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あれからあたしはどうやって家まで帰ってきたのか、何も覚えていなかった。
重たい目を開けると、アパートの鍵が少し離れた所に放ってあって、畳の上に俯せに倒れているのに気付いた。

…頭が痛い。背中がゾクゾクする。体がやたら熱い。
夏風邪、かな…。やっぱり馬鹿しかひかないっての、ホントだったんだ…。


あたしは、今まで二人の何を見てたんだろう。
今まで、ゆかちゃんの何を見てたんだろう。
ゆかちゃんと微笑みあって、キスして、抱きしめあって。
…何も。
何にも気付いてなかった。

…ホント…馬鹿みたい、だ。


「………のっち…?」
ぼんやりとする視界に映るのは、びっくりした顔のゆかちゃん。
…夢?
夢なら、いいのに…。

でも、それは現実だと気付く。
「すごい熱…。のっち、お布団まで歩ける?」
心配そうにゆかちゃんが見つめている。


ひんやりとした手が、あたしの体に触れている。

…ゆかちゃん。もう、あたしに構わなくていいよ。
あ〜ちゃんの傍にいる方が、きっとゆかちゃんは幸せなんだから。
好きな人を抱いてあげられない臆病なあたしより、情熱的にゆかちゃんを抱いてあげられるあ〜ちゃんといる方が、きっと…きっ、と…。



それから、あたしは気を失ったみたい。
気がついたら、いつの間にか布団に入っているあたしの手を、ゆかちゃんの手がぎゅっと握っていた。
「…のっち…」
「ゆかちゃん…?」
「大丈夫…?まだ熱あるみたいじゃけぇ、お薬飲まなきゃいけんし…今おかゆ作る、」
「いいよ…ゆかちゃん…」
立ち上がろうとするゆかちゃんの手を引く。

…今はそれよりも、ゆかちゃんに言わなきゃいけない事があるんだ。


  • 続-






最終更新:2009年03月30日 20:45