殺×愛

殺×愛(きるらぶ)

作者 風見周
イラスト G・むにょ
レーベル 富士見ファンタジア文庫
分類 推薦図書 ※ただし危険度高め
巻数 8巻(完結) 0巻が最初
ジャンル 現代セカイ系ファンタジー

「結末だけがすべてじゃない」

登場する幼馴染

萌月来夏(ほうづき らいか)

年齢 18歳 高校三年(同い年)
幼馴染タイプ ずっと一緒系
属性 お隣同士、元気っ娘、幼い日の約束
出会った時期 幼稚園の頃

 密の隣家に住む幼馴染で、幼少期からの付き合い。密のことを「ひーちゃん」と呼ぶ。密の部屋とは窓越しの会話できる配置。
 子供の頃は、体が弱く、いじめられっ子だったが、公園でいじめられていた時に、密に助けられたことから強く心惹かれ、恋するようになる。以降、密と毎日のように一緒にすごし続ける。子供の頃の思い出も「来夏がピンチの時に、密が駆けつけ助けてくれた」「怪我した来夏を密がおんぶして家まで送ってくれた」「ままごとで結婚の約束をした」など、定番ものが取りそろっている。
 性格は、元気いっぱいで快活。中学の時、母親が天使に回収されてしまったこともあり、家事能力は高く、密の味の好みも熟知している。体型は小柄だが、胸ははちきれんばかりと称されるほど大きい。密への好意は、周りにバレバレで暖かい目で見守られている。肝心の密に対しては素直になれず、照れ隠しに悪態をついたり、チョップを食らわせたりする。密と恋をするためにやってきたと宣言するサクヤにはライバル心を燃やす。

椎堂密(しどう ひそか)

年齢:17歳 高校三年
 この作品の主人公。人類の終焉を見届ける《オメガ》に選ばれた少年。例え、粉々になろうとも再生する不死身の体を与えられており、その宿命を忌み嫌い、自分を殺して《世界滅亡》を終わらせることを目的としている。そのため、《対天使兵器》であるサクヤに、殺すための恋をする取引を持ちかける。
 目的のため、脅迫や懐柔を駆使してヒロインたちを利用し、人知れず天使から街を守り続けている。自分は、目的のためにどんな非道も行う最低野郎だと悪ぶっているが、内心では、力不足で救えない人がいることや自分の存在のせいで《世界滅亡》が続いていることに、悲しみと憤りを感じている。その様から、ヒロインの一人には《偽悪者》と呼ばれている。
 来夏に対しても、自分の日常の象徴として必要な存在だから大事にしてるだけで、いざとなったら斬り捨てられる存在と偽悪を気取り、そっけない態度を取り続け、好意にも気付かないふりをしているが、来夏だけは、決して自分の宿命に巻き込むまい、決して傷付けまいと細心の注意を払っている。
 子供の頃は、特撮ヒーローに憧れる正義感溢れる少年だった。

来夏と密のエピソード

  • 「昔も、こうやっておんぶしてもらって帰ったことあったね。新しい靴買ってもらって……」
    • 「あー、その靴野良犬に取られたんだっけ」
    • 「私が泣いてたら、ひーちゃんが来てくれたんだよ。そいで、取り返そうとしてくれたけど、噛みつかれちゃって……今も傷ある」
    • 「もう、治ったよ」
  • 「えへへ。あの頃に比べて、ひーちゃんの背中、おおきくなったね」
  • 子供の頃、来夏の胸が小さいのをバカにした際
    • 「……ひーちゃん、おっきいほうが好きなの?」
    • 「ま、どっちかって言うとね」
    • 「それじゃ、絶対大きくするもん! ひーちゃんのバカ!」
  • 「い、いるよっ。好きな人」
    • 「……うん。ひーちゃんがよっっっっっく知ってる人」
    • 「好きな人とは、今も友達なんだよ。一緒に遊んだり、お喋りしたり、ときどきケンカもするけど……そんなカンケーって、楽しくて、わりと幸せなんだ」
    • 「そう。ものすごっく、近いんだよ」
  • 「あはは、こんな風に逃げてると、子供の頃思い出すね。灯台に一緒に登ったときのこと」
    • 「うん。ひーちゃん、私を逃がすために一人で戻って……ワザと捕まってくれたんだよね」
  • もしも、世界滅亡が訪れなかったら?
    • 恐らく、きっと、僕自身認めたくないけれど、
    • 世界が壊れる一瞬前まで――僕は、この少女に恋をしていた。
  • (目的の前には)来夏の死すら小さなことなんだ。そんな風に考えているのに、
    • 僕は、狂ったように引き金を引き続けていた。
    • 来夏は、僕にとって、日常の象徴であり、
    • とても、大切な、友達で、
    • とても、大切な、存在で、
    • 僕だって、本当は失いたくない。
  • 「私ね、ひーちゃんの力になりたいと思ってるんだよ。ひーちゃんにはいっぱいいいーっぱい助けてもらったから」
  • 「ひーちゃんを誘うのに、おっきな理由が必要かな? とくに用事がなくても、いっつも一緒にいたじゃん。昔からさっ」
  • 「なにがあったって、私にとってひーちゃんは《ひーちゃん》だよ……」
    • 「憎んだりしない。嫌いになんて、なれないよ」
    • 「ひーちゃんだもん。平気だよ。私はなにをされたっていい……。だから、お願いだよ」
    • 「自分のことを、そんなに嫌いにならないで」
  • 子供の頃の秘密基地を探索した密と来夏
    • 《こんいんとどけ》
    • 《わたしたちは しょうらい けっこんします》
    • 《しどう ひそか》
    • 《ほうづき らいか》
    • 「こんな《証拠》が残ってちゃ困るよね! うん、私が捨てておくよっ!」
    • そんな風に言ったけれど、来夏は画用紙を破れないように丁寧に折りたたみ、そっとポケットにしまった。
+ 以下危険度高め、ネタバレ含む
  • 「私は、ひーちゃんが好き」「ちっちゃい頃から好きだったんだよ……。友達の関係が壊れちゃうのが怖くて言い出せなかったけど……ずっーとひーちゃんだけを見つめてきたんだよ」
  • 「私がコクったのは、ひーちゃんを苦しめたいからじゃない。正々堂々と勝負したいからコクったんだよ」
  • 「私の恋がダメになっちゃっても、ひーちゃんには笑ってて欲しいし!」
  • 「ひーちゃんの腕をギュッとしたりするの、ぜ~んぶわざとやってるんだよっ! 今までのも、さっきのも! 胸が当たってることに、女の子が気付かないわけないでしょ!?」「私にだって下心はあるんだからね?」
  • 「このセカイが真っ暗闇じゃないって教えてくれて……一緒に行こうって手を握ってくれた。だから、きっと私は強くなれたんだ」
  • 「変なことじゃないよ。出逢った瞬間から、ずっとず~~~~っと好きだったんだもんねっ」
  • 「えへへ、ひーちゃん、大好きっ。きっとね、こんなに誰かを好きになれることなんて、もう一生ないと思うよ」
  • 「夢じゃないんだよね? 私とひーちゃん……おつきあいすることになったんだよね?」
    • 「私は、ひーちゃんの恋人なんだよね?」
    • 「そうだよ。来夏は僕の……カノジョだ」
    • 「うっきゃあああ~~~~~~~~~~!」奇声をあげながら来夏はベッドの上で右へ左へと転がった。
  • 「初めてはひーちゃんじゃなきゃヤダッて思ってたから……。夢が叶っちゃった……」
  • 「その指輪」
    • 「ちっちゃい頃に二人で買ったやつだよ。これで二人で《結婚式》したよね?」
    • 「えへへ…指輪の交換、しようよ」
    • 「ねえ、ひーちゃん。あのときと同じように、もう一度、約束して欲しい。私とずっと一緒にいてくれるって……」
  • 「えっとね、私が最後のデザートの予定なんだけど……ひーちゃんが望むなら、その、今から、つまみ食いしちゃっても、いいよ?」
  • 「きみは……怖くないのか? 僕はバケモノなのに……」
    • 「ひーちゃんは、ひーちゃんだもん。どんな存在だって構わないよ」
    • 「ひーちゃんが、好きだから」
  • 「えー、どうして? 私は誰に見られたって平気だよ? ラブラブなのは事実なんだし」
  • 「……いいよ。許したげる。ひーちゃんのファーストキスの相手は私だしね」
    • 「ま、覚えてないのも無理ないけどね。ちっちゃい頃、一緒にお昼寝してるときに、ちゅっとしちゃっただけだから」
  • 「キスの仕方とか、いっぱい教えてよね」
  • 「でも、好きな男の子が相手だと違うんだよ。一緒にいるだけで、ドキドキする。声を聞いているだけで、胸が熱くなる。少し触れ合っただけで、気が遠くなっちゃう……。女の子はね、そういう風にできてんの――隙アリっ!」
    • ちゅっ。来夏は僕の頬に不器用なキスをしてきた。
    • 「つまりね、私は、ひーちゃんが大好きなのです」
  • 「もう、誰にも渡せないよ! ひーちゃんが死んじゃうなんて耐えられないもん! ひーちゃんがいない世界なんて、意味ないもん……!」
  • 「君と僕とで世界の終わりを見に行こう」
    • 薬指に指輪をはめてあげる。
    • 「世界で最後の二人になろう」
    • 「ひーちゃん……」
  • 「僕が十八歳になったらさ……なんつーか、その、ちっちゃい頃に二人で作った《こんいんとどけ》をホンモノにしないか?」
    • 涙目のまま、嬉しそうに微笑んで、
    • 「――うんっ」来夏は小さく頷いた。
  • 「叶えてあげるつもりのない恋心を向けられるのって、すごく《重い》のに……。受け止め続けてくれて、ありがと。ずっと、恋をさせてくれて、ありがと」
    • 「……私を選んでくれて、ありがとね」
  • 「ちっちゃい頃からの夢がい~~~~~~~~~~~~~~っぱい、叶っちゃったもん……」
  • 「ありがとね、ひーちゃん。私、いっぱい、幸せ、もらっちゃった……」

概要

 突如始まった《世界滅亡》。無慈悲な天使たちに為すすべもなく、《回収》されていく人類。人類の終焉を見届ける存在《オメガ》として、不死身の肉体を与えられた少年。《世界滅亡》を止める方法は、《オメガ》である少年が死ぬこと。そして、不死身の《オメガ》を傷付け、殺すことができるのは、互いに愛し合う相手のみ。死にたがりの少年と、世界を救いたい少女は、殺すために恋をする。
 いわゆるセカイ系というジャンルで、世界規模の大災厄が起こっているものの、物語は、密とその周囲の狭い範囲で展開され、密たちの平和な学園生活が中心に描かれていく。
 《オメガ》に選ばれた椎堂密が、世界を救うために密を殺すべくやってきた《対天使兵器》の少女サクヤに、契約を持ちかけるところから始まる。目的のために、サクヤを利用してるだけと悪ぶりながら、次第にサクヤに心惹かれていく密。戦うことしか知らず、平和な学園生活に戸惑いながら、密との恋の真似事や、クラスメイトたちとの交流の中で、恋を知っていくサクヤ。そんな二人の不器用な恋物語がメインとなる。
 一方の来夏も、家が隣同士、幼少期からの付き合い、思い出の共有、ままごとでの結婚の約束など、定番の馴染み要素をフルに持ち合わせた高スペックな幼馴染である。来夏との思い出が語られるシーンも多く、密も来夏のことは他のヒロインに比べて明らかに特別扱いしており、ヒロインとして破格の好待遇を受けているものの、物語の流れからして非常に不利な立場におり、明らかな推奨展開と言える。
 しかし、※ただし危険度高めと、注意書きされる理由が5、6巻にある。
 4巻までは、散発的な天使の襲撃はあるものの、被害も少なく、平和な日常が続いていく。しかし、5巻で一遍してシリアス展開になる。

+ 以下ネタバレ
 二人の不器用さと擦れ違いから関係にひびが入り、恋をする契約を解消した密とサクヤ。その後、来夏に告白された密は、彼女と付き合うことを決意し、恋人同士になる。しかし、密たちの街は、大規模な天使の襲撃によって、甚大な被害を受ける。多くのクラスメイトが死に、来夏も家と家族を失う。
 6巻は、家を失い、密の家で同棲することになった密と来夏。苦しい環境の中、懸命に恋人同士として過ごし続ける二人の姿が描かれる(作内期間で約三ヶ月に渡る)。不安を埋めるように密に甘える来夏、来夏を愛していこうと決意する密。キスはもちろん、エッチも済ませ、クラスメイトの前でイチャイチャ、子供の頃の結婚の約束を本当にしようとプロポーズするなど、おおよそ恋人同士の羨ましい行為をやりつくし、想いを深めあっていく。という禁止図書レベルの展開が繰り広げられる。
 反面、来夏を愛しながら、サクヤにも強い想いを持っていることに気付き苦悩する密。密の《オメガ》として宿命を知りながらも、密を受け入れる来夏。宿命を知ったが故、密を殺させまいとサクヤに敵意を向ける来夏。といった修羅場もあるものの、最後は、密は《世界滅亡》を止めることを放棄し、来夏と残った時間を過ごすことを決意する。
 しかし、新たな旅立ちに出ようとした矢先、天使の襲撃を受け、来夏は命を落とす。

 その後の顛末は、来夏の死に絶望した密はサクヤによって立ち直り、想いを確かめ合った二人は、恋人同士として過ごしながら、《オメガ》の宿命に抗う。といった結末だけを見れば、完璧な推奨展開となる。
 しかし、幼い頃からの恋を成就させ、思い描いていた恋人生活を満喫し、その恋人が最後の時を過ごす相手に自分を選んでくれたという、ある意味、幸せの絶頂の中で逝った彼女を、敗者やかませ犬などと呼ぶことは決してできないだろう。
 結末は推奨なのに、過程は禁止レベル。何とも印象深い作品である。

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最終更新:2012年05月26日 21:47
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