら話が早い。説明していただけますね?」

「いいでしょう。どうやら我々程度の異分子の介入は『あのお方』の希望らしい」

レッドミストモイスチャーはそう呟くと、クリームヒルドへ視線を向ける。

「知りたいのでしょう? このトーナメントの目的……『あのお方』の意思……そして、『沫坂』さんがどうなったのか?」

「……ええ」

「沫坂さんは『あのお方』の意思によって、この世界へ帰ってくることができました。彼の力には『あのお方』も注目していましたからね」

「『あのお方』……とは、トーナメント運営組織のトップのことですね?」

「はい、これまでのトーナメントは全て『あのお方』の意思で開催されてきました。そして、今、やっとその目的が遂げられようとしている……」

レッドミストモイスチャーが光の球を一つ戦場へと投げ込んだのは、その言葉を発したのと同時であった。

*******************************


激しく疲弊する二人の男性。
互いに手の内の似通った二人のスタンド使いの勝負は混迷を極めていた。
ベアリング弾の打ち合いで互いの衣服はところどころ裂け、激しく打ち鳴らす加速した打撃の応酬に肉体も悲鳴を上げていた。

「これで決める……ディメンション・トリッパーァァァ!!」

「望むところだ……ロォォォド・トリッピンッ!!」

切り開かれた採掘場の岩場。加速する拳と拳が最後の激突をしようと迫り合う。
そこに飛び込んできた一つの光球に二人は気づくことができなかった。

激突するのは拳同士ではなかった。
二人の間に割って入った一つの光球に、彼らの渾身の打撃の衝撃は吸い込まれていく。

「え……!?」
「What!?」

不意な介入によって加速を中断され、体制を崩してその場に倒れ込む二人。
そして、光球は吸収した加速の勢いをそのまま得たかのように激しく回転し始める。

「ふむ……やはり、この程度の介入が適切でしたか……」
回転する光球を見つめた立会人『ブロンディ』が納得したように言葉を発する。


「素晴らしい……これでやっと私の目的は達成される……」
ブロンディの手の動きに合わせ、光球は彼の頭上へと高く上がっていく。
そして、光球は周囲の光を集め、回転を増し、漆黒の闇の中に、さらに一段深く暗い闇の穴を掘り込むように、その痕跡を刻んでいく。

「闇の流法(モード)……『重集開門』!」

「立会人さん……? いったい何を……?」
「俺らの決勝戦のための花火……ってわけじゃなさそうだな」

突如として繰り広げられる光景に、流石の二人も動揺を隠せない。

「お二人には感謝します。おかげで扉は開かれた。これで私はたどり着ける……」
ブロンディの身体はゆっくりと浮上し、回転する漆黒の孔へと近づいていく。

「なんかやべぇ!」
何かを感じ取り、思わずベアリング弾を射出するウォーカー。
しかし、その弾はブロンディへと届かず、虚空で静止する。

「その弾では、私の扉は通れませんよ。ここに至るまでにどれだけの時を要したことか……」

「……どういうことだよ」
「たぶん……加速が足りないんです。あの捻じれた空間に突入するには……」

「その通りです、三船重兵衛さん。貴方方には本当に感謝しています。せっかくですから説明してさしあげましょう。私の計画…トーナメントの目的を……」

*******************************

時を同じくして、レッドミストモイスチャーとクリームヒルドも同じ光景を目の当たりにしていた。

「時空の扉を開くのが目的……?」

「はい、失われた過去を取り戻す旅に出かける。それが『あのお方』の目的です」

空間が捻じれ曲がり、回転を続ける虚空の孔をレッドミストモイスチャーは見つめる。

「スタンド使い同士が切磋琢磨することで、優れた力をさらに高め、あの扉を開くこと……そのためにトーナメントは開かれました。
 あらゆる能力、あらゆる思想、あらゆる生命体……様々な可能性を試行するために」

*******************************


「私はスタンド使いでもなければ、人間でもありません」
ブロンディは言葉を続ける。

「ときに『柱の男』と呼ばれる存在です。

 私には友ほどの力はなかったが、幸か不幸か生き延びてしまった。
 そして、幾順も回転する宇宙の流れの中で、力を高めることができた。
 それは重力を操り、ついには異なる世界の可能性を呼び込むことができるほどに……」

*******************************

「つまり、1回戦で貴方を助けた沫坂さんは別の次元から呼び出された存在です。
 彼の能力は『あのお方』の目的を達成する鍵となる可能性がありましたからね」

「私も含めて…トーナメント優勝者は不思議な夢をみることがある。
 まるで『本来経験していないはずの2つの決勝戦』があったかのような、そんな夢を。
 
 それもおそらくは……」

「ええ、『あのお方』が素質あるものの可能性を模索し、別の世界の時間軸を介入させた影響でしょうね」

「でも、その能力でできることは『今』の可能性の上書きだけ。時間を操り、『過去』を変えられるわけではない……だから……」

「そう、『あのお方』は加速したときの流れに乗り、『失われた過去』へと行こうとしているのです……」

*******************************

「僕たちの力を利用して、過去へタイムトラベルするのが目的……?」

「そうです。

 触れたものを加速させる能力をもったお二人が、
 この優勝者トーナメントの決勝という舞台にたどり着き、
 その能力をぶつけ合うことで高め合い、
 
 とうとう時の流れを加速させた…
 
 これこそが運命……我が悲願は達成される!!」

「そんなお前さんの過去の尻拭いのためだけに、俺たちはあんなトーナメントで戦わされてきたってのかい?」
ウォーカーは拳を握り、感情を高ぶらせる。

「大丈夫ですよ…『そんな過去』はすぐに無くなる……」
そう言うと、ブロンディは時空の扉の奥へと消えていった。


「ウォーカーさん、たぶん…このままあいつを過去に行かせるのはまずい気がします……」

「あぁ、同感だね。おまけに発端が俺らのスタンド能力ってのが気に食わねぇ」
二人は互いにうなずき合うと、決意を固める。
これはとんでもない厄災だ。
このまま野放しにしたら、きっととんでもないことが起こる。

だから……

「……ディメンション・トリッパーァァァ!!」
「……ロォォォド・トリッピンッ!!」

発現されたスタンドヴィジョン。
そのラッシュで周囲の岩を砕き、跳ね上げる。
宙を舞う無数の瓦礫に沿って滑走路を展開し、一筋の道を切り開く。
それはまるで時空の孔へと続く岩の道。

「砲弾(キャノン)!」
殴り掛かる勢いでますは重兵衛。その後ろを追うようにウォーカー。
二人は天へと延びる滑走路に飛び込み、旅立った柱の男のあとを追い、時空の孔の先を目指す。

……が……

「ダメか……」
先ほどのベアリング弾と同様に、捻じれた虚空の中途で二人の動きが鈍り始める。

「普通にスタンド能力を使っただけじゃ…『時の加速』にパワーが足りないのか……?」
重兵衛は必至に手を伸ばす。しかし、すぐそこに見える孔の先には届かない。

「どうしたら……」
そのとき、少しずつだが、重兵衛の身体に勢い戻りつつあることを感じた。

「え……?」
重兵衛は感じる。これが『時』に『触れて』、『加速する』ということなのだと。

「やった…これならいけますよ。ウォーカーさん!」
そう叫び、振り返る重兵衛の後ろには、ウォーカーはいなかった。
彼は一人、滑走路から降り、大地から重兵衛を見上げていた。

「ウォーカーさん!?」
「重兵衛…俺さ、気づいたのよ。俺らって似た能力なんだけどよ、一つだけ『決定的に違う』ところがあんだよ」
指を1本立ててウォーカーは説明を続ける。

「俺は触れたものを『加速させる』滑走路を造る能力。お前さんは触れたものを『加速する』能力…この違い、分かるか……?」
ウォーカーは、時空の孔へと続く滑走路に力を込める。
真っすぐ、強く、重兵衛を孔の先へと『加速させる』ために。

「加速する時を掴めるのはお前さん一人ってことさ。だから…俺のスタンドのパワー持っていきな!」
「ウォーカーさん!!」

やがて重兵衛の周囲の景色は歪み、ウォーカーの姿も見えなくなった。

それを下から見上げていたウォーカー。
彼の眼には、重兵衛が闇を切り裂き、確かに孔を潜る光景が映し出されていた。

「がんばれよ…重兵衛……」

他に誰もいなくなった戦場で、ウォーカーはそう呟くと、力を使い果たした疲労感から静かに倒れ込んだ。

(三船重兵衛の戦線離脱)

★★★ 勝者 ★★★

No.7520
【スタンド名】
ロード・トリッピン
【本体】
デズモンド・ウォーカー

【能力】
触れた箇所を『滑走路』にする








当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。




最終更新:2022年04月25日 00:42