第05回トーナメント:準決勝①
No.4718
【スタンド名】
スロー・アタック
【本体】
バド・ワイザー
【能力】
触れたものをペシャンコにしたり膨らませたりする
No.5143
【スタンド名】
ハイ・ヴォルテージ
【本体】
露持矢 夢亜(ロジヤ ムア)
【能力】
触れたものを「持ち上げる」
スロー・アタック vs ハイ・ヴォルテージ
【STAGE:橋の上】◆DyXxw8aJ1E
「ここか・・・今回は観客はいないんだな」
バド・ワイザーがステージ指定された橋に着いたのは、深夜の3時であった。
別に彼が遅れてきたわけではない、指定の時間がそれだったのだ。
そんなわけで、明かりの少ないこの場所に、バドはやってきたのだった。
「おや、時間ぴったり。意外と几帳面な性格のようですね」
そして、橋の欄干に寄りかかっていた人影が、バドに語りかけてきた。
バドは、直感でわかった。こいつが今回の相手だと。
「お前が相手だな?・・・俺はバドだ。バド・ワイザー」
「どうも。僕は露持矢夢亜、と申します」
「ずいぶんと育ちがよさそうだな、アンタ」
「そういう貴方はなかなかハードな人生を歩んできたようですね、闘志というものが感じれますよ」
「そりゃどうも。んで・・・早速始めるとするかい?」
「どうぞ、先手は譲ってもかまいませんよ」
余裕の表情で言い、欄干から離れる夢亜。
「それじゃありがたく。・・・『スロー・アタック』ッ!」
己のスタンド、『スロー・アタック』を出現させると、夢亜に向かってパンチを繰り出させる。
無論、何が仕掛けがあることはわかっている、だからこそ、『ただのパンチ』である。相手が何もしないならそのまま踏み込んで殴る、何かしらのアクションをとれば、それで相手の能力を見破るヒントになる。
果たして、夢亜は動いた。が、それは口元の動きだけだった。ニヤリと笑うような――
「のあがっ!?」
突如、バドは顎に激痛を感じた。思わずのけぞる。
そのまま上に昇っていくそれを、バドは認めた。それは、一つの小石。
「なんだ・・・これは!?」
戸惑いながらも、勢いを殺すためのけぞりながら距離をとる。
が、次の瞬間、背中に衝撃を食らった。
「がっ・・・!?」
ごつごつとした感触が、背中にある。また小石だ!息が詰まる。
その瞬間、夢亜が自分のスタンドを出し、こっちへ向かっているのが見えた。
このわずかな間で、バドは直感を受け取る。
「(スタンドを出して、こっちへ向かってくる・・・やべえ、多分触れられたら負けだ!)」
スタンドをもつ身として、能力とは未知の脅威。それは相手も自分も同じ。
とっさに背中に腕を回す。触れたのは、自分の背中にめり込んだ小石だ。
「やれっ・・・『スロー・アタック』ッ!」
叫び、スタンドの呼応、発動する能力、『コーティング』される小石。
次の瞬間、小石がすさまじい速度で膨張をはじめた。その上にバドが乗る形で。
「なっ・・・!?」
さすがの夢亜もこれには驚かされたようで、その足を止める。大急ぎで息を整えたバドは、夢亜の反対側に降り立つ。
「やれやれ、参ったもんだ・・・」
「これが彼の能力・・・なるほど」
息を切らせるバド、冷静に相手を分析する夢亜。
どちらが優勢か、もはやこの時点で決まっているようなものであった。
「(さて、どうしたものでしょうか・・・)『ハイ・ヴォルテージ』!」
膨らんだ小石に向かって、パンチを一発放つ。すると、コーティングが爆ぜ、小石が元に戻る。
「ほう、なるほど」
得心したように一言呟き、その向こうを見る。
そこでは、バドは落ちていたらしい小石を手に取っていた。投げるつもりだろうか?それを見て夢亜は内心ほくそ笑む。
「(すでにこの一帯にまいた小石には、私のスタンド、『ハイ・ヴォルテージ』の能力を付属させてある・・・。
前の砂浜のようにはいきませんが、この暗がりではそのすべてを把握できるのは、私だけです)」
すでに『仕込み済み』だったのだ。バドが握った小石を持ち上げ、再び『ハイ・ヴォルテージ』で突撃させる。
「もう無駄ですよ。その小石を膨らませても、打撃で元に戻せることは把握しています。これで終わりです!」
「いや、『これがいい』のさ」
急速に持ち上げられる小石とバド、しかしその表情は、『したり顔』だった。
上昇の勢いを殺さず、体のうねりに持っていく。そして、そのまま、
「うおりゃあああッ!」
「!?」
繰り出される、鋭い回し蹴り!
『スロー・アタック』の足が、突っ込んできた『ハイ・ヴォルテージ』の横っ腹に突き刺さる。
そして、スタンドへのダメージがフィードバックして、
「ぐふあっ!」
真横に吹き飛ばされる夢亜の体。この大会で、初めてクリーンヒットが決まった瞬間だった。
そしてここは橋。欄干を飛び越え、そのまま一気に。
ドッボォォォーーーン!
水柱を立てながら、夢亜の姿が、水の中に消えた。
「・・・ふう、うまくはまってくれてよかったぜ・・・」
持ち上がった小石から手を離し、服をパンパンと払う。
だが、警戒をとかない、そう。
『小石はまだ持ち上がった』ままなのだ。
直後、再び水柱があがった。だが、今回の水柱は、いつまでたっても崩れない。
飛び散る水しぶきに顔をしかめながら、バドはそれを見る。
そこには、全身ずぶぬれになりながらも、全身に闘志をみなぎらせた夢亜の姿があった。
「やりますね・・・バド・ワイザー」
「はっ、随分とワイルドな見た目になったじゃねえか、露持矢夢亜」
「ふふ、ありがとうございます。ですが、次はこうは行きませんよ」
「だろうな。だから、俺も・・・」
おもむろに、懐に手を突っ込むバド。怪訝な顔をする夢亜。
「奥の手を使わせてもらうぜ!」
そして抜かれた手に握られていたのは――
「!?」
「食らえ!」
黒光りする一丁のリボルバー!すでにハンマーは起こされ、発射の準備は完了している!
だが、トリガーを引くその寸前、水しぶきが眼に入った。
「くっ・・・」
放たれる銃弾、だがその軌道は外れ、夢亜の頬を掠めて、どこかへ飛んでいった。
「チッ、もう一発・・・」
「『ハイ・ヴォルテエエエェェエェエェエエェェエエェエエエェエジ』ィィィィイイイイイイィィイイイッッッ!!!」
「!?」
何が起こったか、一瞬把握できなかった。
今まで冷静、知性的という言葉がこれ以上ないほどにあってきた夢亜が、彷徨を上げつつ飛び掛ってきたのだ。
ずぶぬれになっても、それは変わりなかったというのに、何が彼をここまで動かしたのか。
考えている暇はなかった、ハンマーを起こし、リボルバーを発射。が、その銃弾を『ハイ・ヴォルテージ』があっさりと弾き飛ばす。
「どあっ!」
馬乗りになるように倒され、『ハイ・ヴォルテージ』の拳が振り上げられる。
「・・・殺す!」
夢亜の目は、目の前が見えていないかと思うほどに血走っていた。
だが、決着はすでについていた。すでに、『スロー・アタック』が姿を表している。
「はっ、触れられたら終わり、それは俺もすでにわかってた・・・。
だがな、お前と俺には一つ違いがある、お前にはもう一段落必要で、俺は一回で終わりだって事だッ!『スロー・アタック』!」
「!?なっ――」
遅かった。『スロー・アタック』が掌を押し当てる。一瞬にしてコーティング加工された夢亜は、一気に膨張されていく!
「うごおおっ!おおっ――」
もがき、触れたバドも持ち上げられていくが、すでに遅い。攻撃すら不可能なほど、膨らんでいく。
「ご、おおお・・・」
「いや、まさか銃に過剰反応するとは思わなかったがな・・・ま、結果オーライだな」
そして放たれる蹴り。しかし勢いはないため、それは押すというほうが近い。
結果、けり出された夢亜の体は橋から外れ、川に流されていく。
「あばよ、せいぜい溺れない様にがんばってくれ」
あっという間に見えなくなった夢亜につぶやいて、
「・・・いつになったら、解除されっかな、これ」
地面から2m弱、朝まで持ち上げられることになるバドは呟いた
★★★ 勝者 ★★★
No.4718
【スタンド名】
スロー・アタック
【本体】
バド・ワイザー
【能力】
触れたものをペシャンコにしたり膨らませたりする
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最終更新:2022年04月16日 14:40