「おねーちゃん、かしゆか来たよー」
ちゃあぽんに通されて、あ〜ちゃんの部屋に入ってきたゆかちゃん。
「のんの〜ん、いい子にしとる?」
そう言って、頭を撫でてくれるゆかちゃんは、やっぱりいつものお気に入りのコートに、のっちがプレゼントしたマフラーを巻いていた。
さっき公園で見たゆかちゃんらしき人と同じ格好。
そのコートを脱ぎながら、ゆかちゃんはあ〜ちゃんに近寄った。
「あれぇ?あ〜ちゃん、なんか目ぇ赤くなっとらん?」
「え、あ・・・これは、花粉症じゃけぇ、、何でもないんよ」
引き寄せるようにあ〜ちゃんの頬に手を当てるゆかちゃん。
ゆかちゃんから視線を逸らしながらそう言うあ〜ちゃんの頬はほんのり紅く染まっている。
っていうか、近いよ!!近いってゆかちゃん!
そのままキスしちゃってもおかしくないくらいの距離感に、なんだか見てるのっちの方がドキドキする。
「ふ〜ん、、花粉症、ねぇ?」
とあ〜ちゃんの頬から手を離して、のっちに疑わしそうな視線を向けるゆかちゃん。
まだ寒いし、確かにその言い訳はちょっと無理あるよね。って、、
あれ?のっち、なんか勘違いされてる??
・・・確かに泣かせてないとは言いきれないけれど。。
「あ〜ちゃん、のんのんの躾ならゆかに任せんさい」
そう言ってゆかちゃんはいたずらっ子のような笑顔を見せた。
うわぁ、、ゆかちゃんに躾られたら、なんだかちゃんとした犬になれそうれす。。
想像したらちょっと、いや、かなり冷や汗が出てきたけれど。
「まぁ、残念ながら犬としての躾は必要なくなるかもしれんけどね」
「え?」
「へ?」
「へへっwゆかねー、見つけたんよ。のっちを元に戻す方法!」
「ほんまぁ?!ゆかちゃんすごーい!」
びっくりした表情のあ〜ちゃんとのっち。
うわ、のっちなんてこれでもかってくらい目を見開いちゃってるよ。
犬になってものっちはのっちじゃねw
「ホント、ゆか頑張ったんだから」
鞄から今日学校の図書館でプリントアウトしてきた資料を取り出す。
「見て、コレ」
インターネットサイトのページをプリントアウトした一枚の紙。
そこに書かれているのは、ネット上で発見したひとつの噂。
「「・・・・しろい、、クジラ!?」」
予想通りの二人の反応に自然と笑みが零れる。
そりゃ、そーだよね。
ゆかだって、まだ完璧に信じてる訳じゃないもの。
「そう。白いクジラは願い事を3つだけ叶えてくれるんだって」
「じゃぁ・・・このクジラに願えば、のっちも元に戻る?」
さすが、あ〜ちゃん。ゆかが言いたいこと分かっとる。
「うん。可能性はある、ってこと」
「でも、白いクジラなんて本当におるん?」
「まぁ、伝説、だけど。。でも見たって人に今日、話聞いてきたんよ」
「んあ!もしかして、さっき!」
さっきまで黙って資料と睨めっこしてたのっちが突然叫んだ。
「公園で!?」
「あー・・・のっち見とったん?」
「・・・ゆかちゃんデートしとった」
「ええ!ゆかちゃん、彼氏できたん?!あ〜ちゃん聞いとらん!」
「ちょ、んな訳ないじゃろっ!」
「あれはどう見てもデーt」
「もぅ!のっちはちょっと黙っときんさい」
興奮して尻尾をバタバタ振るのっちの頭を軽く小突いた。
やっぱり、このワンコには躾が必要かも知れん。
「わふ〜ん・・・」
まさか見られてたなんて。
いや、やましいことは全然ないけどさ。
「半ズボン王子め・・」とか「ゆかちゃんにも手を出しおった」とかなんとかブツブツ言ってるのっちはほっといて、あ〜ちゃんと話を進めることにした。
「大学の先輩に紹介してもらったんよ。あ〜ちゃんも知り合いなんじゃろ?中田さん」
「中田さんって、、あの?」
「そう」
「旅行で海に行った時に見たんだって。それに昔そこで白いクジラが打ち上げられたこともあったみたい」
中田さんに聞いたその場所を口にする。
少し遠い。
だけど、日帰りで行けない距離ではない。
「明日、、三人で行ってみん?」
考え込む二人。
「ちょっと遠いし、、見つかるかどうかは分からん。けど、行ってみる価値はあると思うんよ・・・」
う〜ん。。やっぱり、現実離れしすぎ?
急だし、説得力もないし。。
「うん・・・行こう!」
先に賛成したのはあ〜ちゃんだった。
「試してみる価値大有りじゃ!!」
眩しいくらいのあ〜ちゃんの笑顔。
それにつられるように何度も頷くのっち。
「それに、きっと、、三人なら見つけられる!・・・・そう思わん?」
にっこり笑ったあ〜ちゃんにそう言われると、なんだか本気でできそうな気がしてきた。
やっぱり、こういうとこは敵わないなぁ。
あ〜ちゃんの言葉にのっちとゆかは顔を見合わせながら強く頷いた。
「のっち、良かったね。元に戻れるよ!」
笑顔で喜ぶあ〜ちゃん。
うん。元に戻れるのは嬉しい。
やっぱ、いろいろ不便だしね、犬って。
いつまでもあ〜ちゃんに迷惑かけられないし。。
あ・・・そっか。。
元に戻ったら、、
あ〜ちゃんと一緒の生活も終わっちゃうんだね。。
簡単に明日の計画を話し合って
「のんのんは寝坊して、あ〜ちゃんに迷惑かけんようにね!」
なんて言いながらゆかちゃんは帰って行ってしまった。
今日は早めに寝よう。
あ、でもその前に明日の準備もせんとね。
なんだか、本当に遠足の前の日にようにワクワクしている自分がいた。
そういえば、三人で遠くまで出掛けるのは久しぶりかもしれない。
どのおやつを持ってくの、持っていかないのでのっちとギャーギャー騒ぎながら準備も済ませて、ベッドに潜りこむ。
視線を感じて、ふと見下ろすとベッドのそばまでのっちが来ていた。
自然と上目遣いで、大きな目がきゅるんってしてる。
だから、その垂れた耳と潤んだ瞳は反則じゃろ。。
「あ、あのさ・・・」
「一緒に寝る??」
「い、いいの!?」
まぁ、最後かもしれんし、ってことでのっちを布団の中に入れてあげた。
「・・・お、おじゃましまーす。。」
なんてボソボソ言いながら、布団に入るのっち。
のっちの頭をなでなでする。
「えへへ」
だらしなく笑うのっち。
これ、絶対八の字眉になっとる顔じゃね。
そのまま頭を撫で続けてると、だんだん目がとろんとしてきて、見るからに眠そうな表情。
垂れた耳も、ぱたぱた揺れる尻尾も、やわらかい肉球も、
あー、ヤバイ、、かわいいなぁww
なんか・・・元に戻っちゃうの、もったいないかも、、なんて、ね?
ぎゅっと抱きしめたのっちはとても温かくて、逆に温もりに包まれてるような気がした。
最終更新:2009年03月30日 20:31