「のっち、次に変な事したら、タダじゃおかんよ」
お風呂を上がり部屋に戻る。髪をタオルで拭きながら、のっちの姿のあ~ちゃんが睨む。
うん。ごめんね。もう欲望には負けないよ。少し腫れた後頭部を擦りながら、あ~ちゃんの姿ののっちは頷いた。タンコブかな?コレ。
夜11時。
もうそろそろ寝ないと。今日は疲れた。かなり眠い。
入浴中に、あ~ちゃんのママが敷いてくれた布団に潜る。あぁ、目を閉じたら今すぐにでも眠れそうだ。
「のっちはベッドで寝て。誰か入って来た時に逆やと変じゃろ?」
そっか。あ~ちゃんは賢い。細かいことまで気が付く。凄いなって思う。あ~ちゃんのベッドかぁ。ごめん鼻血が出そう。
「じゃ、遠慮なく…」
「枕にヨダレ垂らさんでよ」
はい。無理だと思うけど。のっちはベッドに潜り込む。あ~ちゃんのベッドだ。フワフワで気持ち良い。しかも良い匂いがする。あ~ちゃんの匂いだ。
何かムラムラした物が胸の奥を熱くさせる。間違いない、風呂場の時と同じ物だ。殺られたハズの悪魔が、地獄の谷の底から甦る。さらにパワーアップして。
良く考えたら、電気を消して、あ~ちゃんが眠ってしまえばコッチの物じゃんか。触り放題だ。
悪魔が雄叫びを上げた。天使は影すら見えない。これが最大のチャンスだよ。やってやるよ。
「…のっち」
「はい?」
「またやらしい事、考えとるじゃろ」
ドキッ。なんでバレたん!もしかして、のっち、サトラレ?
「か、考えとる訳無いに違いない!」
しまった。動揺し過ぎて、もはや日本語すら危うい。完璧にバレた。
「もー、のっちのアホ!なんでそんなスケベなんよ、信じれんわ」
クッションを投げられた。素早くキャッチ。危ない危ない。まぁ当たってもダメージは少ないけど。
もうバレたんなら仕方無い。開き直る。これしかない。
「だって、あ~ちゃんの事が好きなんじゃもん」
そう言うと、あ~ちゃんの顔が真っ赤になった。あ、これじゃ告白みたいだ。バカバカ、のっちのバカ。
「…そーゆーのは、体が元に戻ってから言いんさいよ…」
「え?」
小さな声で聞き取れなかった。だけど、照れてるあ~ちゃんを見ていたら、コッチまで恥ずかしくなるよ。
「ね、寝よっか!」
空気に耐え切れずに、そう言った。頷くあ~ちゃん。
「その前に」
あ~ちゃんの目が変わった。うん。凄い迫力だ。自分って、こんなに目力あったんだね。ビックリ。
あ~ちゃんが、引き出しを探っている。何を探しているんだろう。取り出したのは、手錠のオモチャ。オモチャだけど、鍵付きでしっかりした作りだ。なんか昔、祭りのクジで当てたとかって言ってたっけ。
「それ…何に使うんよ」
疑問に思って尋ねる。すると、
「のっちが変な事をせんように…、こうするんよ」
カシャン、カシャン。
…ちょっと待って。両手に手錠をかけられ、ベッドの柵に固定された。手が動かせない。ベッドに寝転がったまま、のっちは状況整理のため、しばらく放心。あ~ちゃんは鍵を引き出しに戻した。
これは、どんなプレイだ。
「のっち、悪く思わんでね。これはあ~ちゃんの純潔を守る為に仕方が無い事なんよ」
わお。凄い芝居掛かったセリフ回し。純潔を守るって…のっちからって事ですか。悪魔が倒れた。瀕死状態だ。
これじゃ、触れない。生殺しだ。生殺しの使い方は合ってるのか分からないけれど。
「じゃ、おやすみ」
電気を消すあ~ちゃん。暗闇の中で、泣きたくなるのをグッと堪えた。
◆A-side◆
ちょっとやり過ぎかもしれないけど、丁度良い。これくらいじゃなきゃ、のっちがまたやらかすに違いない。
「ふんっ…うりゃっ」
暗闇の中、ベッドの方からジタバタと暴れる物音。
…諦めの悪い人じゃの。良い加減にしてよ。眠いんだから寝かせてってば。
起き上がって電気を付けた。ベッドの上で「やばっ」と呟き慌てて寝た振りをするのっち。アンタは一体何がしたいんよ。
「のっち…良い子は早よ寝んさい」
馬乗りになって、頬を抓った。プニプニしてて、我が頬ながら気持ち良い。
「痛たたた」
涙目になるのっち。手を動かせないから足をバタバタさせる。朝まで我慢してね。
ガチャ、
扉の開く音。振り返ると、そこには。
「…ち、ちゃあぽん…」
ちゃあぽんが、凍り付いている。あ~ちゃんも凍り付く。のっちもつられて凍り付く。
…この状況。マズい。
誤解だ。誤解だよちゃあぽん。違うんだよ。妹の手から、持っていたノートと鉛筆が滑り落ちた。学校の宿題でも教えて欲しかったのかな。
「お、お姉ちゃん…のっち…」
呟くちゃあぽんの顔は真っ赤。あぁ、まさかの展開。
今のちゃあぽんの心境は…。考え無くとも察しが付く。頭がグルグルしてきた。どうしよう、誤解を解かないと。
「こ、これは…その…」
上手い言い訳が思い付かない。のっちに助けを求めようと、目をやると、寝た振りをしているのっち。
こんのアホー!!一人だけ逃げよってからに!
「ご、ごめんね邪魔して…し宿題は自分で頑張るけぇ、気にせんで!」
ちゃあぽんは落としたノート達を拾い集め、慌てて出て行こうとする。ちなみにちゃあぽんの部屋はココの隣。
「ま、待って!これは違…、」
「だ大丈夫じゃよ!耳栓するけぇ、気にならんし…」
大丈夫じゃないよ。てゆーか、何を想像してるか知らないけど、全然そんなんじゃないからさ。
ちゃあぽんが逃げる様に去って行く。なんで。なんでこんな事に。お姉ちゃんは、そんなんじゃないんだよ。ちゃあぽん…。
バタン、
むなしく扉が閉まった。
終わりだ。もう、終わりだ。電気を消して、布団に潜る。なんだろ。目から何かが溢れてくるよ。止まらないよ。
「あ~ちゃん…ドンマイ」
のっちの声が聞こえた。
全部アンタのせいだろ。一生呪ってやる。
しかし夜はまだ、終わらない…。
◆5:End◆
最終更新:2008年10月10日 16:14