序
20世紀前半のクラシック音楽の世界に現れた、打楽器のみで構成された音楽。当時の前衛、実験の主流に乗り、音楽の新たなる可能性を追求すべく、数多くの作曲者や演奏家によって開拓、普及されたこのジャンルは、最近になってようやく、一部の専門家のみではなく、アマチュアにも取り組めるものとして、定着しつつあります。
インターネットの普及により、それまで極めて困難だった打楽器音楽の情報の入手も、国内外を問わず容易になりました。最近ではネット上での音源の視聴や楽譜の閲覧まで可能となり、10年前まで(主にアマチュア、スクールバンド関係者で)よく言われていた「よい打楽器アンサンブル曲が見つからない」という悩みも過去のものとなりつつあり、探そうと思えばいくらでも探すことが可能になりました。
しかし、そもそも今まで知られていなかっただけで、本当は万単位で存在していた打楽器音楽作品の数々。今度は逆に、情報があまりに増加してしまい、しかも混沌としたまま垂れ流されている現状に気付かされました。そのために、演奏者や指導者にとってはせっかくの情報を活かしきれず、「何が自分たちにとって最良の選択か?」を判断することが極めて困難な状況になっているのではないでしょうか。また、打楽器音楽の歴史を歴史としてとらえることができず、より深い音楽の味わいが感じられないのではないでしょうか。(例えば、ベートーヴェンの音楽が、それのみを聞くだけでなく、クラシック音楽の歴史の中での位置づけや、ベートーヴェン自身の人生や作風の変遷を知ることでより深く音楽を楽しむことができるようなことが、打楽器音楽ではできないのではないでしょうか。)
筆者の見たところによると、打楽器音楽を扱っているサイトは数多くあれど、それらを網羅し、体系的に、スマートにまとめているサイト、混沌に秩序を与えているサイトは、少なくとも国内ではほとんど存在しないのではないかと思います。
そこで、大変能力不足であることを自覚しつつも、数多くの資料を自分なりの方法で分類、整理することによって、混沌とした打楽器音楽の世界を少しでも分かりやすくすることができればと考え、ここに「打楽器音楽辞典」という大それた名前で公開することを決意しました。
もとより、筆者以上の知識を持っている人はいくらでもいらっしゃるので、疑問、質問、批判、間違いの指摘は大変ありがたく頂戴します。また、一緒に辞典の編纂に協力してくださる方、指導をして下さる方も大歓迎です。
この辞典が、打楽器音楽の普及の一つの力になれば、これに勝る喜びはありません。どうかよろしくお願いします。
2007年5月
最終更新:2007年05月19日 05:24