時載りリンネ!
作者 |
清野静 |
イラスト |
古夏からす |
レーベル |
角川スニーカー文庫 |
分類 |
禁止図書 |
巻数 |
5巻 続刊中? |
ジャンル |
現代ハートフルファンタジー |
「児童文学でも通用しそうな健全さ」
登場する幼馴染
箕作リンネ・メイエルホリド(みつくり リンネ・メイエルホリド)
年齢 |
12歳 小学六年(同い年) |
幼馴染タイプ |
ずっと一緒系 |
属性 |
お隣同士、元気っ娘、金髪ハーフ |
出会った時期 |
幼少期 |
久高の隣家に住む幼馴染で、時載り(※)の母と人間の父の間に生まれたハーフの少女。父が、久高の祖父の教え子だった縁で、楠本家の隣に引っ越してきた。久高とは、物心ついた頃からの仲で、家でも学校でも、ほぼ毎日行動を共にしている。
母親譲りの美しい金髪と、透けるような白い肌を持つ美少女だが、好奇心旺盛かつ負けず嫌いで、外を走り回るのが好きな活動的な性格。また、テレビの影響を受けて、冒険がしたいと言い出すような年齢相応の無邪気さも持ち、その度に、思いつきで行動をはじめては、久高たちを振り回している。勉強は得意ではないが、古典文学や学術書に囲まれて育ったせいか、知識や見聞は深く、難解な言い回しをすることも多い。
時載りにも関わらず、本を読むのが嫌いで、いつも母親を困らせている。そのため、時間を止める力も使えるストックが少なく、必要になった時には、ストックを溜めるために熱心に本を読む。反面、人間と同じように食事を取るのは好き。
学者である父は行方不明で、母と弟のねはんと三人で暮らしている。また、箕作家の離れは図書館になっており、姉のような存在であるGが専属司書として管理している。
※本(文字)を読むことで生存に必要な力を摂取する種族で、水や食料を摂取する必要はない。バベルの塔と呼ばれる巨大建造物で生活しているが、稀に塔から離れ、人間社会で暮らす変わり者もいる(時載り全体の1割未満)。時間を操ることができ、200万の文字を読むごとに、1秒間だけ時を止めることのできる能力を持つ。
楠本久高(くすもと くだか)
年齢:12歳 小学六年
この作品の語り手の役目にいる少年。リンネと自分たちの冒険を物語として書き記している。
小学生にしては、冷静で達観した性格で、面倒見が非常に良い。これは、奔放なリンネや、特殊な能力を持つ妹の凪の面倒を見てきたことや、祖父やGなど、知的で思慮深い知人が多い環境で育ってきたためであると思われる。
昔から、リンネには振り回され続けているが、何だかんだ言いつつも決してリンネを見捨てることはなく、状況に応じて助言をしたり、リンネが暴走しそうな時はブレーキ役になったりする。ただ、好奇心に負けてリンネの無茶に乗ってしまったりと、時折、年齢相応なところを見せることもある。
リンネと久高の台詞とエピソード
- 「何言ってるの、久高。幼なじみでしょ。わしとお前は焼山かずら、うらは切れても根は切れぬ」
- 「あのね、久高。私、一つお願いがあるの」
- 「久高、なんでいなくなるのよっ。ちゃんといなきゃダメじゃないの!」
- 「だって暇だし。僕はやることないしさ」
- 「やることがなくてもいいのっ。久高は私の側にいなきゃダメなの!」
- 「だって、ふつうの男の子のおよめさんになる時に必要でしょ」
- リンネが急に料理をしたいと言い出した理由を尋ねた時の台詞。
- 「なんじゃ? 言っておくがあれの嫁はもう決まっておるぞ」
- 久高の祖父が、久高に興味を持った様子のハルナに向けて言った台詞。久高の嫁=リンネで確定していると取れるフラグ。
- 『塔』で迷子になり、珍しく弱気になったリンネを励ました久高
- 「ああ、でも私、久高と二人でよかったわ。こんなところで独りぽっちになったら、きっと心細くて仕方なかっただろうと思うもの」
- 「ね、久高。これからもずっと側にいてね」
- そう言うとリンネは指と指をからめるように僕の手をしっかり握りこんだ。なんか妙なことになったなと思いつつ僕はその手を握り返した。
- 久高の母が、風邪で寝込んでいた久高のお見舞いに来てくれたリンネに、ちゃんとお礼を言うのよと言った後、
- 「ほんと、いい子ねえ。あんな子がウチにお嫁さんにきてくれるなんて、もったいないくらいだわ」
- 「へん。誰がだい」ぼくは威勢よく言ったが、半分は照れ隠しだった。
- 風邪が治り、リンネの家に顔を出した久高に、リンネの母が言った台詞。
- 「リンネがどうしてもお見舞いに行くって聞かなくて。もし久高くんが死んじゃったら泣いちゃうからって」
- 年末の街に買い物に出かける久高とリンネ。病み上がりの久高がくしゃみをしたのを見て、
- 「でも、くしゃみしたわ。私のマフラー貸してあげるね」
- リンネはすばやく自分のピンクのマフラーを解くとそれをぼくの首に巻きつけた。
- リンネのマフラーの温もりを感じつつ、お見舞いに来てくれたお礼を言う久高に、
- 「だって、心配だったんだもの」
- リンネはそう言うと、ちょっともじもじしていたが、やがてぴとっとくっついてきた。迷った末、ぼくはおずおずとリンネの手を取った。
- お正月。振袖姿のリンネに思わず見惚れる久高。その時は、恥ずかしくて何も言えなかったが、初詣に向かう途中、
- 「いかがですか、久高様。和服をお召しになったリンネ様は?」とGに聞かれ、
- 「うん……。すごくかわいい」
- 初詣の際、人恋しくなったリンネが歩み寄ってきて、
- パーティに招かれた久高とリンネ。娘に腕を差し出しフォーマルにエスコートする鷹見親子を見て、リンネは久高に視線を投げかけ、
- やむなくぼくは見よう見まねで、自分の腕をリンネに突き出した。リンネはつんとあごを上げると、優雅にぼくに寄りそった。
- 「幸か不幸か、お前の未来はあの金髪の嬢ちゃんの未来と分かちがたく結びついている」
- ハルナが凪の能力の診断をした後に久高に言った台詞。久高の嫁=リンネで確定していると取れるフラグ2。
概要
200万の文字を読むことで1秒間だけ時を止められる力を持つ一族「時載り」。久高の幼馴染である時載りの少女リンネは、いつも思いつきで久高を振り回す好奇心旺盛な子。リンネの「わくわくするような冒険がしたい」の一言で始まった一夏の冒険は、久高とリンネを、時間の狭間で生き、禁を破った時載りを抹殺する"時砕き"と一冊の"誰にも読めない本"に巡り合わせる物語の始まりだった。第11回スニーカー大賞〈奨励賞〉受賞作。
主人公が小学生という、ラノベでも珍しい設定。やや古めかしい難解な言い回しが多いものの、好奇心のままに無邪気に走り回る子供たちと、それを取り巻く大人たちの優しさを表した温かみのようなものが作品全体に溢れている。異能やバトル要素もあるものの、丁寧に描かれた友達や家族との何気ない日常から見えてくる人間関係や思いやりの描写が秀逸。「萌え」や「ロリ」といったあざとさを狙って小学生を登場させる作品は数有れど、児童文学でも通用しそうな健全さは、純真だった子供時代を思い出させてくれるかのようである。
幼馴染同士である久高とリンネだが、男女の区別も恋愛感情も意識せず、ただ一緒にいたいから一緒にいるといった子供らしい純粋さに満ちている。何かにつけて久高に構いたがるリンネの可愛らしさや、どれだけ振り回されても当たり前のようにリンネに付き合う久高の関係が、実に微笑ましい。また、将来的に、二人が結ばれるのは確定していて、久高もそれを受け入れているとも取れる箇所もあり、二人の将来を考えると、けしからない想像がかき立てられしまい、末恐ろしさを感じる。
禁止スレ的にも、純粋に物語的にも、続刊には大いに期待されていたが、2009年に出た5巻以降、新刊が出る兆しがなく、非常に残念。
※補足
雑誌ザ・スニーカー(2011年4月号で休刊)に連載されていた日常絵巻も一見の価値あり。リンネたちのささやかな日常を絵本風に描いたショートストーリー。全5回で、2009年6月号~2010年2月号に掲載。未文庫化。
最終更新:2012年03月20日 22:46