翔竜伝説

翔竜伝説

作者 岩佐まもる
イラスト 西村博之
レーベル 角川スニーカー文庫
分類 禁止図書
巻数 2巻(未完)
ジャンル SF牧場ファンタジー

「信頼してるからこそ甘えない関係」

登場する幼馴染

メリクル・ミゼ

年齢 15歳(同い年) ※作中で17歳に
幼馴染タイプ ずっと一緒系
属性 世話焼き、元気っ娘、短髪ボーイッシュ
出会った時期 物心ついた頃から

 牧場長の娘で、ストールとは幼馴染で家族同然の仲。親しい人間には、メルと愛称で呼ばれている。子供の頃から、竜に接した生活を送り、現在は牧場の従業員として、竜の調教助手を勤めている。
 こげ茶色の髪を短くカットし、まるで少年のような印象の少女で、性格も明るく、物怖じせずに言いたいことははっきりと言う性格。バランス良く整った顔立ちは、将来は美人になりそうだと言われている。しかし、自分を着飾ることには無頓着で、作業着姿でいることが多く、年頃の女の子として大丈夫かと心配されている。そんな中でも、ストールに誕生日プレゼントとして貰ったゴーグルは、いつも首からぶら下げている。
 ストールとは、幼馴染特有の気安さを持って接するが、仕事の上では、公私の区別はつけており、甘えることも、必要以上に口出しすることもない。しかし、ストールが思い悩んでいる時には、遠慮なく叱咤激励する。特に、ストールが幼竜クーを処分しようとした時には、感情に任せて経営上の問題に反発した。それも、ストールが感情を押し殺して、思いつめていたことを見抜いていたからである。結果として、それがストールの心を開き、クーを競翔竜として育てることを決意させる。また、専属騎手としてやって来たウリュメルが孤立していた際にも、彼女に親しく接し、皇族にわだかまりのあったストールとの仲を取り持ったりと、非常に世話焼きなところがある。

ストール・グバイ

年齢:15歳 ※作中で17歳に

 この作品の主人公で、父の急死により、若くして竜牧場グバイファームの社長となる。普段は温厚で、のんびりとした性格だが、仕事になると、経営者として合理的で、時に非情な判断も下す。元々、父の後を継ぐべく教育を受けてきたため、仕事の基礎は叩き込まれており、責任感が非常に強い。その責任感のあまり、重荷を一人で抱え込もうとしてしまうことがあり、父と、父が育てた競翔竜アスカの忘れ形見であるクーを処分しようとしたり、ウリュメルに冷たく接してしまったり、感情を御しきれない年齢相応なところも見せる。
 父の遺した牧場と、竜のことは愛しており、クーを競翔竜として育てることを決意した後は、クーの様子を見るのを日課として、メルと共にクーを可愛がる。メルとは、何でも言い合える仲で、自分の心のうちを理解し、言いたいことをはっきり言ってくれる率直さに感謝している。しかし、経営面では頭が回り、肝の据わり具合を見せるものの、恋愛面には無頓着で、女の子の気持ちには鈍感。何かとメルを不機嫌にさせている。

メルとストールの信頼感が見える台詞とエピソード

  • 竜の誕生に、レースに勝てる強い竜だといいなと期待する牧場員たち。ストールは無事に生まれてきてくれるのが一番嬉しいと言っていたとメル。「経営者がそんなことでいいの」という意見に、
    • 「あいつらしくて、いいんじゃないの。あたしは好きだな。そういうの」
    • 「勘違いしないでよ。幼なじみとして、そういうところは嫌いじゃないって意味」
  • 表向きはクーを処分すると言いながら、夜中に竜舎を訪れ、涙を流すストール。そこにメルが現れ、ぎこちないながらも会話を続ける。
    • あきらめに入っているストールをもどかしく思い、そんなストールに何も言えない自分に思わず涙が出るメル。
    • 父の葬儀の時、泣かなかったストールに『何で泣かないんだ、悲しいなら思いっきり泣け、普段は泣き虫のくせに』と責め、逆にメルが泣き出した時のことを思い出す二人。
    • 「ごめん、メル。心配かけて」
    • 少し素直になったストールに思いのたけをぶつけるメル。
    • 「あんたは、自分が頼りないことを申し訳なく思ってるのかもしれないけど、そんなの当たり前なの。あんたの下で苦労する覚悟があって、みんなはあんたを社長にしたの。みんなが心配してるのは、あんたが牧場を潰すことじゃない。あんたが無理して、自分を潰しちゃうことなの。もっと、みんなを頼っていいの」その言葉に決意を固めるストール。
    • その瞳にいつも強い輝きを見つけると、メリクルは自分の心が羽ばたくのを感じた。
    • 「やれるだけやってみようか、メル」
  • ストールが秘書のレイカと仲良くなっているのを聞いて、
    • 「ふ~ん……」メリクルが温度の低いつぶやきを吐きだした。「随分、和気藹々としてるじゃないの、ストール」
  • 父の墓に、近況報告するストール。ストールを探していたメルが現れ、昔の話で盛り上がる二人。
  • わだかまりのあるストールとウリュメルの仲を取り持とうとして三人で宴会を開いたメル。しかし、自分は寝落ちしてしまい。翌朝、ストールがウリュメルのことを名前で呼ぶようになったのを見て、
    • ……作戦失敗だと思ったんだけどな……まあ、これでいいはずなんだけど……でも、何か納得が……。
    • 「何か、すっきりしないなあ……。ウリュメル? ウリュメルねえ……」
  • 自分達は、竜を痛めつけているんだなとシリアスになるストールに、
    • 「そんなの当たり前じゃない。でも、一番つらいのはわたしたちじゃない、あの仔たち。だから、わたしたちは精一杯サポートしてあげる。それが、わたしたちの義務……違う?」
    • 「違わない」「でしょ」――かなわないな。笑いながら、ストールは思った。
  • クーの専属竜務員を決めた際、自分よりも一番懐いているメルが適任じゃないのかという意見に、
    • 「あんまり気をつかいすぎると増長する」と二人揃って同じことを言うストールとメル。
  • クーを駆るウリュメルのレースを、それぞれ別の場所で見ている二人。
    • 不利なレース展開に悲鳴をあげる従業員たちを他所に、余裕の表情で「ウリュメルを甘く見過ぎ」と、全く同じことを考えている二人。

概要

 竜を駆り速さを競うドラゴン・レースが、惑星規模で盛んに行われている世界。竜牧場グバイファームで、一匹の竜が生まれようとしていた。亡き父と、牧場に栄光をもたらした竜が遺した最初で最後の竜である。しかし、生まれたのはレースの出翔資格を得られない、炎を吐く竜であった(※1)。第4回スニーカー大賞〈優秀賞〉受賞作。
 競翔竜(競馬のようなもの)を扱った牧場もの、しかも舞台は惑星間航行が可能になったSF世界というラノベとしては非常に珍しいジャンル。最初は、経営者としての判断からクーを処分しようとするストールとメルのぶつかり合い。その後、専属騎手としてグバイファームにやって来た帝国第二皇女ウリュメル(※2)、皇族へのわだかまりからウリュメルに良い感情を持てないストール、そんな二人を取り持とうとするメルの三人の関係。そんな三人と、競翔竜として成長していくクーを中心をした牧場員たちの姿が、物語のメインとして描かれていく。
 幼馴染であるストールとメルは、互いを信頼しあっていることがよく分かる関係が非常に魅力的。メルはストールの心の機微を見抜き、時に感情的に、時に諭すように叱咤激励する。ストールもまた、そんなメルと意見をぶつかり合わせ、感謝し、時には重要な決断をする。また、仕事においては、幼馴染という関係に甘えることなく、公私を区別できる大人っぽさを見せる。信頼してるからこそ、厳しいことが言える関係が、禁止委員として何とも言えない羨ましさを感じる。反面、恋愛面では互いに子供で、ストールが鈍感、メルもストールへの好意をはっきりと自覚していないこともあって、あまり仲は進展しない。しかし、ウリュメルというライバルが現れたことで、複雑な心境になるメルの姿はとても可愛らしい。大人っぽさと子供っぽさが同居した二人の関係が、今後、どうなっていくかは、非常に楽しみであった。
 しかし、残念ながら2巻で打ち切りになってしまい、続刊の見込みはほぼない。

※1 ニーズヘグ種という温厚でブレスを吐かない竜種が競翔竜として登録できる。しかし、長年の異種配合によって、他の種の遺伝子が混じっていることもあり、稀に隔世遺伝で、他の種の因子を受け継いで生まれてしまうことがある。一応、熱気胞という器官に処置を施し、ブレスを封じることで、競翔竜として登録することは可能。しかし、事故が起きる可能性は付きまとう上、処置によって体のバランスが崩れ、順調に育たなくなる可能性も高いため、リスクが大きい。
※2 この世界では、ドラゴン・レースは神聖なスポーツとして、統一国家であるクレイオ帝国の全面的な支援のもと運営されている。皇族は、一定期間、競翔竜の騎手か、軍人を勤めなければ、王位継承権を得られない。

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最終更新:2012年03月30日 22:58
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