はじめてのクソゲー
作者 |
麻宮楓 |
イラスト |
ネムネム |
レーベル |
電撃文庫 |
分類 |
禁止図書 |
巻数 |
1巻(完結) |
ジャンル |
現代ラブコメディ |
「クソゲー買ったら彼女が出来ました」
登場する幼馴染
天野雪緒(あまの ゆきお)
年齢 |
15歳 高校一年(同い年) |
幼馴染タイプ |
再会系 |
属性 |
委員長、眼鏡っ娘、小柄、クソゲーマニア |
出会った時期 |
幼稚園の頃 |
遊真のクラスメイトで、真面目で堅そうな雰囲気を持つクラス委員長。身長150センチ程度と小柄で、縁なし眼鏡に、腰まで伸びた黒髪ロングが特徴的な少女。
実はクソゲーをこよなく愛するクソゲーマニア。特にバグの多いゲームを好み、新旧問わずクソゲーを探し求めてはプレイしている。
ネット上でのハンドルネームは『ユッキー』で、以前から遊真のブログをチェックしていた。ブログで遊真が『インフィニット・ダークネス』を酷評したことに反論したことがきっかけで、互いの正体を知り、クソゲーを通した交流を始めることになる。しかし、学校では決して話しかけないように念を押し、ゲームに関する会話はチャットで行うよう指示する(実は恥ずかしいから)。普段はクールな印象だが、チャット上では挑発的で、ツンデレ気味な言動を取ることが多い。また、頑なに『ユッキー』と呼ぶことを強要する。
実は遊真が子供の頃、クソゲーをプレゼントしてしまった女の子本人。引っ越しによって遊真との縁は切れてしまうが、そのプレゼントが元でクソゲー好きになり、今でもその思い出を大切に想っている。再び帰ってきたことで遊真と再会するが、遊真が自分のことに気付いていないことにがっかりしつつ、思い出してもらおうと密かにアピールをしている。
藤宮遊真(ふじみや ゆうま)
年齢:15歳 高校一年
この作品の主人公。ゲーム好きのごく普通の高校生。主にメジャーゲームばかりをプレイしており、『ジミーユ』のハンドルネームで、ブログにプレイ日記や感想を綴ることを日課にしている。
偶然、プレイしてしまったクソゲー『インフィニット・ダークネス』をブログで酷評したことで、雪緒との交流が始まり、彼女にぬるゲーマーと挑発されたことで、クリアを目指すことになる。クソゲーに類するものをプレイしたことがないので、『インフィニット・ダークネス』には悪戦苦闘させられるが、めげずに根気よくプレイし続ける。クラスではあまり目立たない存在のようで、温厚な性格だが、ゲームに関することには熱くなりやすい。
子供の頃、仲の良かった女の子の誕生日に、家にあったゲームをプレゼントするが、その子が引っ越してしまった後、それがとんでもないクソゲーだったことを知り、ずっとそのことに罪悪感を抱いていた。雪緒がその女の子本人なのだが、まるで気付かない鈍感なところがある。
雪緒と遊真の台詞とエピソード
- 風邪で寝込み、夢の中で幼い頃の記憶を見る遊真。
- その頃、僕には仲のいい友達がいて、その子とは毎日のように遊んでいたと思う。
- あるとき、僕はその子に一本のゲームをプレゼントしたんだ。
- ――けれど、何年も後になってから、知ったんだ。
- そのゲームは、バグ満載のとんでもない代物だったってことを。
- 今から思えば、そのときの後悔やら罪悪感やらがグチャグチャに入り混じり、僕の心にトラウマが植えつけられ、そのせいで『ハズレ』を極端に恐れるようになり、メジャータイトルへと傾倒していくようになったのかもしれない。
- あの子の名前なんだったっけ。
- ちょっと男の子っぽい名前で、そのことでよくからかわれていた気がするな。
- だから、僕は彼女にあだ名をつけてあげたんだ。
- あれは、確か――。
- 「……ユッキー」
- お見舞いに来た雪緒に、その記憶のことを話す遊真。
- 「その子はきっと怒ってないと思う」
- 「その子にとって、その出来事は今でも大切な思い出のはずよ。……そうね、もしもその子に再会できたら、同じ話をしてみるといいわ。怒るどころか、むしろ、そんな昔のことを覚えていたことに、感謝するはずだから」
- 「案外、そのゲームソフトを今でも大事に持っていたりして」
- 僕は、あいそ笑いを浮かべたが、天野の顔は真剣そのものだ。
- 「平気よ。このあたりの地理には詳しいから」
- 「へえ、そうなんだ?」
- 「……昔、この近くに住んできたことがあるの」
- 『もっと早く生まれたいたら、今では伝説となったクソゲーの数々を、リアルタイムで楽しむことができたのにって。それは、どんなに素敵なことだろうって』
- 「そんなこと言うなよ」
- 「だって、生まれる時代が違えば、僕は君に出会えなかったじゃないか」
- ――しばしの間、沈黙が流れる。
- 「つまり、こうして君と一緒に、同じゲームを遊ぶこともできなかったってこと。そんなの、つまらないだろ?」
- 『理解したわ』
- 言葉が伝わったことに満足し、僕は小さく息を吐く。
- そんな僕の前で、彼女はまた一言、付け足した。
- 『バカ』
- 何で、学校では話しかけたらいけないのかと尋ねる遊真。
- 「だって……」指をモジモジさせて、天野は上目遣いで僕を見つめた。
- 「だって、恥ずかしいから」「注目されるのが、恥ずかしいの」
- 「じゃあ、どうしてクラス委員長になんかなったんだ? いや、これも、余計なお世話かもしれないけどさ、目立つだろ、委員長って」
- 「……目立つからよ」「目立ったら、見てくれるし、そしたら、思い出してもらえるかもって」
- 「?」
- 「でも、もういいの。全部忘れてたわけじゃないって、分かったから。だからもう、来年からは、クラス委員長なんてやらない」
- 「クソゲーが好きな女の子って……、ヘン、かな?」
- 彼女はマジマジと僕の顔を見てくる。
- そのまっすぐな視線に、なぜか胸の鼓動が跳ね上がり、思わずノドを鳴らす。
- 「全然、変じゃない」「趣味なんて、人それぞれ。本当に好きなら、堂々としてればいいんじゃないかな」
- 「わたしだって、自ら望んでクソゲー好きになったわけじゃないのよ」
- 「……そもそも、こうなったのは誰かさんのせいなんだからね」
- なぜか彼女は、こちらをにらんできた。
- 「じゃあ、運命なのかもしれないわね。クソゲーが好きなのも、こうして、また出会えたのも」
- クソゲーをプレゼントしてしまった女の子の話をして、
- 「……ねえ。その子に、また会ってみたい、と思う?」
- 「そう、だね。もちろん、会えるものなら、会ってみたいとは思うよ。でもさ、正直なところ、怖いんだよ」
- 「僕はその子に、ひどいことしちゃったからね。そりゃあ、その子はそんな昔のこと、気にしてないかもしれないけどさ、でもそんなの、直接聞いてみないと分からないだろ?」
- 「……一つ、お願いがあるんだけど、いいかな?」
- 「藤宮くんが、いつか胸を張って、その子に会えると思えたとき。つまり、心の底からその子に会いたいと思ったとき。そのときは、わたしに教えて欲しいの」
- 「ダメ、かな?」
- 「ううん、ダメじゃないよ。分かった。そのときは天野に、ちゃんと教えるよ」
- 「ありがとう」「……今はそれでいいんだって、そう思うことにするわ」
概要
メジャーゲームをこよなく愛する藤宮遊真は、有名タイトルの新作を発売日に買い損ね、偶然目についた『インフィニット・ダークネス』というゲームを衝動買いしてしまう。しかし、それは有り得ないバグ満載のとんでもないクソゲーだった。その憤りを日課のブログで酷評したことをきっかけに、クソゲーマニアのクラス委員長天野雪緒とのクソゲーを通した交流が始まる。
メジャーゲームしかプレイしてこなかった主人公がクソゲーをプレイすることになる話。遊真がゲームの主人公になりきったような一人称視点でゲームのプレイ模様が表現され、理不尽なバグの数々に呆れつつ、突っ込みを入れつつ悪戦苦闘する様が描かれる。そして、クソゲーのプレイを通して雪緒と意見を交わすことで仲を深めていく姿がストーリーのメインとなる。というより、実質登場キャラは遊真と雪緒の二人しかいない(ほとんどモブに等しい遊真の友人キャラがいる程度)ので、クソゲーしながら二人がイチャイチャする様が全編に渡って繰り広げられる。
さて、禁止スレで紹介されている以上、当然、遊真と雪緒は幼馴染同士である。遊真が子供の頃よく遊んでいた幼馴染で、クソゲーをプレゼントしてしまった女の子が雪緒であることは一目瞭然であり、二人は再会系幼馴染と言える。
まるで雪緒の正体に気付かない鈍感な遊真に、幼馴染であることをさりげなくアピールしようとする雪緒の姿は可愛らしく、遊真との思い出をずっと大切にし、今でも遊真のことを一途に想っていることが分かる。しかも、素直になれない理由が、実は単に恥ずかしいからというのも非常にけしからない。また、遊真がメジャーゲーム好きな理由と、雪緒がクソゲーマニアになった理由が、子供の頃の思い出に端を発しており、互いの人生に影響を与えたという点でも幼馴染要素のポイントを押さえている。そんな二人が徐々に仲を深めていく姿が、ほぼ全編に渡って描かれるので、安定の禁止図書と言える。
売れていれば続刊して、状況も変わったかもしれないが、結局、単巻で終了している。
- 参考までに『インフィニット・ダークネス』内に登場するバグの数々
- NPCの台詞が入れ替わりまくっており滅茶苦茶。
- スタート地点の町の教会が武器屋になっているので、次の町に行くまでセーブ出来ない。
- 普通に歩いているだけでオブジェクトやテクスチャの隙間に嵌って行動不能になる。
- フィールドでラスボスとエンカウントする。
- 終盤出てくるはずのボスが、序盤のボスのところで出てくる。
- ヒロインは魔法使いなのに、レベル上げても魔法を覚えない。
- 装備を変えるとヒロインの外見が変化するシステムだが、装備を変える度に説明が出てくるので鬱陶しい。
- 町を歩いてると時折ミニイベント(ヒロインが転んでパンチラなど)が起きるが、発生頻度が高すぎて鬱陶しい。
- サポートキャラが敵味方を誤認してスキルを使う。覚えさせるスキルによっては無限ループで詰む。
- 普通なら絶対選ばないような選択肢を選ばないと、重要アイテムが手に入らず詰む。
- 重要アイテムが手に入る場面で呪われたアイテムが手に入り、重要アイテムは店売りされている。
最終更新:2012年10月08日 21:20