12DEMONS
作者 |
御堂彰彦 |
イラスト |
タケシマサトシ |
レーベル |
電撃文庫 |
分類 |
不明・あるいは両方 |
巻数 |
2巻(完結) |
ジャンル |
現代異能者サスペンス |
「残り数十ページから始まる大逆襲」
登場する幼馴染
黒百合空亜(くろゆり あくあ)
年齢 |
高校一年(同い年) |
幼馴染タイプ |
ずっと一緒系 疎遠タイプ |
属性 |
クーデレ、ボクっ娘、腹黒 |
出会った時期 |
少なくとも小学生の頃には出会っていた |
聖誕学園の生徒で、ミステリアスな雰囲気を纏う少女。椎矢とは幼馴染同士だが、椎矢が空亜を避けていることもあり、現在はあまり交流がない。
容姿は、小柄な体型に、腰まで伸ばした艶やかな黒髪。幼い顔立ちに無邪気そうな笑顔を浮かべた完璧な美少女なのだが、その美しさは、無機質で人形めいた印象を与える。自分のことをボクと呼び、皮肉めいた男っぽい喋り方をする。また、「猫を生贄に悪魔を召喚しようとした」「校庭に魔法陣を描いて魔法を使おうとした」「屋上に上がって宇宙人と交信している」などの、黒い噂があり、変人として不気味がられている。
争奪戦では悪魔の部位を匂いで嗅ぎ分ける「悪魔の鼻」を所持している。争奪戦に巻き込まれ戸惑っていた椎矢に助言を与えた後、集団行動は苦手だからと告げ、身を潜める。
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以下ネタバレ |
実は、争奪戦を引き起こした黒幕で、真っ先に奪い取った「悪魔の鼻」の所持者の振りをし、他の所持者の奪い合いを誘導していた。本当の部位は、相手の心を読み、形がないゆえ誰にも奪い取ることが出来ない「悪魔の魂」。
周囲から敬遠され、悪魔呼ばわりされ続けることに絶望し、それなら本物の悪魔になってしまおうと考え、争奪戦を引き起こした。その根底には、幼馴染で大好きだった椎矢までもが、自分を避けるようになったからという悲しみがあった。
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朽木椎矢(くちき しいや)
年齢:高校一年
この作品の主人公。聖誕学園に通う高校生。突如、異空間に閉じ込められ、悪魔の部位争奪戦に巻き込まれることとなる。
平均的な体型で、眼鏡をかけており、知的な印象を与えるが、左右の視力調整のためにかけているだけで、勉強はそれほど得意ではなく、むしろ運動のほうが得意。仲間思いで、見た目は温厚そうだが、案外、喧嘩は強い。
争奪戦では、相手の所持する悪魔の部位を見抜くことのできる「悪魔の眼」を所持する。当初は、戦うことなど馬鹿げていると考え、他の所持者と話し合おうとするが、敵意を向けてくる相手に、戦うことを余儀なくされていく。戦いの中では、相手の裏をかいて出し抜く機転の良さを見せるが、肝心なところで非情になりきれず、チャンスを逃す甘いところがある。また、敵意を向けてくる相手には容赦しないが、善意を装って近づいてくる相手は信用してしまう、優しすぎるところもある。
空亜とは幼馴染同士だが、ある負い目から、空亜のことを避け続けている。
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以下ネタバレ |
元々、空亜とは仲が良く、好意を抱いていた。しかし、小学生の頃、空亜の黒い噂が流れた時、噂を流していた同級生に腹を立て、怒りに任せて痛めつけた。その結果、空亜に関わった者には災いが降りかかるという噂の信憑性が増してしまい、空亜の立場が一層悪くなってしまった。
そのことで、空亜に顔向けすることができなくなり、罪悪感から逃れるように空亜を避けるようになってしまった。
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エピソード
- 「椎矢はどうしてボクを怖がってるのかな?」
- 「昔はそんなじゃなかったのにどうしてかな? いつからかな?」
- 「ほら、都合が悪いと目を閉じて顔を背ける椎矢の癖が出た」
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以下ネタバレ |
- 「お前はオレの癖を分かってるかもしれないけど、オレだってそうだ。お前の癖の一つや二つ知ってるぞ」
- 椎矢の空亜への負い目に関する過去の回想
- オレのしたことはまったくの逆効果だった。
- オレのしたことで、空亜の噂が真実になってしまった。
- その日から、オレは空亜の瞳を見れなくなった。
- その日から、オレは空亜を避けるようになった。
- その日から、オレは空亜が嫌いになった。
- だって――会わす顔がないじゃないか。
- 好きでいる資格なんてないじゃないか。
- 「ウソだ……ウソだよ……いまさら、そんなのないよ……」
- 「だって、だってそれじゃ……悪魔になる意味なんてないじゃないか」
- 自分に触れると災いがかかると恐れる空亜に、椎矢が一喝
- 「オレに呪いは掛からない! いいや、逆だ。呪いは解ける。オレの手を掴めば、呪いは解ける! だから掴め!」
- 「椎矢はもう触れられるよ。ボクの心に――悪魔の魂に」
- 悪魔の魂を護る扉に掛けられた鍵を開けられるのは、想いを乗せて伝えた言葉だけ。
- 悪魔の魂を奪えるのは堅く閉ざされた扉の鍵を開け、無防備となったその心に触れた者だけ。
- 空亜が、形のない魂に触れられる程、椎矢に完全に心を開いたこと表す台詞。
- 「それでこそボクの大好きな椎矢だよ」
エピローグでの空亜の猛攻
- 眼が疼く。体が重い。
- それは、空亜が椎矢の体の上に乗って、まぶたの上から目をぐりぐりといじっていたからだ。
- ベッドの上にちょこんと空亜が座っていた。
- 「何やってんだ、お前!」
- 「起こしに来てあげたのに、ひどいなぁ」
- 「頼んでねぇよ!」
- 「頼まれてないしね」
- 毎晩、毎朝部屋にやってきては、少しだけ話して、次回に回してしまう。
- ここに来る口実を作ろうとしているというのは、椎矢の思い過ごしだろうか。
- 「なーんだ。今日の質問はつまらないの」
- 空亜が拗ねたような感じで口を尖らせ、こてんとベッドに寝転がった。
- 椎矢にキスで悪魔の部位を譲渡したことをからかわれ、テンパって言い訳する琴葉を挑発するように、
- 「じゃ、ボクも勘違いしちゃおっかな!」
- 空亜がベッドから飛び出して、椎矢の腕に自分の腕を絡めた。
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概要
聖誕学園に伝わる悪魔復活の儀式。「同じ時、同じ場所に、奪われた部位が集えば、我復活を果たさん」。
学園が文化祭の余韻に浸る中、突如、発生した地震。学校そっくりの異空間に閉じ込められた悪魔の部位をそれぞれ宿した十二人の少年少女たち。他の所持者から部位を奪い、全てを集めたものだけが願いを叶え、生還できる部位争奪戦が始まる。
否応なしに閉鎖空間に閉じ込められた者達が、生き残りをかけて戦うサバイバルゲームもので、それぞれ身に宿った能力を駆使した駆け引きと、極限状態下で、話し合いで解決しようとする者、力で奪い取ろうとする者、謀略を巡らせる者たちの思惑のぶつかり合いが見所。主人公である椎矢は、メインヒロインであるクラスメイトの円夜琴葉と共に、争いを回避して異空間から脱出する方法を探すことを目的として行動する。その中で、襲ってくる所持者と仕方なく戦ったり、共闘したり、騙し騙されを繰り返したりしながら、真相に迫っていくという展開。
椎矢と幼馴染である空亜だが、ミステリアスな雰囲気を持つボクっ娘という魅力的なキャラであるのだが、2巻半ばまでは、所々で姿を現す程度で存在感も薄い。一方の、椎矢は空亜に何か思うところがあるようなそぶりを見せるのだが、出番の少ない空亜をよそに、琴葉と仲を深めていき、2巻半ばで、推奨展開確定といってもいい状態になる。ところが、その後、残り数十ページという段階から、息を潜めていた空亜の大逆襲が始まる。
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以下ネタバレ |
生き残りが最後の二人となった争奪戦。本性を現した空亜と対峙する椎矢。全てを終わらせるべく椎矢を追い詰める空亜に対して、椎矢の思いと幼馴染特有の絆の深さが、空亜の心の闇を打ち破り、椎矢と空亜の心を通じ合わせる。しかも、空亜が凶行に走った原因が、椎矢と空亜が、互いのことを想い合っていたがゆえの擦れ違いであったことが判明し、急速に空亜の存在感と可愛らしさを発揮される。
ラストは、無事、生還した所持者たちのエピローグが描かれる。空亜の攻勢はここからが本番で、椎矢への好意を取り戻し、隠すこともなくなった空亜が、毎朝、毎晩椎矢の部屋に押しかけ椎矢を翻弄し続けている様が描かれる。しかも、馬乗りになって椎矢を起こす。ベッドに寝転がって、椎矢を取られまいと押しかけてきた琴葉を挑発するなどのふてぶてしさを見せ、ラストの「悪魔の部位争奪戦に比べれば、恋の争奪戦なんて可愛いものだろう。これがいかに甘い考えであったかを椎矢が知るのは、また別の話」の一文からも、その後の、空亜の攻勢がいかに苛烈であったかは想像に難くない。
本編の椎矢と琴葉の関係を見れば、琴葉が優勢と言えるだろう。しかし、完全に傾いていた流れを、僅か50ページ程度で覆した空亜には、もしかしてと思わせるヒロインとしての力強さがある。後に、主人公とヒロインのイチャラブで多くの読者を魅了する御堂彰彦の片鱗が見て取れる一作である。
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最終更新:2012年05月27日 10:18