何故、こうなったのだろうか?
ウィルこと、ウィリーはブルメスター家の長男だ。
父は昔気質の職人、母は貞淑で大人しい妻。母方の祖父と、父方の祖母。2つ下の妹から、10才下の弟まで、ブルメスター家は実に人数が多い。
ウィリーは長男としての責任を果たすため、このオウガーストリートに出稼ぎにやって来た。
危ない場所だが、稼ぎも相応。
それに、自らの技術を生かすには丁度良かった。
『解錠』――自分は、これが神懸かり的に得意だ。
無理やり力でこじ開けるワケでもなく、丁寧に、優しく、迅速に解錠する。
そんなウィルの作る錠前には、オウガーストリートでも需要が高い。
そして、裏の仕事。
これも、需要がある。
悪いことをやっている、という自覚はあるが、それにも勝るものがある。
難しい錠前を如何にしてあけるか。そして、困難を突破した時の快感。
その好奇心がウィルの原動力となっていた。
思えば初めての解錠は、父の金庫に妹がおもちゃを閉じ込めてしまった、8の夏からだ。
その時、ロックを『壊さずに中身を取り出す面白さ』に目覚めたのだ。
しかし、同時に別なものにも覚醒する。
それは――亡霊とでもいおうか。
力強き人型のヴィジョン。
名前を
『ストラトヴァリウス』と名付けたそれは自分にしか見えなかった。
それから、自分は他とは異なるのだと漠然と思い始めた。
だから、今回もわざわざオウガーストリートまで1人で出てきたのかもしれない。
最終更新:2009年03月07日 19:15