ひきこもりの彼女は神なのです。
作者 |
すえばしけん |
イラスト |
みえはる |
レーベル |
HJ文庫 |
分類 |
不明・あるいは両方 |
巻数 |
8巻(完結) |
ジャンル |
現代異能者ファンタジー |
「たか兄教狂信者」
登場する幼馴染
羽村梨玖(はむら りく)
年齢 |
14歳(年下) 中学三年 |
幼馴染タイプ |
再会系 |
属性 |
優等生、素直系年下、ニコニコ笑顔、ヤンデレ |
出会った時期 |
少なくとも小学校二、三年よりは前 |
幼い頃、天人の向かいの家に住んでいた1歳年下の幼馴染。小学二、三年の頃に梨玖が引越したため交流は途絶えていたが、天人が実尋市にやって来たことで再会を果たす。天人の通う曙光山学園の中等部三年生。天人のことを「たか兄」と呼ぶ。
子供の頃は、いつも天人の後ろをついて回る、人見知りで気弱な性格だったが、再会した現在では、誰とでもすぐ仲良くなり、場を明るくするのが上手い、快活な性格になっており、『妹にしたい下級生コンテスト』でナンバーワンになる程の人気者。黒髪ショートと元気な笑顔がトレードマーク。これも、幼い頃、自分を守ってくれた天人に憧れ、天人のようになりたいと努力したためであった。
しかし、明るい振舞いと裏腹に、中学一年の時に事故で両親を失っており、現在はアパートで一人暮らしをしている。
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以下ネタバレ |
そして、その笑顔の裏には、家族を失った悲しみから、永遠に傍にいてくれる存在を欲する心が渦巻いていた。そんな中、天人に再会し、彼を永遠の伴侶にしようと目論み、人の身を捨て、吸血鬼に転化してしまう。結果、天人に想いを拒絶されるが、その空虚な心は救われ、「ニュートラルハウス」の一員に迎え入れられる。吸血鬼であるため、昼夜逆転の生活を送るようになり、学校を休学することになる(巻を追うごとに耐性はついていき、日中の活動時間も増えていく)。
寮内でも、いつもニコニコと笑顔を浮かべ、他の住人たちにも友好的に接する。家事が得意なため、天人の不在時には家事当番を引き受け、何かと忙しい天人をさりげなくフォローするよく出来た幼馴染ぶりを見せる。最初の事件で天人に想いを拒絶された後も、変わらず好意を持っているようだが、他のヒロインと仲良くしていても全く嫉妬せず、むしろ後押しするような素振りを見せ、恋心は吹っ切れたのかと思われていた。しかし……。
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さらにネタバレ |
実は、彼女にとって天人は恋愛対象を通り越して、崇拝対象のような存在となっており、彼の望みを叶えることが全て、彼の全てを肯定することが自分の存在意義と言い切る狂信者とでもいうべき思考のもとに行動していた。「天人は世界一素晴らしい人間だから、他人に好かれるのは当たり前で、むしろもっと好かれるべき。自分は、天人が望むなら笑って死ねるし、他の人もそうなって欲しい」と狂気めいた思想を、満面の笑みで語ってのけ、他のヒロインたち戦慄させる。
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名塚天人(なつか たかと)
年齢:15歳 高校一年
この作品の主人公。父が人外の半人間で、強靭な肉体を持ち、重力の方向を変化させ天井や壁に張り付くことのできる異能の力を持つ。しかし、亡き母の望みで力を隠し普通の人間として生活して来た。中学卒業後、人と人ならざるものが共存する街、実尋市にある曙光山学園高等部に進学し、曰くつきの神々が集まる寮「ニュートラルハウス」で生活することとなる。
少々のことでは感情を露にせず、考えてから行動する辛抱強い性格。身勝手な振る舞いをされた時も、落ち着いて状況を見極め、すぐに結論が出ない時は一旦引く冷静さを持つ。小学生の時に母を亡くし実家で家事全般を統括していたこともあり、細かいことに気が回り、個人主義で家事に無頓着な寮の面々に代わって、率先して家事を取り仕切る。また、幼馴染の梨玖や7歳年下の妹がいるためか、面倒見が良く、年下に好かれやすい。
元々、正義感が強く、中学時代にヒーローの真似事を行っていた。しかし、ある理由で挫折したことから、人を助けることを恐れている様子を見せていたが、1巻での事件を経て、迷いを吹っ切り、正式に「天秤の会」(※)の一員となって、人と人ならざるものの間に起きる事件の解決に積極的に関わるようになる。
※実尋市で起こる人と人ならざるものの間に起こる事件を調停し、バランスを保つための組織で、実尋市で特に強い力を持つ神々が多い「ニュートラルハウス」の住人たちが役割を担っている。しかし、バランスの基準は神視点で判断されるため、犠牲者が出ても、バランスが取れるなら、不介入を貫く場合も多い。そのため、人助けが目的である天人は、住人たちの助勢を受けられず、単独で対処しなけらばならない事態に陥ることもある。
梨玖の愛が溢れた台詞とエピソード
- 「ほら、私、小さいころ泣き虫で、よくからかわれてたじゃない。でも、たか兄、何度も、何度も助けてくれたよね。だからさ、その……憧れだったんだ、ずっと、たか兄みたいになりたくて」
- 「ね、たか兄……私、一人っきりで朝まで過ごさないといけないのかな?」
- 「――なーんてね。どう? ドキドキした?」
- 「……ドキドキというか、反応に困った」
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以下ネタバレ |
- 「私の望みはね、再会した幼馴染みを永遠に自分のものにすること。――つまり、あなたが欲しかったんだよ、たか兄」
- 「だって、私は大切な人を亡くす痛みを知ってるから。決して居なくならず、ずっと傍にいてくれなきゃ意味ないんだ。だから、たか兄を永久に私のものにしたかった。それが叶うならどんなものを犠牲にしてもよかった。何を利用しても、誰が傷ついても、そして、自分が人間じゃなくなっても……たか兄が手に入るなら、それでよかったんだよ、私は」
- 「だからさ、ねえ、たか兄。弱くて惨めな私のことを、護って。いつまでもずっと、ずっと、ずっと――永遠に、私と、一緒に居てよ」
- どのくらい時間が経過しただろう。数秒にも、数時間にも感じられる。――やがて俺は息を吐いて、言った。
- 「悪い。居てやれない」
- それでは駄目だ。誰も――梨玖自身すら救われないから。
- 「うん、ほんとは、わかってた」「私は、色々間違えちゃったんだね」
- 綺麗に振られたなあ。まあ、最初から結果はわかっていた。何というか、自分に区切りをつけるために告白したようなものだったし。この私の惚れた男なら、こんな私を受け入れたりしない。
- 天人に拒絶され、静かに消滅しようと考えたところに友人の珠子が現れ、天人からの伝言があると聞かされる梨玖
- 「えっと、『間違えたんなら、また一からやり直せよ』って。――梨っちゃん?」
- 私の想いは受け入れてもらえなかったけど、そしてそのことで全てが終わったような気になっていたけれど――でも、こうして、たか兄は今も私を護ってくれている。
- 「大丈夫。――でも、そういうのとは別口でたか兄には恩があるからね。死ねと言われれば死んでもいいくらいの」
- 「大げさだな」
- 俺は苦笑する。梨玖は何も言わず、ただニコニコと笑った。
- 「私にとって、たか兄が『かっこわるい』というのは絶対にあり得ないんだよ。どんな服を着ていても、どんなことをしでかしても」
- 「……たか兄が添い寝してくれたら、治る気がするんだけどなー」
- 「残念ながら、天人さんは忙しいのです」(亜夜花)
- 「んー、なら、提案。たか兄真ん中、私右側、亜夜花ちゃん左側でどうかな?」
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さらにネタバレ 4巻ラストで現した本性 |
- 「結果的にたか兄の望みや願いが叶うなら、誰がどんな役目を果たしたかなんて、些細なことでしょ?」
- 「だってさ、たか兄だよ?」
- ぱあっと幸せそうな表情を浮かべて、梨玖はその名前を口にする。
- 「優しくて格好良くて世界一素敵な、あのたか兄なんだよ? 周囲に女の子が寄ってこない方が嘘じゃない。そう思わない?」
- 「優れた人間の周りには多くの支持者が集まる。逆に言えば、どれだけ人に好かれるかが、その人の魅力や価値を証明することになると思うんだ。だから、私は、無条件でたか兄の傍にいるし、いなきゃいけないの。でも、一人じゃダメ。もっともっと、どんどん人が集まらないとね」
- 「つまりね、亜夜花ちゃんもコウタちゃんも遠慮なんかする必要ないんだよ。どんどんたか兄のことを好きになってほしい」
- 情熱に溢れたその表情には、一点の曇りもなかった。
- 「そう、もっともっともーっと夢中になってほしい。昼も夜もたか兄のこと考えてあげて欲しい。たか兄のためなら腕の一本や二本、ううん、心も命もすべて犠牲にして笑って死ねるくらいに愛してあげてほしい。私は既にそうしてるし、そういう子たちがたか兄の傍にいっぱい、居てくれるなら、すごくすごく嬉しいよ」
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概要
人類の発展と信仰心の低下よって、勢力を衰えさせていく神や幻獣など人外の存在たち。それを打開すべく、人と人ならざるものが共存するモデルケースとして創設された実尋市。半分人外の血を引く名塚天人は、実尋市の高校に進学し、学生寮「ニュートラルハウス」で生活することとなる。そこの住人たちの多くは、実尋市の中でも特に強い力を持つ神々だった。人と人ならざるものの間に立つ天人の"超日常"の物語が始まる。
特殊なコミュニティに所属した主人公が、その住人と交流を深めつつ、周りで起きる事件の解決に奔走するといったタイプの話で、最初は日常描写から始まり、関わることになった事件が寮の住人をはじめ身近な人物に関連したものであることが判明し……といった展開が続く。1巻も、タイトルにもなっている「ひきこもりの彼女」ことメインヒロイン亜夜花と部屋の所有権を巡ってコミュニケーションを取ることから始まる。
幼馴染である梨玖は、明るくしっかり者の妹系幼馴染で、天人のことを心底慕っており、また天人も気心の知れた様子で可愛がっているといった関係を見せる。元々、天人に強い執着心を持っていた上、1巻の事件後、寮の一員となったため、今後は出番も増え、恋愛絡みでも他のヒロインと火花を散らす役どころになるかと思われた。しかし2巻以降、梨玖は体質上の問題で登場シーンが少なくなってしまう上、他のヒロインと火花を散らすどころか、むしろ仲を後押ししたりするような言動を取り、恋愛感情には決着がついたかのような様子を見せる。
全体としてもメインヒロインは亜夜花といった様子で進むため、梨玖の見せ場は1巻で終わってしまい、完全な推奨展開かと思われた。しかし、その笑顔の裏に恐ろしい真意が隠されていたことが、4巻ラストで判明する。
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以下ネタバレ |
1巻で天人に救われことで、梨玖の好意はとんでもない方向に進化し、狂信者とでも言うべくまでに天人への心酔を深めており、他のヒロインも同じように天人の狂信者化させようと目論んでいたのだった。その想いを一点の迷いもなく、むしろ誇らしく語る様には、純粋ゆえに翻ることのない狂気が垣間見え、決して無視できない強烈な存在感を放つキャラへと変化する。また、これによって2~4巻までのさりげない台詞一つ一つにも狂気が含まれていたことが分かる。属性的にはヤンデレといったところだが、下手に凶行に走ったり、独占欲を見せたりするよりも、余程恐ろしい。
最終的に禁止展開になる可能性は低いが、天人のためなら本当に何をやらかすか分からない梨玖の存在には、今後も目が離せない。
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最終更新:2013年05月05日 22:14