黄金色に光る砂漠の砂が届く辺境の街。
その隣にそびえる「魔物の塔」。
この巨大な古代遺跡には、
その名が示す通り、幾多の魔物がうごめいている。
決して楽ではない旅路にも関わらず、
トレジャーハンター達はこぞってこの街を訪れた。
魔物が集めた宝・・・そして何よりも、
この塔でしか見ることの出来ない、珍しい魔物の卵を求めて・・・。
魔物は卵から育てれば人になつく。
魔物の卵や、人に慣れた魔物は、良い値で取引される。
それが珍しい魔物ともなると、目も眩む程の金額となるのだ。
魔物の売り買いで賑わうこの地を、
人は、魔物の街「モンスバイア」と呼んだ。
そして・・・。
この街に一人の少年がいる。
少年の父は、魔物の心を理解し、魔物の扱いに長けた魔物使いであった。
しかし、早くに父を亡くし、母が一人、少年と妹を育てていた。
家の暮らしは厳しかった。
「卵が手に入れば、高く売れる・・・」
少年も魔物使いの血を受け継いでいるのだ。
卵狩りがしたくて、したくて、仕方が無かった。
だが、15歳の成人の日まで、塔に立ち入ることは許されない。
塔の中は、魔物の巣。
必ず迷う、危険なダンジョン。
大人達でさえ、塔の中程までもたどり着くことができないのだ。
子供の立ち入りが許される筈がなかった。
少年はずっと、塔に入りたいと思っていた。
遺跡の深遠に眠る、見たこともない魔物の、見たこともない卵。
それを手に入れてやると、そう思いながら。
そして今日、少年は15歳の誕生日を迎えた。