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第06回トーナメント:予選②




No.4971
【スタンド名】
ニュー・ファウンド・グローリー
【本体】
エミリアナ・セブロ・メサ

【能力】
スタンドが描いたものを具現化する


No.5808
【スタンド名】
ソリッド・ゴールド・イージー・アクション
【本体】
九条 倫(クジョウ リン)

【能力】
振り子が静止している間無敵になる




ニュー・ファウンド・グローリー vs ソリッド・ゴールド・イージー・アクション

【STAGE:廃工場】◆4bPWteQyKA





その街は世界でも有数の自動車産業の街だった。
何十万人もの労働者が地方から流入し、街は空前の繁栄にあった。

それも今は昔。
今も人々の記憶に残っているあの忌々しい『大不況』は、街の自動車産業も壊滅に追いやった。
解雇された労働者たちの一部は絶望の末にビルの屋上から身を投げ、また一部は仕事を求めて街を去って行った。

そして、街に残されたのは工場群。
繁栄の時代の遺物は、主人を失い、雨風に晒されるがままになっていた。

もし、このような場所から声がするとすれば、不良少年どもの集会か、あるいは――


その廃工場には、この街に存在する他の多くのソレらと同じように、
無数の機械や資材が打ち捨てられていた。

そんな工場内に、放置されたドラム缶に腰掛けて、『何か』を待つ青年が一人いた。

他人を威嚇するような鋭い目つき、逆立った金髪といった要素を見ると、
普段からこの場所に巣食う地元の不良の一人と思われても不思議は無いだろう。

青年は大型のヘッドフォンを耳に掛け音楽を聴いているようであったが、
不意に何かに気付いたような表情を浮かべると、ヘッドホンを外して呟いた。


青年「……待たされたぞ」


青年の視線の先――廃工場の入り口に立っていたのは、凡そこの場所に似つかわしくない人物だった。


目を醒ますように鮮やかな赤毛。透き通るような青い瞳。小麦色の肌。
年齢は十代の半ばから後半といったところだろうか。


少女「……あなたが私の対戦相手ですか?」


まだあどけなさも残る顔立ちの少女は、工場内にいる青年に問いかける。


青年「……そういうことになるな」

少女「遅れちゃってごめんなさい!駅の売店で『ハンター×ハンター』と『オリ☆4』の新刊が陳列されてるのみたら買いたくなちゃって……」

少女「それで、駅のベンチで読んでたんですけど、気が付いたら待ち合わせの時間を2時間過ぎちゃってて……」


青年の元に送られてきた大会案内には、指定時間を1時間過ぎても相手が会場に来ない場合には、
大会運営に連絡することで不戦勝の権利を行使することができる、と書かれていたが、青年は敢えてそれをしなかった。


青年(……闘わずに勝ったところで別に嬉しくねぇしな)


遅刻したことについて必死に謝る少女をよそに、青年は相変わらずの仏頂面を保ったまま言葉を返す。


青年「まぁ別にかまわねェよ、あんた待ってる間、音楽聞いて暇つぶししてたからさ」

青年「……ところで、あんた日本の漫画に興味あるのか?」

少女「はい!私の母国はスペインなんですけど、日本の漫画が大好きで、東京の学校に通いながら、漫画家を目指しているんです!」

青年「俺と逆だな、俺は日本人だけど音楽は洋楽しか興味がねぇんだ」

青年「……そういや、まだ自己紹介してなかったな、俺の名前は九条 倫(クジョウ リン)だ。あんたは?」

少女「私はエミリアナ・セブロ・メサっていいます!友達からはエミリって略して呼ばれることが多いです!」

倫「それじゃそろそろ始めるか……準備は出来てるか、嬢ちゃん?」

エミリ「はい!」


少女の返事を聞くと、倫はドラム缶から飛び降り、工場の入り口に向かい歩き始めた。
そして、エミリから5メートルほど離れた地点まで来ると呟く。彼の持つ『精神の才能』の名を。


倫「ソリッド・ゴールド・イージー・アクション……」


彼の体から重なる様にして出て来たのは、人型の影だった。
機械的な装飾の施された人型スタンド。
そのヴィジョンを目にして、彼に相対する少女は思考を巡らせる。


エミリ(あれは間違いなく近距離型のスタンド、距離を詰められたら間違いなく私が不利!)


そして、彼女も自身の持つ才能の名を口に出す。


エミリ「ニュー・ファウンド・グローリー!」


そのシルクハットを被った紳士のような小柄な影は、エミリの背後から飛び上がるようにして出現した。


NFG「ケケケケケケケ!お久しぶり我が本体(マスター)!」

エミリ「ちょっと静かにしなさいよ!相手のお兄さんも、突然変なのが飛び出してきて困ってるじゃない」

NFG「ヒャヒャヒャヒャ!そりゃ失礼!」


下卑た、と表現すべきか剽軽な、とい表現すべきかは分からないが、
とにかくふざけた声を、そのスタンドは工場内に撒き散らしていた。

突如、この空間に現れた第三者の声に、倫は一瞬困惑したが、再び気を引き締める。


倫(あのヴィジョンから推測すると単純な近距離戦は俺のSGEAのほうに分がありそうだ……)

倫(しかし油断はできない。それを補って余りある能力を持っている可能性も十分にあり得るからな)

倫(とにかく今は様子見をすべきだ。何か牽制に仕えるようなものは無いか?)


倫は自分の周囲を見回す。
そして、近場に落ちていた2メートルほどある鉄パイプをSGEAの腕で拾い上げると、
槍投げの選手のように腕を大きく引き、エミリの方に勢いよく投げつけた。

SGEAは十分な格闘性能を持ったスタンドである。
そのスタンドから投擲された鉄パイプ。
それをスタンドを使わずに受けきるのは、スタローンかセガールでも無ければ無理であろう。
勿論、倫のもくろみもそこにあるだが。


倫(さぁ使えよ、嬢ちゃん、そのスタンドの能力をな……)


スタンド使い同士の戦いに於いては、先に能力を把握されると言うのは、大きなディスアドバンテージである。
相手に把握されたところで全く問題の無い能力もあるのだろうが、
得体の知れない力を相手が持っている、という状況は当人に大きなプレッシャーとなりうることは間違い無い。

そのことに関してはエミリのほうも分かっているのだが、それでスタンドを出し渋って、
勝負に負けてしまっては、元も子もない。


エミリ(これはとてもNFGの腕力じゃ受け止められない……あのお兄さんの意図にまんまと乗っかるのは癪だけど……)

エミリ「NFG!ここに壁を描きなさい!」

NFG「了解!」


彼女の言葉にNFGは素早く反応し、その懐から一本のペンの取り出し、虚空に壁の輪郭を描き出す。
その直後、ただの輪郭に過ぎなかった壁は、本物のコンクリ壁となって、その空間に具現化される。
そして、彼女めがけて投げつけられた鉄パイプは壁にぶつかり、甲高い金属音を上げたと思うと、力なくその場に落下する。


倫「大体わかったぜ、あんたの能力……」


自信に満ちた表情で語りかけてくる青年に対して、少女は精一杯の虚勢を張る。


エミリ「さあ、どうかなぁ?私の能力をどう受け取ったのかは知らないけど、あなたの予想が正しいとは保証できないよ!」


はぐらかそうとする少女の様子を見て、倫は顎に手を当てて思案する。


倫(あの娘の能力は十中八九『スタンドが宙に描いたものを実体化』する能力だ。)

倫(その弱点は実体化するまでに手間が掛かる点だろうか。こりゃ距離を詰めたほうが賢明か?)


そんなことを考えていた時だった。


エミリ「今度はこっちの番よ!NFG!」


少女の背後にいたスタンドが、何か『黒いもの』を少女に手渡す。
その物体の正体を見て、青年の表情が俄かに曇る。


倫「……そりゃ、ピストルか?」

エミリ「NFGの作り出した物はスタンドにも干渉できる……どういうことかわかるよね?」


どうやら青年から見ることのできない少女の背後という死角を利用して、ピストルを描いて具現化していたらしい。


倫(ここは能力を使うしかないようだな……ソリッド・ゴールド・イージー・アクション!)


近距離型のスタンドと言えども、その拳で弾丸を打ちかえすというのは容易では無い。
それはSGEAにも言えることであった。
もし、それができるとすれば、それは速さ・精密性、両方に特化したスタンドに限られるだろう。

エミリは倫に向けてリボルバーを構えた上で、狙いを定め、引金を絞る。
それに対して、倫はスタンドを自身の前に立たせ、弾丸を受ける体勢を取る。


倫(SGEAの能力は振り子が停止状態にあるとき、スタンドを『無敵化』すること……)

倫(その間ダメージを食らうことは無いが、自分からスタンドを動かして、振り子を振れさせると能力は解除されちまう)

倫(もっとも、振り子が触れないくらいの動きに抑えれば解除されねぇんだが、行動が大きく制限されることには変わりねェ)

倫(無敵っつっても、スターで無敵になったマリオみたいにはいかねぇんだよな)


自身の能力の勝手の悪さについて心中で愚痴をこぼす青年を傍目に、少女は引金を引いた。
直後、荒れ果てた廃工場内に乾いた音が響き渡る。

しかし、放たれた弾丸は目標に命中するも、SGEAの表面にはめり込まず、流れ弾となって、工場の何処かに消えていく。
倫がスタンドの拳で弾くのでも無く、かわすのでもなく、スタンドで弾を受けているのも関わらずダメージを負わないことに驚いたのだろうか。
少女も思わず疑問を口に出す。


エミリ「……お兄さんの能力って衝撃を受け流す、とかそういうの?それともヴィジョンが凄く固いとか?」

倫「……遠からず近からずってところだな」


適当にあしらう青年を見て、少女は再びピストルを構える。


倫(見たところあの拳銃の装弾数は六発だ。撃ち尽くした後には必ず隙が出来るはず!そこで距離を詰めて一気にラッシュを叩き込む!)


SGEAを盾にしつつ、振り子を揺らさないようにゆっくり前進し、相手の残弾数をカウントする倫。


倫(……これで5発目だ。それにしてもあの嬢ちゃん、撃つの下手すぎやしねぇか、半分もSGEAに当たってねぇぞ。まあいい、あと一発で打ち尽くす筈だ)


そこで倫は後ろから僅かに聞こえる異音に気づく。


....ジョロジョロ....ジョロジョロ


倫(……何の音だ?)


確認するために振り返り、青年は相手の意図に初めて気づく。

異音の源は最初に彼が座っていたドラム缶。
その下部に銃弾で穴が空き、内容物が漏れ出していた。


倫(この色!この臭い!間違いねェ!これはガソリンだ!もう気化してやがる!)


青年が気づいたときには既に遅かった。


少女の撃った六発目の弾丸はドラム缶に当たると、その地点から周囲に火花をまき散らし、直後――廃工場内は轟音に包まれた。


――数分後


煙を上げる廃工場の前に一人の少女と一体の異形の姿があった。
どうやら爆発の直後に、彼女は廃工場の入り口に『壁』を作り出して爆風を塞ぎ、被害を完全に免れたようだった。


エミリ「……あのお兄さん大丈夫かなぁ?」

NFG「カッカッカッ!ヤッタ本人ガヨク言ウワ!!」

エミリ「きっとこんな大会やるぐらいだから運営には凄腕のヒーラースタンド使いさんがいるはずだよね!」

NFG「ソレモソウダナ!」



暢気に騒ぐ一人と一体を、別の廃工場の影から遠巻きに見守る影が一つ。
『ソリッド・ゴールド・イージー・アクション』のスタンド使い、九条倫だ。
全身に爆発による傷を負っており、首に掛けたご自慢のヘッドフォンも半ば壊れてしまっている。
まさに満身創痍という状態だった。


倫「工場の外壁を無理やりスタンドで壊して脱出できたから良かったが、こんな状態じゃもう戦えねぇな……」

倫「全くとんでもねぇことするぜ……一歩逃げるのが遅れればあの嬢ちゃん自身も巻き込まれてたかもしれねぇのに……」

倫「……もっとも、そういう部分が欠けていたから、俺は負けるべくして負けたのかもしれねぇがな」


そう呟くと、傷だらけの青年は何処かに去って行った。

★★★ 勝者 ★★★

No.4971
【スタンド名】
ニュー・ファウンド・グローリー
【本体】
エミリアナ・セブロ・メサ

【能力】
スタンドが描いたものを具現化する








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最終更新:2022年04月16日 15:10