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暑い暑い夏休みが終わった。

ヤな季節が過ぎ去っていった。


のっちが、海外へ行っていたのは
ある意味、よかったのかも、しれない。


自分のキモチ
自分の置かれている状況、、、


見直すにはいい機会だった。



けど
キモチは、未だ不安定。。
状況は、、、きっと、もう変えられない。

変えられない?



夏休み明けののっちは
どこか、オトナになった雰囲気、だった。
オトナ、、は言いすぎ、かな。。

けど、確実に成長していた。


この時期
人は驚くほど、成長する。
もうすでに、自分が経験済みの事実。


きっと、彼女は
これから、どんどん大きくなっていくだろう。


ゆかに、それを妨げる権利なんか、ない。

羽ばたいていく
真っ白くて大きなツバサを
折ってしまうことなんて、、、



臆病になりつつあることが
あなたに惹かれてる証、だって

きっと、どっかで気付いている。

そして、そっと蓋をしてきた。


相変わらず
正面から向き合えない、自分。


のっちがもうすぐ誕生日らしい。

変わらず、のっちの情報は途切れることなく入ってくる。



誕生日、、、か。


別に知らぬフリだってできただろう。
だって、そんな話、したことないし・・


けど・・


深みにはまっていく自分をとめられなかった。



ちっさなケーキを用意した。

部員たちが帰って、のっちがくるであろう時間までに

簡単に準備をする。


今日は、誕生日前日。
明日でも、都合は悪くない。
けど
みんなと、一緒はヤだ
なんて思ってしまって。

誰よりも早く、お祝いをしたい。。


ひと段落して
のっちを待つ。

いつもの時間になっても現れない。。


今日は来ないのだろう、か?

だとしたら、今のゆかは
あまりにも滑稽だね。


胸の鼓動を押さえつけながら
のっちがくるのを、待つ。


あ、きた。

もう、足音でわかる。



「失礼し、、まぁ、、、、」


のっちが、コトバを失う。


「誕生日おめでと、のっち」


戸惑って、動けないのっちの手を引いて
部室奥のイスまで、連れて行き座らせる。


「ま、1日早いんだけどね」

「…な、んで・・」

未だ、状況を把握しきれていないようなあなた。


部員の子から、聞いたんだよ、て。

モテてるね、って少しほのめかす。


のっちは
別に、、、って、あまり興味なさそうで・・


「やばいっ・・」
「嬉しすぎて、ちびりそう」

「ははっ、大袈裟だよっw」



のっちが、ろうそくの火を吹き消す。



「18歳、おめでとう」


気付けば、もう
窓の外は、日が暮れ始め
部屋の中は、ぼんやりと薄暗い。



「電気、つけるね」
そう言って立ち上がった瞬間
腕を掴まれた。


ん?

のっちに視線をやると
微かな夕日の残り日を反射させた
大きくキレイな瞳に捕らわれた。



「ほんと、ありがとう。。。ありがとう。。。。」


ただその一言が
ストレートに胸の奥まで突き刺さり・・


時間が止まった。

いや、正確には
二人だけを残して、時が止まった。



すっと、腕を伸ばし
彼女の首元に回す。


視線はもう、外せない。


彼女の腕も伸びてきて
ゆかの背中をとらえ、引き寄せられる。


きっと、この瞬間だったんだ。

主導権なんてくだらないものが
ゆかの手の中から、消えたのは。



バランスを崩し、
のっちの膝の上に腰掛ける体勢、に。


そっと抱きしめられ
さらさらと、長い髪を撫でられる。


心地よい瞬間。



素直に
幸せだ、な
そう思えた。



のっちがゆかとの間に
少しだけ、距離をとる。

少し斜め下にいるのっちを見つめる。
さっきと変わらない
大きくキレイな瞳。



「プレゼント、、、なに、がいい?」


のっちの答えは
予想外なもの、だった。


—ケイタイの、番号が知りたい


戸惑いが表情に表れたのだろう


のっちの瞳が揺らいだのがわかった。


胸の奥を締め付けられる。

間違いなく、これは
狂おしいほどの愛情、だ。



「わがまま、言ってるのはわかってるんだ・・
 けど、、、絶対に、かけない、から・・・」
「だって“先生”として、“生徒”に
 個人的に連絡先なんて教えられないでしょ?」
「・・けど、、、、のっちは
 先生と、つながってるんだって思える・・
 そう思える、なにかが欲しくって…」


再び
そっと抱き寄せられる。


「絶対、、、迷惑はかけない、、から・・」



もう引き返せないところまできていたんだ・・


ようやく自分のキモチをはっきりと悟った。


認めた。



そっと
のっちの頬に口付けを・・・


「…わかった、、、教えてあげる」


きっと、彼女にとっても
予想外の答えだったんだろう。


驚いた表情のまま、とまっている
彼女の目の前に
ケイタイを差し出した。



「のっちこそ、、、ありがとう」


彼女がそう呟いたのを最後に

コトバは途切れた。


窓の外の夕日は、もう沈んでしまったようだ。


部室は真っ暗になった。



何も、しなかった、、、、なにも。


ただ
彼女の心音に包まれ
暖かな体温に身を預けていた。


絡められた指先は

解けないようにと願った、愛情の証だったのか?


それとも


もう解くことのできない
未来を暗示していたのだろうか・・



のっち?


ごめんね。
気付くのが遅すぎたね・・・

こんなにも、あなたが愛しいことに。

もうどこにも
戻れなくなってしまってから気付くなんて・・







最終更新:2009年03月30日 21:03