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Side N
あ。また光った。
ホント今の時期って雷が多いよな〜。

最初は小さく聞こえていた雷の音が、しだいに大きくなってきて…。

不意に左腕に、さっきまで少し離れていたあ〜ちゃんの体温が伝わってきた。
「のっちのっち。これとかいいんじゃない?」
一緒に見ている雑誌を指差しながら、会話は続いていく。
「いいねいいねぇ。」
だけど、指差している手と反対の手は、あたしの服の肘辺りをそろそろと弄っている。

その間も雷の光と音は近づいてきているらしく、大きくなる。

そして、一気に窓の外が真っ白くなった瞬間。
ものすごい音と共に、部屋の電気が消えてしまった。

「ありゃ、停電だ。」
あ。そうだ、いつも使っとる、アロマキャンドルでも使うか。暗いよりマシじゃよね?
「あ〜ちゃん、今キャンドル持ってくるけぇ、ちょっと待っとって。」
「…ぅ。」
暗くてよく見えないけど、小さい返事が聞こえた。

あたしは携帯の光を頼りに、キャンドルとライターを持ってきて、キャンドルに火を点ける。



灯火に照らされて浮かんできたあ〜ちゃんの姿。

膝を立てて、縮こまる様に小さくなって。
耳を両手で塞いで
少し明るくなったコトも気付かないくらい、ぎゅっと目は閉じられて、薄っすら目じりの辺りが光る。

そういえば、雷嫌いだったっけ…。
あ〜ちゃんの隣に行って、ぽんぽんと肩を叩くと、ビクッと大きく反応して目を開ける。

あたしを見上げる瞳がオレンジの炎と一緒に揺れて、こんな時に綺麗だなって思ってしまった。

恐いなんて言ってこないけど。
その瞳が…。
その震える体が…。

あたしに恐いって訴えかけてきている。

また、外が光る。

あ〜ちゃんはまたぎゅっと目を閉じて、あたしにピッタリくっ付いてくる。
だけど、決して抱きついては来ない。

基本、あ〜ちゃんは自分の弱い部分や悩んでてもそれを見せない。
明るく、元気に周りの人達に笑顔を絶やさない。
だから、あたしもいざという時にしか助けを出さない。
あ〜ちゃんのがんばりを邪魔したくないから。

でも、こういう時くらい頼ってくれても良いのに。
ホント強がりなんだから。けど、ちゃんと最後には…。

そんなあ〜ちゃんの変わりに、あたしがあ〜ちゃんを抱きしめる。



雷の光も音も気にならない程に、あ〜ちゃんを自分の腕の中に収める。
そうすると、あ〜ちゃんの震えが止まった。

へへ。少しは安心したかな?

次第に遠ざかっていく雷。
電気も点いて。

もう大丈夫と思って、腕の力を緩める。
またポンポンと呼ぶと、顔を上げるあ〜ちゃん。
「だ・い・じょ・う・ぶ。」
と口を動かす。

ゆっくりと塞いでいた耳から手を離して、
「…どっか、行ったぁ?」
「遠くに行っちゃったよ?」
涙で輝く目が、じっとあたしを見つめてる。

「うぅ…うっ。…っ。」
だんだん、あ〜ちゃんの顔が歪んでくる。

あ。来る。
と思ったのと同時に、ぶわっと涙が溢れてきたあ〜ちゃん。

「ふぇぇwwぇ!こわがったよww」
さっきまでとはまるで反対に、わんわん泣き出して、あたしの腕にすっぽり収まってくる。
そんなあ〜ちゃんの頭を優しく撫でながら
「いっぱい泣きな?」
我慢した分まで、泣いていいよって。

そう、泣きたいのが全部過ぎてから。
ちゃんと最後には、頼ってくれるんだ。



<雷>fin









最終更新:2009年03月30日 20:34