理想の彼女のつくりかた
作者 |
高村透 |
イラスト |
秋野すばる |
レーベル |
電撃文庫 |
分類 |
不明・あるいは両方 |
巻数 |
3巻(未完) |
ジャンル |
現代青春コメディ |
「異様なテンションに埋もれた幼馴染」
登場する幼馴染
野田彩香(のだ あやか)
年齢 |
15歳 高校一年(同い年) |
幼馴染タイプ |
再会系 |
属性 |
クーデレ、ボクっ娘(1巻のみ)、幼い日の思い出 |
出会った時期 |
小学生の時 |
直人の小学生の頃の同級生。転校したため、直人との交流は途絶えていたが、直人の人生に大きな影響を与えた存在。
現在は、名門お嬢様学校である開星女子学院の生徒で、「物語行為(ナラティブ)」使いが集まった劇団「夢の組」に所属し、正体を隠したまま、直人の前に姿を現す。一度は、直人と敵対するが、直人によってトラウマを解消され、以後、直人との交友関係を復活させる。直人が悩んでいる時や、物語行為がらみでピンチに陥った時は、力を貸してくれる。
小学生の頃、常識知らずだった直人にマナーをしつけたり、二人で物語を考えたりしていた。明るく活発で世話焼きな性格だったが、高校生になった現在は、男っぽい喋り方をするクールな性格(世話焼きなのは変わらず)になっている。他のキャラに比べれば、かなり落ち着いているが、妙なテンションのボケと突っ込みを繰り出すのは、この作品のキャラ標準通り。
容姿は、スラリと細い体型で、肩まで伸びた髪を大雑把に切り揃え、前髪をヘアピンで留めている。首筋には、火傷の痕を隠すためいつもスカーフを巻いている。腕には、直人に貰ったオレンジ色のミサンガを今もつけている。
直人のことは「ナオトくん」と呼ぶ。直人への接し方は、まるでやんちゃ坊主を静かに見守る母親のようで、直人が他の女性キャラと仲良くしていても動じることはないが、直人に誉められると嬉しそうにしたり、紗耶香に対抗心を燃やしているかのような態度を見せることもあり、異性としても特別な感情を抱いているようである。直人との絆に絶対の信頼を置いており、信頼感に満ちた二人だけの空気をよく作り出している。
また、メインヒロイン川瀬紗耶香のモデルでもある。苗字の川瀬は、彩香の旧姓。名前の紗耶香は、直人と彩香が考えた物語の主人公スーパー彩香のスーパーのSをAYAKAにくっつけ、SAYAKAとしたもの。
真崎直人(まさき なおひと)
年齢:15歳 高校一年
この作品の主人公。中学時代は陸上部に入っていたが、無茶な走りを続けたせいで膝を壊し、引退を余儀なくされる。その後、取りとめもない妄想を書き綴っているうちに、妄想を現実化させる「物語行為(ナラティブ)」の力を手に入れ、理想の彼女「紗耶香」を具現化させてしまう。
性格は、とにかくテンションが高く、まるでふざけていないと死ぬかのごとく、いつでもどこでも、ふざけたことばかり口走り続ける。また、突如、陸上部の部室にキュウリを投げ込む、バナナの皮を両肩にくっつけて肩章にするなど、読んでる側としても、反応に困る奇行を繰り広げる。しかし、これは、誰かを笑顔にさせられる人間になりたいという思いから、敢えて、道化を演じている部分もあるようである。特に、トラウマから殻に閉じこもって現実逃避しようとする相手は、何振り構わず救い出そうとする熱いところがある。
彩香のことを「あーちゃん」と呼ぶ。彩香は、自分を闇から救い出してくれたヒーローとして絶対的な信頼を寄せており、同時に初恋の相手として特別な思いも抱いている。また、生き方や考え方の根底には、彼女との思い出が大きく影響している。他のキャラに対しては、すぐに横暴な態度を取るのに対して、彩香にだけは、その姿を目にした途端、容姿を賛美し始めたり、怒られるとすぐ大人しくなることからも、彼女がいかに特別な存在かというのが見て取れる。
父親は単身赴任中で、エリート官僚である兄と二人で暮らしている。
彩香と直人の台詞とエピソード
- 子供の頃、直人、彩香ともに、家庭内のゴタゴタが原因で心が荒んでいた。
- 引きこもりになっていた直人を連れ出し、無理矢理観覧車に乗せる。そこから美しく輝く黄金色の夕日を見せ、「現実も悪くないでしょ」と諭した。その光景と彩香の言葉で直人は立ち直り、彩香に絶対的な信頼を寄せるようになる。
- また、彩香にとっても直人の存在は心の拠り所だった。
- 直人が、物語を書き始めたのも、元は、彩香を喜ばせてあげたかったから。
- 直人が、自分のことを俺と言い出したのも、彩香にそのほうがカッコいいからと言われたから。
- 同時に、本音を語る時だけ、僕と呼ぶとも決めた。
- 作中でも、普段は俺と呼んでいるが、直人の一人称である地の文やシリアスな場面の台詞では僕と呼んでいる。
- 直人が、陸上を始めたのも、彩香が転校していなくなった寂しさを紛らわせたかったから。
- 彩香の転校が決まった後、直人は必死に二人で考えた物語を形にし、夕日に染まった教室でプレゼントした。
- 確かに僕の書いた物語は、なんの価値もない落書きみたいなものだろう。
- それでも、あーちゃんを笑わせることができた。大切に思う人を笑顔にできた。
- きっとそれは、文学史に残る名作を書くよりも価値のあることだ。
- 正体を隠し、私のことなんか忘れてた癖にと憤る彩香。しかし、直人はとっくに正体に気づいており、
- 「化け物なんかじゃない。お前は――」「あーちゃんだよ」
- 「……ボクのことを、まだそう呼んでくれるのか」
- 「お前が嫌がっても、僕はあーちゃんって呼びたいね」
- 「どうかな、化け物の抱き心地は?」
- 直人たちの合宿に、彩香ら「夢の組」がやって来た際の直人
- あーちゃんは信じられないぐらい細いから、ボーイッシュな格好をすると逆に可愛く見えるというか、そのアンバランスさが少女期を芸術的に表現しているというか……
- なんてことだ。魔物だ。夏の魔物が現れちまったぜ。なんかアホっぽい顔したチビと隠れ巨乳もいるが、まあそんなことはどうでもいい。
- 「うん、あーちゃんめっちゃいいお母さんになりそう」
- 「そうなのか」「私はいいお母さんになりそうか」興味があるのか、あーちゃんはつま先で立って顔を寄せてきた。
- 直人と紗耶香がイチャイチャしているところを見せられ、他のキャラに嫉妬しないのと聞かれ、
- 「問題ない。私は余裕しゃきしゃきだ」とあーちゃんは自信に満ちた声を出した。「私とナオトくんの絆は、絶対壊れない」
- 男友達の宮野が「あーちゃん可愛いよな。アタックしてみようかな」と言い出した途端、無意識にぶん殴り、
- 「馴れ馴れしくあーちゃんって呼びやがって! 絶対に許さんぞ!」
- 「あーちゃんのことをあーちゃんって呼んでいいのは俺だけなんだよドアホッ!」
- 宮野のことを乱暴に扱った直人に対して、
- あーちゃんは僕の頬を捻った。「友達を投げて遊んだらだめだろ」
- 「ごひぇんなふぁい」「うん」鬼子の僕をあーちゃんは笑顔で許してくれる。
- あーちゃんは捻るのをやめてくれると、何度か僕の頬をさすり手を離した。どうしてかひどく懐かしい気持ちになった。
- 体育祭で膝の痛みを押して走ろうとする直人を、迷わず後押しする彩香。ふざけるな膝が壊れてもいいのかと責めるキャラに、
- 「いい」あーちゃんはきっぱりと断言した。みんなはえっと声を漏らす。「やらないといけないことを奪う方が無責任だ」
- バカだな。あーちゃんならそう答えるに決まってるだろ。
- さらに、気圧されながら、万が一のことがあったら責任取れるのかと食い下がる相手に、
- 「取れる。なんだったら結婚して一生世話してもいい」
概要
「すげー美少女とラブコメしたいっ!」そんなバカな妄想を書き綴っていた真崎直人。ある日、隣の空き地に、突如一軒家が現れ、そこから直人の妄想に描いていた通りの美少女が現れた。しかし、見た目完璧な彼女は、会話が成立しない、意味不明な行動を取るポンコツ少女だった。妄想を現実化させる力を手に入れた直人と愉快な仲間たちの暴走気味の青春コメディが始まる。
直人の描いた設定が不完全なためポンコツだった紗耶香が、新たな設定を加えていくと共に、直人や周りの人間たちとの交流で、ポンコツながらも徐々に成長していく姿が描かれ、その中で、「物語行為」に関わる事件に巻きこまれていくという展開。明らかに紗耶香がメインヒロインで、直人も紗耶香を意識する場面が、度々あり(紗耶香がポンコツなため、色っぽい展開になることはほとんどないが)、基本的には推奨展開。
一方、幼馴染である彩香は、1巻こそ話のキーキャラであるものの、2巻以降はメインから外れ、準レギュラーのような位置で登場するのみである。これだけだと、まるで勝負になっていないように思える。しかし、少ない出番の中でも、直人との深い信頼感に裏打ちされた二人の空気を作り出し、他のキャラを圧倒する存在感を見せる。直人も、彩香に対してだけは、他のキャラに比べて接し方が全く違い、直人にとってどれだけ特別な存在かということが要所要所で見て取れる。また、直人の人格形成、物語を書くという行為、紗耶香の存在など、重要設定の根幹にも深く関わっている。特に3巻では、堂々と爆弾発言をするなど、幼馴染ヒロインとして強い存在感を発揮するなかなかの逸材だと言える。
しかし、実はこの作品。禁止スレでも、ほとんど話題になったことがなく、幼馴染が存在していたことすら気づいていない人も多い。
それもそのはず、マイナーということもあるのだが、この作品、非常に人を選び、彩香にたどり着く前にノリについていけず脱落する人が多いのだ。主人公の直人、ヒロインの紗耶香をはじめ、登場キャラは、どいつもこいつも異常にテンションが高く、顔を合わせれば、漫才やコントを始め、読者を置いてけぼりにして、好き放題に暴れまくるのだ。各所レビューでも、キャラがウザい。ノリについていけないという感想が目立つ。ただ、古き良き時代の青春コメディを思い出させてくれるという肯定的な意見も一部ある。
また、彩香も、1巻では、終盤に正体が明らかになるため、一人だけカラーページに紹介がない。2巻以降は、出番が少ない。表紙にも一度も描かれていない。あらすじには一度も名前が出ていない。おそらくこの作品について検索しても、彩香の紹介を見つけることは困難であろう(wikipediaなどにも記事がない)。数少ない
作品紹介されているページを見ても名前がなく、むしろ真穂が幼馴染(真穂は中学からの同級生で、作中でも幼馴染扱いはされていない)と勘違いする人も多いだろう。このように一見では存在を確認できず、様々な要素が重なって埋もれてしまっているのだ。
結局、作品自体は3巻で打ち切りに終わってしまい、決着がつかないまま終わる。基本は、推奨展開なのだが、その中で、彩香は強い存在感を発揮していること、後述の電撃スマイル文庫の後日談を踏まえて、不明・あるいは両方に分類するのが妥当と考える。
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内容ネタバレ |
- 直人と彩香は結婚しており、娘がいる。
- かつての自分たちの体験を、童話風にして娘(名は紗耶香)に聞かせている直人。
- ふと高校時代の写真に目をやり、自分も妻の彩香も随分若いなと懐かしむ。
- しかし、そこに紗耶香が写っていないことに悲しさを感じる(最終的に、紗耶香の存在は消えてしまった模様)。
- 夕食の用意が出来たという彩香の声を聞きつつ、次は児童文学を書いてみようと決意する直人。
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最終更新:2012年04月13日 22:21