クロネコヤマネコ
宅急便(笑)
ライトノベルですね。
一応、(乱暴な言い方ですが)萌えれば売れると思ってる類のラノベとは異なる、しっかりした骨格を持った近代的なライトノベルだと思いました。
まず、描写の確実性を持っていると思います。容易に思い浮かべられる描写、特に動作ですが、きちんとそのときそのときの必要な場面にて、行を費やしてきちんと書いてあります。ネット小説では描写足らずの人って結構多いんですよね。僕もそうです。
まあ……一般的に物書きの癖として一度使った用語や表現を再び使いがちになるという傾向がありまして、(この傾向が多いと文がでこぼこしたり、または鮮度が落ちて見えます)その癖がやや顕著だとは思いますが、その描写に関しては見習いたいものがあります。
序盤から謎やら分からないことが多めに作られている展開にも関わらず、あまりストレスを感じずに、次を読みたいなあと思える運びになっていますね。
状況解説の不足やら、そういったごたつきが一切無いとまでいえば言い過ぎでしょうが、なかなか滑らかな文章だと思います。
あとキャラクターが魅力的です。キャラの登場時などに背景説明がほとんどないのでどのキャラも触れにくいですが、性格はおいおい分かるように書かれていて……補って、余りある魅力です。
また、語彙が豊富なのだろうなと思える文章なのですが、それ故に誤字なんだかわざとなんだか分からない箇所がいくつかあります。最初の方で例を挙げると、5レス56行目の「振るえて」は「震えて」では? とか、8レス71行目の「声をかけてくるの」は「で」が抜けているのでは? とか、9レス28行目のヘカテーの台詞で、ミカが漢字呼びになっているのは意味があるのだろうか? とか、同レス56行目の「目が覚めるでしょし」は「う」が抜けてるのでは? とか、挙げればかなりの数、出てきます。
頻繁に首を傾げる単語が出てくるので、ミスだとしたら校閲は粗いかなと思いました。
レスの最初にある詩のようなものは……あると、区切りが強調されて、だらだら続いている感じがせずに引き締まりますね。そのレスの話を読むにつれて、そういう意味かと納得する面白さもあります。ただ重要なのかどうかはいまいち分かりません。
ストーリーは前にも述べましたが、謎や分からないことが多くあり、次に進むにつれてちょっとずつ内容を解説していくという形になっていると感じたので、ごちゃごちゃからのストンが好きな人には受けるんじゃないでしょうか。
基本的にサクサク次へ読み進められ、引っかかる部分がないので読みやすい話だと思います。投稿数が多いですが、話の追いやすさのおかげで、読んでいてもさほど気になりません。というより、このクオリティが連なっているかと思うとわくわくします。そして読み応えもありますしね。繋がりは唐突ですけども、構成も面白いと思います。
ただし、読みやすさに関してですが、段落がまるで超分厚いウエハースみたいに固まっている部分がよくありますね。1ページが黒々としているような。
(この感想文を遠目に見ていただくと分かると思いますが)僕みたいな詰め書きに慣れている人間は、その黒々とした書き方もほとんど気になりませんが、ネット小説というのは行間隔も大事だそうですから、詰め方を見て敬遠する人がいるかもしれません。
とはいえ僕個人としては、この作風で改行を増やした方がいいとは思いませんけど……。
それでもコンパクトを目指す分には意義があるのではと思います。
もしかして思いついたまま書かれていて見直しが足りないのでは? という感じはしますが、黒々とした見た目に反して、文も内容も比較的ソフトな小説でした。
最終更新:2011年12月21日 21:42