【N】
あれから1週間、学校にもバイトにも行かず家に引き篭もってた。
携帯の電源も切ってた。
誰とも会いたくなかった。特に、あ〜ちゃんとゆかちゃんには。二人に合わせる顔がない。
二人のいる大学も辞めようと思い、退学届けを書いた。
どうせ、大学も入りたくて入ったわけじゃなかったし。
学費を出してくれた親には悪いけど・・・。
ここも出払って実家に帰ると決めて、荷造りを始めた。
ほんとうに二人から逃げる形になっちゃうけど・・・。
こうでもしないと、気持ちに整理がつかない。
ダンボールにCDやらゲームやらを入れてると、チャイムがなった。
覗き穴の奥には、1週間ぶりに見る人物だった。
【K】
「ねぇねぇ、あ〜ちゃん。今日めっちゃ良い天気だから学校サボってどっか行こうよ」
あたしは教室の窓から見える、雲ひとつない青空を見ながら言った。
「う〜ん、どうしようかな・・・」
真面目なあ〜ちゃんは、授業をサボるって発想はないから返事に渋っている。
「行こうよ。そこら辺でシートでも買って、公園でピクニックでもしようよ」
「ピクニックって・・・ゆかちゃん。今時言わなくね?w」
「まーまー、そんな細かい事はツッコまんでw」
「うーん・・・」
あ〜ちゃんはまだ悩んでいた。
「一日くらいサボったって、大丈夫じゃけ。ほら、行くよ」
あたしは半ば強引にあ〜ちゃんの手を取って学校を出た。
今日は絶対にあ〜ちゃんを連れ出さないと行けなかったから、強引になってしまった。
あたしは自分ちのアパートの近くにある、広い公園にあ〜ちゃんを連れてった。
手入れの整ってる芝生に買ったばっかりのシートを広げる。
「ねぇー、ゆかちゃん」
「んー?」
「良い天気なんだけど、やっぱりこの時期はピクニックには向いてないね・・・」
「あぁ・・・、やっぱり寒かったねw」
そりゃそうだ、もうすぐクリスマスだもん。
「じゃあ、ちょっと温かい飲み物でも買ってくるわ」
「あっ、あ〜ちゃんも一緒に行くよ」
「いい、いい。あ〜ちゃんは荷物番しとって。何、飲みたい?」
「ホットココア!」
「OK!じゃ、買ってくるね」
「はーい」
あたしは、あ〜ちゃんを残してある場所へ行く。
【N】
なんでゆかちゃんが訪ねてくるんだ?
顔も見たくないって言ったのはそっちじゃん!
今更会ってどうするのよ?
どんな顔して会えばいいの?
どんな態度で接すればいいの?
わからないよ・・・。
あたしはすぐドアを開けないで、覗き穴でゆかちゃんの様子を観察した。
何度もチャイムを押している。
その場でウロウロしているけど、一向に帰る気配はない。
あたしは根負けしてドアを少しだけ開けた。
「何しに来たの?」
ドアを開けるなり、あたしはどうしていいかわからず、冷たく接してしまった。
「のっちに話すことがあって・・・」
ゆかちゃんはちょっと萎縮してる感じがした。
「話すことんなんてないでしょ・・・」
そう言ってドアを閉めようとしたら、ゆかちゃんが手で止めた。
「お願い、のっち!ゆか、のっちにいっぱい言わなきゃいけないことがあるの」
この前、言い争った剣幕のゆかちゃんと同一人物とは思えないほど、今日は穏やかな喋り方。
「今、忙しいから・・・」
「何、してるの?」
ゆかちゃんは玄関口から部屋の中を覗き込んだ。
部屋はダンボールが占拠してて、散らかってる。
「のっち・・・ここ出てくの?」
「そうだよ。でも、かっしーにはもう関係ないでしょ」
また冷たく言い放つ。
「・・・そうだね」
ゆかちゃんは悲しそうに呟いた。
「30分だけでいいの・・・。ゆかと一緒に来てほしい所があるの」
「だから・・・」
「お願い!!これが、最後だから・・・」
ゆかちゃんは頭を下げて懇願してる。
彼女のこんな姿は初めて見た。簡単に頭を下げる人じゃないのに・・・。
あたしはその姿に少し胸を打たれた。
そう言えば、よく見るとちょっと痩せた?
元々細いのに、それ以上細くなっちゃってんじゃん。
でも、顔色は良さそうだね。元気になってよかった。
今更ながら、ゆかちゃんを気遣う気持ちが甦ってきた。
それに『最後』って言葉も気になった。
「わかった・・・準備するからちょっと待ってて」
【K】
あたしはのっちのアパートの下で彼女を待った。
5分ほどすると、上から階段を下る足音が聞こえた。
のっちは黒いコートにスキニージーンズにブーツといった、いかにも彼女らしい格好だった。
あたしは途中、自販機であ〜ちゃんに言われたホットココアを買って、のっちを公園へ連れてった。
「・・・かっしー、なに?どういうこと?なんで、あ〜ちゃんがいるの?」
芝生の上に座ってるあ〜ちゃんを見つけたのっちは、軽くパニックになってあたしに尋ねてきた。
あたしは何も言わず、笑顔で答えた。
どうやら、あ〜ちゃんものっちの姿を見て、同じようにパニックになってるみたい。
今日あたしは三人の関係にケリをつける為、あ〜ちゃんを学校から連れ出しのっちを呼び出した。
最終更新:2009年03月30日 20:41