第09回トーナメント:準決勝①
No.6410
【スタンド名】
ダーティ・ロットン・バスターズ
【本体】
ハシム・バラミール
【能力】
物体に同化し、自壊する
No.5349
【スタンド名】
ガールズ・デッド・モンスター
【本体】
尾藤 杏路(ビトウ アンジ)
【能力】
殴った物が持つ重量を未来に飛ばす
ダーティ・ロットン・バスターズ vs ガールズ・デッド・モンスター
【STAGE:地下鉄】◆UmpQiG/LSs
──ガタン ガタンガタン タタン タタンッ タタン
街の中心街方面からベッドタウンに向かう最終電車は
人も疎らで話し声や喧騒も無く、どこか異世界に連れて行かれそうな雰囲気であった。
そんな不思議な空間の中、彼はガラガラの座席にも座らず
電灯の光が周期的に点線を刻む真っ暗な空間を眺めていた。
耳にはヘッドフォンをかけ、やや伸ばし気味の髪がどことなく儚げに見えるが
幼さも隠しきれない青年であった。
「──♪ ───っ♪?・?・?・・・・♪」
ヘッドフォンから流れ出す大音量のヘヴィ・メタルを
口の中で圧し殺す様に軽く口ずさんだりしている。
彼、尾藤 杏路にとっては殺し合いにも成りうるトーナメントの試合は
『ちょっとコンビニに行ってくる』程度の出来事に過ぎない。
恐れを知らない訳ではない。また理解出来ない馬鹿でもない。
しかし只々つまらないちょっとした出来事の1つなのである。
─ギュッ!!
突然ケツを握られアンジーはギョッとする。
視覚的に迂闊だった訳ではない。
そして勿論興味がないからと言って気を抜いていた訳でもない。
しかし何者かが自分の体に触れる迄気が付かなかったのである。
「ア・ン・ジー・ちゃんっ♪」
ボディ・ペイントではないかと思える程のタイトな黒のスーツに
サテン地のようなテロテロと光ったショッキング・ピンクのYシャツ。
アイロンで無理矢理伸ばした真っ直ぐなシャギーの入ったピンクの髪に
濃い目の青いアイシャドウ、真っ赤な口紅。
一度見たら誰もが忘れはしないだろう。
このトーナメントの立会人であった。
アンジー
「──・・・またあんたか。トーナメント参加者に『手を出して』いいの?」
アンジーはヘッドフォンを取り真顔でそう言った。
立会人
「あらン?たんなる挨拶よん♪それともアンジーちゃん手を出して欲しいのかしらンっ?☆」
アンジーの胸に人指し指を這わせながら妖艶な微笑みを見せる。
アンジー
「ごめん。俺初めての相手はやっぱ女性にしたいでまた今度な」
そこで立会人は鼻を押さえ上を向きうなじをトントンとした。
アンジー
「─?・・・で?なんの用だ?」
アンジーは立会人の挙動に少し疑問を抱いたが気にせず話を進めた。
立会人
「え・・・?ああ、そ、そう。次の駅で扉が閉まった瞬間に試合スタートよ。
勿論試合はこの地下鉄の列車の中。外に出れば即失格。
一般人をどうしようが貴方の勝手。心配しなくても『処理』はこちらが行うわ。
それでは決勝でもまた会えるといいわね♪
─goodlack チュッ」
投げキッスを残し、まるで空間に飲まれるかの様に立会人は姿を消した。
アンジーは再びヘッドフォンを耳にかけ何事も無かったかの様に
耳をつんざく爆音に身体を委ねた。
アンジー
「─処理・・・ね・・・ヘヴィだぜ・・・・・・」
─同時刻
ハシム・バラミールも当然の如く同じ列車に乗っていた。
どこか胡散臭く怪しいその風貌も、殆んど人のいない最終電車では目立つ事はない。
ハシムは疎らな乗客を眺めて呟く。
「オゥ・・・日本のサラリーメンお疲れ様デース・・・。
こんな遅く迄お仕事お気の毒?・・・・。
豊かで平和の国日本も?・こんな風景みてしまうと?・
イチガイに幸せとは云えませんネー。
マシテヤ?・よりにもよって今日?・この電車に乗り合わせるなんて不幸デース・・・」
その優しさを含んだ呟きとは裏腹にハシムの口唇は薄笑いを浮かべていた。
「ホントに不幸デース」
ポケットに入れていたウイスキーの小瓶を煽りグイッと腕で口を拭う。
「あら?ご機嫌な様ですねー?」
ハシムは自分の背後にたった奇妙な男性を反射する窓越しに睨み付ける。
立会人
「私は本大会の立会人を勤めさせて頂いております、Miss.Qです」
Miss.Qは淡々とした口調でハシムに話し掛けた。
ハシム
「・・・Miss?日本人はMiss.とMr.の違いもわからないデスカー?クックッ」
Miss.Qの眉毛がピクリと震える。
Miss.Q
「いいから黙って聞けゲス野郎。
テメーがどんな人間でどんな生き方をしてきたかは全部わかってる。
テメーみたいなクソ野郎はこの仕事でなきゃ有無を言わさずに肉塊にしてる所なんだよ」
Miss.Qは静かに威圧した。
それに対してハシムはヤレヤレと言ったジェスチャーを取り大人しく黙り混んだ。
ハシム・バラミール。年齢不詳。国籍不明。
とある組織の麻薬を扱うチームの重鎮であり、世界的な麻薬シンジケートにも
顔の通じる麻薬長者である。
所謂揺るぎない『悪』。
彼の手の中を通った麻薬は金と引き換えに
今も世界中でバラ撒かれている。
Miss.Q
「試合開始は次の停車駅で扉が閉まった瞬間。
周りの人や器具等の損傷はいとわない。
車外へのエスケープは棄権と見なす。
以上だ・・・」
ハシムは振り向き小馬鹿にした様な顔付きで口角を上げる。
Miss.Q
「イヤな男・・・」
そう呟くとMiss.Qは陽炎の様に姿を消した。
ハシム
「さてー?ソロソロ時間デースー。楽しい楽しいパーティの始まりデース!」
再びウイスキーを煽り人気の少ない車内をコツコツと歩き始めた。
発車のベルとアナウンスが流れドアが閉まる。
───ブシュー
アナウンス
「この列車は〇〇行き?・・・・」
静かな列車の中に消え入る様なアナウンスが流れる。
ガタンガタン・・・ガタンガタン・・・。
静寂の中シャカシャカと雑音を纏わせてアンジーがフラフラと歩いている。
お互い目標を知らない同士の開始であったが
遠目に見ただけで両者共にターゲットを見付けたようだ。
『スタンド使い同士は惹かれ合う!』
少しづつゆっくりとお互いが間合いを詰める。
それは少なくとも両方が遠距離で攻撃出来ない事を示唆していた。
ハシム
「Oh…また子供デスカーっ!?日本の子供は恐ろしいデスネー」
頭が痛いと言うオーバーなリアクションを取るハシム。
それに対してアンジーは相変わらずの無表情であった。
ハシム
「・・・?もしかして聞こえてませんカー?
ヘッドフォンしてますもんネー?
これならどうですカー?」
ハシムが指をパチンと鳴らすと左耳のヘッドフォンが突然爆発した。
─ドシュッ!!!
それほど派手ではない爆発であった。
近くにいた酔っ払いの乗客が寝惚け眼で二人を交互に見る。
アンジー
「・・・後で弁償してくれよな・・・」
アンジーは耳を押さえながら壊れたヘッドフォンを投げ捨てる。
アンジー
「ガールズ・デッド・モンスター」
アンジーの静かな呼び声にサッキュバスの様なフォルムをしたスタンドが姿を現す。
ハシム
「ほうほう?人型デスカー?怖いデスネー」
言葉とは裏腹に何かほくそ笑むような表情を浮かべるハシム。
アンジー
「(さっきの爆発は間違いなくスタンドの攻撃だろう。
けど何も見えなかったし何も感じなかった・・・。
離れた相手の一部をピンポイントで爆破する?
そんなスタンド能力がありうるのか?
・・・そして火力はあの程度なのか?)」
スタンドに対しての知識に乏しいアンジーは相手の能力の不可解さに困惑する。それ故に責め倦ねていた。
ハシム
「どうしましター?攻撃してきていいのですヨー?」ニヤニヤ
ハシムは下卑た笑みを浮かべアンジーを挑発する。
ハシム
「なんならホワイト・フラッグでもイインデスヨー?
私は別に少年を虐める趣味はアリマセーン」
そう言うと再び指をパチンと鳴らした。
ドゥッ!
小さな爆発と共にアンジーの左肩の肉が弾け飛ぶ。
アンジー
「─っくっ!!」
ちょうど爆竹を肌に当てたまま爆発させた様な傷ができている。
(正体が解らないならぶっ倒すしかねえ)
そう考えたアンジーはスタンドによる強襲を試みた。
アンジー
「ガルデモッッッッ!!!!!!」
GDM
「シャーーーーーッッッ!!!」
悪魔の様な漆黒の翼を広げ甲高い声をあげながら
ガールズ・デッド・モンスターがアンジーと言う本体から解き放たれる。
鋭く尖った指先で手刀を作りハシムに襲いかかった。
ドゥッドゥッドゥッドゥッドゥッドゥッ!!!!!
アンジー
「グアアアアアアアッッゥ!!」
後コンマ何秒かあればハシムの首をへし折ったであろう手刀が
その腕ごと数回爆発しはじき飛ばされた。
ハシム
「ンフフーデスネー?命をかける戦いでー冷静に判断出来ないのは
とてもとてもノーグッドデスヨー?」
ハシムはチッチッチッと指を振り見下ろす様な目付きで笑う。
アンジー
「(グウウッッッ・・・!!能力の想像すらつかない・・・ッ・・・)」
余りにも一方的な展開に愕然とするアンジーは苛立ちを隠せないでいた。
ハシム
「(そうイラついていては見えるモノも見えないデショウ・・・フフ。
前回手痛いシッペガエシを食らったノデ今回は慎重且つ確実に勝たせて頂きマース)」
アンジー
「こうなりゃ・・・なりふりかまってらんねえ・・・か・・・
巻き込まれたヤツ・・・勘弁なっ!
ガールズ・デッド・モンスター!!!」
アンジーがそう叫ぶとGDMは、辺り構わずあちこちを殴打した。
窓は割れ手摺は歪みシートはめちゃくちゃに壊れ天井の板も凸凹になっていく。
そして最後にハシム目掛け蹴りを放つ。
ハシム
「Oh・・・私はそんなに甘くアリマセーン。
大方今の動き出しの中になんらかの『能力』を仕込んだんでショウ?」
そう言ったハシムの姿がまるで霞がかった様にボヤける。
その瞬間、再びGDMは爆発に見舞われた。
ドドドドドドドォォォォォォッッッ!!!
十数発もの爆発がGDMを吹き飛ばす。
ハシム
「見せずに済むと思ったんですケドネー・・・私の
【ダーティー・ロットン・バスターズ】を」
アンジーはそこで初めて相手のスタンドの正体を知った。
(蚊・・・か・・・?)
数百数千という蚊の群れがハシムを覆う様に蚊柱となっている。
そしてよく見ると自分のスタンドを含め周りのあちこちに、その蚊が吸いつく様に張り付いていた。
(これが爆発の正体か・・・っ!?)
二度食らった爆発の威力から察するに、もしこれを爆発されたら火傷程度では済まない。
アンジーは先程仕込んだ仕掛けが成功する事を願った。
しかしそれがアダとなる。
無意識に仕掛けを─
『天井の蛍光灯の破片の重さを0にし浮遊させ、
相手の頭上に重みをプラスして降り注がせる』
に視線をほんの一瞬向けてしまった。
そんな不審な視線を裏社会に生きるハシムが見逃す事はない。
ハシム
「上デスカ・・・」
ハシムがチラリと上を見た瞬間に蚊の一部が破片に取り付き次々と爆破していく。
これで終わりだとタカをくくったハシムの顔面にアンジーのブーツの踵がめり込んだ。
─メキョ ッ!
アンジーには自分の失敗が瞬時にわかった。
戦いの最中に視線を逸らすなど言語道断だと。
しかしそれ故に次の一手を思い付く事が出来た。
『自分の視線を追い掛けた相手もまた視線を逸らす事になる』と。
次にアンジーは蚊に呪縛されてるスタンドは捨て自らの体重を0にし
ちょうどプロレスで言う所のフライング・ニール・キック要領で
踵に重さをプラスして相手の顔面に見舞った。
ブシューーーーーーッッ!!!
踵が剥がれると同時にハシムの高い鼻から大量の血が噴水の様に噴き出す。
自分でもわかる程のクリティカルヒットにアンジーは勝ちを確信した。
まさかフラリと参加したトーナメントでこんな熾烈な戦いをしなければならないとは・・・。
自分の安易さに少し後悔する。
アンジー
「・・・まだ・・・1試合しなきゃいけないのか・・・・・・」
ハシム
「その必要はアリマセーン」
ッ!?
完全に勝ちと確信していたアンジーの前にハシムが立っている。
ハシム
「先に言っておくぞ小僧。
これが俺達の世界での出来事ならこの俺を見ているその風景が最後だったぞ?
─だが俺は人を殺すのが好きな訳じゃあない。
何故なら食えない肉に興味はないからだ」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーッッッッ!!!!!!
数百匹の蚊が一斉にアンジーに取り付き炸裂する爆竹の様に弾けた。
ハシム
「蹴りの一発で勝敗が決まる程、スタンドでの戦いは甘くないんだよ・・・ガキが・・・」
★★★ 勝者 ★★★
No.6410
【スタンド名】
ダーティ・ロットン・バスターズ
【本体】
ハシム・バラミール
【能力】
物体に同化し、自壊する
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最終更新:2022年04月16日 22:43