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じわじわ蒸し暑い日、あたしは読書感想文のための本選びに、町外れの図書館へと来ていた。

「えーと…どれにしよっかなー…」
…なんだって、夏休みに読書感想文なんか出さなきゃいけないんだ。
なんて、ぶつぶつ言いながら適当に本を手に取ってみる。
「……難しそうだからパス」

こうやってぶつぶつ言ってても誰にも何も言われないのは、単純に周りに人がいないから。
この図書館はあたしが知ってる限り結構大きい方で、しかも来る客も町外れだから基本的にいないし、司書の人って言っても受付カウンターで本読んだり何か弄ってたりするだけだから、あたしとしては有り難い。


「ぁ……—…っ」

…ん?
眉間に皺を寄せて見つめる、難しそうなタイトルの本ばかり並ぶ本棚の向こう。
衣擦れみたいな音と、話し声のようなものが聞こえてきた。

…もしかして…どっかのカップルが………なんちゅー所でしとるんよ、まったく。

とはいえ、気にならないと言えば嘘になる。
やっぱり好奇心は働くわけで…。

…よし。
意を決して、あたしは好奇心と緊張とでドクドク動く心臓を抑えながら、少し近付いてみた。



「…っ、ゃ…ま…ってぇ」
「待てない」
「ひゃぅ…ぁ、だめ…っ」
…え。嘘、でしょ。そんなわけない、じゃん。
目を擦って、夢なんじゃないかって思う。
でも、何度瞬きしたって飛び込んでくる光景は、夢なんかじゃないと現実を突き付けてくる。
「は…ぁ、…〜ちゃぁ…あ〜、ちゃん…っ」
「ゆかちゃん、気持ちい…?」
真っ赤に染まった頬、目尻に溜まる涙、しがみつく指先、ほんのり赤みがかった体。
それは、あたしが見たくて、でも見たくなかった彼女の姿。
「…っ!」

ガタガタと震える体を抑えられない。
足が笑ってしまって、思うように立てなくてズルズルと座り込んだ。

…嘘だ嘘だ嘘だ。こんなの、全部悪い夢、なんだ…。

ただひたすら目を閉じて、耳を両手で固く塞いだ。
…見たくない、聞きたくない。
彼女が、あたし以外の人に…あ〜ちゃん相手に乱れる姿なんて。

…ゆかちゃん…。
あ〜ちゃん…なんで…。


閉じた目から涙が零れた。
信じてた何かが、壊れた瞬間だった。


  • 続-







最終更新:2009年03月30日 20:11