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きみが泊まりに来た土曜日から二日。
結局、何もないまま私は彼女を解放した。

最後までなんだか腑に落ちない顔してたけど、見てみぬふりしてやり過ごす私。

今日からまた長い一週間が始まる……。




月曜日。

カテ教の日。
昨日、一昨日と、一緒に過ごした事すらなかった事のように振る舞い教師を演じる私。

N『それにしても樫野さんは覚えが早くて助かります。』

眼鏡をかけ、
口調をかえ、
苗字で呼び、
きみに冷静さを与える。

より深く堕とすために。


キスすら交わす事なく教師と生徒に徹する姿を客観視してみたら、なんだか滑稽で笑えた。




水曜日。

きみが少し挙動不振になり始める。

どこか上の空のような浮遊感を漂わせる。
焦れて来る頃合いなんだろう。

N『樫野さん?』
K『な、なに…?』

びくびくするような態度がまたそそる。




金曜日。

きみの瞳が揺れている。

熱をおび私に向けられるその視線は、
どんな媚薬よりも強烈に私の理性を削ぎ落としていく。

今触れたらきっと、熱くて溶けてしまうかも知れない。

それでも構わないけど、どうせ溶けてしまうのなら、一瞬で蒸発するほどの熱を感じたい。



きみに意識させるため、わざと近くに顔を寄せノートを覗き込む。

この一週間はただの教師と生徒に戻って接した。

ただ、意識させるような触り方は忘れなかった。


きみの肩にそっと手を置き、
N『ここはこの公式ですよ。』
耳元で低く囁いてやる。


K『っ。』

きみは体をビクッとさせて顔を赤くしてる。




きみと過ごす二度目の週末はすぐそこまで来てる。


そして土曜日。

早いものであれから一週間。

さて、今日はどんな一日にしようか?



N『どこか遊びに行きたいとこありますか?』
外では教師と生徒を崩す気はない。

K『……のっちのお家。』

いきなりの直球に少し歓喜したけど、まだ早いよね。

N『何も遊ぶものないですよ?……あ、そうだ。観たい映画があったんです。着いて来てくれますか?』


結局私の行きたいところへと連れていく。


K『ねぇ、何観るの?』
当然の疑問。

N『これです。』
K『マジで……?』
私が指差した先には今話題のソリッドシチュエーションホラー映画の看板がある。

N『では、行きますか。』

明らかに渋々後を着いて来るきみは、私の服の裾を掴んで放さなかった。

N『怖いですか?』
K『こ、怖くないもん。』
N『ふふふ。』
可愛くて思わず零れる笑い。
K『もうっ。』
空いてる方の手で軽く背中を叩かれた。


きっと今この瞬間だけ観れば、甘く柔らかい空気を纏った幸せな恋人同士に見えるはず。

でも、
私の心を支配するのは欲望。
きみの心を支配するのは切望。






劇場内に足を踏み入れると静かな空気が張り詰めていて、自然と体が強張るのが自分でわかった。

人は思ったよりまばらで1番後ろの真ん中より少し右に座る私達。
周りには人影はなく数段下がった場所にカップルが見て取れた。

K『結構人少ないね?』
N『そうですね。真ん中辺りには流石に人も多いですけど、後ろの方はそんなでもないですね。』

通路を歩きながら小声で会話を交わしきみを先に歩かせる。

1番後ろの少し右。
きみの左側の席に腰を降ろし上着を脱いだ。

N『寒くないですか?』
少し肌寒ささえ感じる空気に、スカート姿のきみの膝へ脱いだ上着を置く。

K『あ、い、いいよっ。のっちが寒いじゃん。』
少し照れたような口調に心がほころぶ。

N『熱くなったら返して下さい。』
K『うん…、ありがとっ。』
本当の目的を知らないきみは無邪気に喜んで照れている。


……ほどなくして映画は上映され始め私達もそれに集中した。


(続く)







最終更新:2009年03月30日 20:24