輪環の魔導師
作者 |
渡瀬草一郎 |
イラスト |
碧風羽 |
レーベル |
電撃文庫 |
分類 |
禁止図書(危険指定) |
巻数 |
10巻(完結) |
ジャンル |
異世界ファンタジー |
「フィノさんは、優しくて可愛い女の子です。……ただ、ラスボスより恐いだけです」
登場する幼馴染
フィノ(フィリアーノ・ミストハウンド・ドリアルド)
年齢 |
16歳(年上) |
幼馴染タイプ |
ずっと一緒系 |
属性 |
お嬢様、ヤンデレ |
出会った時期 |
フィノ8歳、セロ6歳の時(記憶をなくしているが、もっと幼い頃にも会っている) |
セロが仕えるミストハウンドの町の領主オルドバの養女。セロとは幼い頃から主従の関係を超えた親しい付き合い。養父のオルドバには、セロと距離を置くように注意されていたが、セロが魔族との戦いに巻き込まれた際、狂気を垣間見せオルドバを黙らせてしまう。その後、ミストハウンドの町を離れることになったセロについて旅に出る。
セロのことを病的に溺愛しており、独占欲が非常に強く、セロに近づこうとする女性やセロを傷つけた者には、凍りつくような視線を浴びせ、排除しようとする。その威圧感は、歴戦の戦士や敵組織の幹部まで戦慄させるほどで、アルカインら旅の仲間たちも冷や冷やさせられている。
容姿は道行く人々が振り返るほどの美少女で、普段は、心優しく可愛らしい令嬢として振舞うこともでき(セロのことが絡まなければ)、面倒見も良く、ミストハウンドでは町の人達に慕われていた。狂気に囚われている際も一定の理性は保っており、セロを悲しませないようにという配慮ができるため、短絡的な凶行に及んだことはない。大抵威圧感だけで相手が怯み、敵対しようという意思を失くすのだが……。
戦闘の際には、「純水の細剣」や「天球木馬」などの魔導具をを操り勇敢に戦う(主にセロを守るため、セロを傷つけた相手に報復するため)。元々、戦闘とは無縁の生活を送っていたため、戦闘能力自体は大したことはなく、自分(とセロ)を守ることで精一杯であるものの、その鬼気迫る形相と容赦のなさには妙な迫力がある。また、勘が鋭く、相手の悪意や嘘を見抜く目を持っており、オルドバの屋敷を訪れたハルムバックを最初から信用できないと警戒していたり、「擬態の風船(ミミック・バルーン)」(使い手のイメージした形状の風船を作り出す魔導具)で作られたアルカインの偽物を、ひと目見ただけで見破ったりする。
セロ
年齢:14歳
この作品の主人公で薬師の少年。魔導具職人であった祖父に育てられたが、魔導具を使おうとすると何故か魔導具を壊してしまうため、祖父の後を継ぐのはあきらめ、薬師としての才能を伸ばしてきた。祖父の死後も薬師としてオルドバに仕え、身分の違いを気にしながらも、フィノと穏やかな日々を過ごしていた。しかし、自分の中に魔導具「還流の輪環(ソリッド・トーラス)」が宿されていたことが判明し、魔族に狙われるようになったため、アルカイン、フィノと共にミストハウンドを旅立つこととなる。
心優しく誠実で、悲しそうにしている人を見ると放っておけない性格。ただ優しいだけでなく、自分の意思で決断し、「助けたい」と思った人を助けるために敵に立ち向かっていく気概がある。容姿も可愛らしいと評されるように母性本能をくすぐる美少年然とした見た目で女性に好かれやすい。また、見た目でけでなく、人を惹きつける不思議な魅力を持っており、人間だけでなく、精霊など人外の存在にも好かれやすい。
フィノに対しては異性として強い憧れを抱いており、フィノの美しさに見惚れたり、フィノが傍にいてくれることに安心感を覚える場面が何度も見られる。同時に幼い頃から傍にいすぎたせいか、フィノの狂気に対して鈍感で、フィノが少々変わっていることは薄々感じているものの、やたらと自分にくっつきたがるのは旅に出て不安を感じているため、時々、恐くなるのも仲間を傷つけられて怒っているだけと考えており、周りの人間には、危なっかしさと微笑ましさが混じった視線で見守られている。
その他関係の深いキャラ
アルカイン・ダークフィールド・ロムネリウス
年齢:不明(おそらく20代)
六賢人の一人"魔人"ファンダールの弟子で、"闇語り"の異名を持つ魔導師。魔族にかけられた呪いで直立歩行する黒猫の姿になっている。魔族を追い、やって来たミストハウンドの街でセロやフィノと出会い、彼らの旅の導き手となる。フィノから発せられるプレッシャーに、いつも胃の痛くなる思いをさせられている。
フィノの狂気愛に満ちた台詞とエピソード
- 「いいじゃない。このベッド、セロの匂いがして気持ちいいんだもん。私の部屋と交換して欲しいぐらい」
- 「ええ、落ち着いていますわ、こんなに。今すぐお父様を切り殺したい欲求を、こんなにちゃんと抑えているんですもの。こんなに、この上なく冷静なのに、どうしてお父様はそんなことをおっしゃるの?」
- 宿に泊る際、女の子だから部屋を分けたほうがいいよねというアルカインに
- 「ううん。セロと一緒でいいよ。お金ももったいないし」
- 「ううん。セロと一緒でいいから」
- 「仲間と合流するから、どのみち二つ以上部屋取るよ」(アルカイン)
- 「セロと一緒でいいから」
- さらに、部屋に入った後、
- 「じゃあ、私とセロがこっちで寝るから、アルカインはそっちのベッドを使ってね」
- 「でも、私もセロもそんなに大きくないから、このベッドなら余裕だよ?」
- 宿のおかみがアルカイン用のベッドを用意してくれ、ベッドが空く
- 「――そう? じゃ、ベッド、一つ余っちゃうね」
- 「あぁ。私のは、ただセロ以外の人を信用していないだけ」
- 「"人を見たら泥棒猫と思え"って言うでしょ」
- 「セロは魔族に狙われているんだから。寝る時だって、私から離れちゃだめだよ?」
- セロをベッドに押し倒して「昏倒の香水」(相手を眠らせる魔導具)で眠らせ、そのまま同じベッドで寝た。
- 野宿の際、何故かフィノとセロが同じ毛布を使うことが当たり前になっていた。フィノ用の毛布を買う話はいつの間に立ち消え。
- 「……セロ。世の中にはね、知らないほうがいいことってあるんだよ」(アルカイン)
- 「アルカイン。私、貴方とは仲良くしていきたいの。だから……わかってくれるよね?」
- 真夜中に無表情で、セロの寝顔を焼きつけるように、延々と見つめ続けていた。
- 竜骨の迷宮でセロとはぐれた際「こんなことになるなら"手錠"か何かでセロと自分をつないでおけば良かった」
- ルナスティアっていう小娘が、私のセロに眼をつけた。爪先にキスさせるとか、私だってしてもらったことないのに――素直に殺意が湧いた(6巻末フィノのセロ観察日記より)
- セロが変な夢を見てうなされている。そんなとこも可愛い。寝ている間に、こっそりいろんなことしてみた。割と楽しかった。今度は起きてる時にしたい。(6巻末フィノのセロ観察日記より)
- 魔導具「擬態の風船」を入手。誰の擬態を作って、何に使うかは考えないほうがいい……。
- フィノ三歳未満、セロ生後数ヶ月。この頃から、フィノはセロにご執心。
- 「私のセロを狙うとどうなるか、あいつらに思い知らせてやりなさい! 手加減なんか要らないから、骨ごと叩き潰して!」
- 「セロは私のもの。誰にも渡さない。私とセロを引き離そうとする人は、魔族だろうと賢人だろうと、もちろん神様だろうと絶対に許さない。私にはセロがいればいいの。セロさえいれば元の世界になんか戻れなくてもいい。ずっと二人でここで暮らしてもいい。ここなら誰にもセロを獲られない。貴方はまた――私とセロを引き離すつもりでしょう?」
- 「……セロ、貴方は何も考えないで。ただ私の傍にいて。セロが私のことを好きでいてくれるなら、私は何だってしてあげる。セロが望むこと、全部――本当に、何だってしてあげるよ? キスも抱擁もそれ以上のことも、隠蔽も捏造も殺人も、もしもセロに変なことをする人がいたら、私が細切れにしてあげるから――だから、私から離れないで。絶対に、絶対に、ずっと傍にいて――」
概要
魔法が存在しない代わりに、魔法のような力を起こす魔導具が生活に根ざした世界の正統派ファンタジー。セロとフィノ、アルカインら仲間たちが、各地で暗躍する魔族たちとの戦っていく中で、セロの身に宿った「還流の輪環」の秘密、魔族たちの目的、歴史の裏に隠された神々の真相などが明らかになっていくという展開。物語の構成や文章は読みやすく、設定が「パラサイト・ムーン」とリンクしており、過去作からの渡瀬ファンはニヤリとできる仕様。
鉄板の馴染み作家渡瀬草一郎だけあって、当然のごとく幼馴染を配備。馴染み部分の評価としては、ヒロインであるフィノのキャラが強烈すぎるの一言につきる。セロを独占するための行動力は凄まじく、他の女性キャラへの容赦ない牽制、凍りつくような視線、さらりと繰り出される爆弾発言の数々、ヤンデレヒロインとしてもレベルの高さを感じさせる。また、絵師が非常にいい仕事をしているのも相まって、その様はラスボスよりも恐いとも評されている。
ヤンデレではあるものの、狂いながらも安易に凶行に走ることはなく、強い自制心を持っているのが特徴。主人公のセロも鈍感ではあるものの芯は強く、フィノ一筋であることは揺らがないので安定の禁止展開。
共に過ごした時間の長さというアドバンテージを活かせず、かませ扱いされることの多い幼馴染が多い中、狙った獲物を逃さず、ライバルに付け入る隙を与えないフィノの行動力は、他の幼馴染たちも見習うべきなのかもしれない。
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以下ネタバレ |
10巻にて無事、完結したが、最終巻でもフィノの迫力は圧巻であった。
- 聖神イスカによって作られた異空間に取り込まれたアルカインやフィノたち(セロは取り込まれなかった)。欲望や闘争心といった感情が放棄された世界で、アルカインら歴戦の戦士や、聖人クラニオンや聖教会の信徒たちが、誰一人抗うことが出来ずに、強制された平穏に身を委ねる中、
- 「でも……ここには、セロがいない」
- 「セロはここには来られない……だったら、私はこんな世界なんかいらない。私にはセロしか要らない。セロがいない場所に意味なんかない。この世界が貴方達が望んだもので、その世界が私とセロを引き離すものなら――"貴方達を皆殺しにしてでも"、私はセロの傍に戻るから」
- 「……アルカイン。貴方は――私とセロの敵? それとも味方?」
- 「も、もちろん、味方だよ」
- フィノはアルカインの首筋を引っ掴み、シズクの腕から引き上げた。
- そのまま、瞬きもせずに、間近で真っ向から彼の眸を覗き込む。
- 「……だったら、こんな嘘の世界で世迷言を言っていないで、とっとと脱出する方法を考えて。忘れないでね? 私が貴方に敵意を向けないのは、貴方がセロを守ってくれるから――もし貴方がセロを見捨てるなら、その瞬間から、貴方は私の"敵"だから」
- 「私とセロを引き離す人は全員敵。神様だろうと関係ない。私をここから出さない気なら……私達の邪魔をするなら、絶対に叩き潰すから」
- フィノの狂気に、聖神イスカすらも戦慄を覚え、フィノの迫力に正気を取り戻したアルカインら共々、空間から強制排除される。
フィノの狂気愛が、神すらも凌駕した瞬間であった。一方のセロも、自分の力でフィノを愛し幸せにしたいと、自らの想いをはっきりと告げ、主人公としても、幼馴染の相方としても申し分のない男らしさを見せる。エピローグでも、当然のごとく二人は結婚間近の状態になっており、危険指定に相応しい文句なしの禁止ENDである。
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最終更新:2012年08月27日 23:38