(N)
結局今日はゆかちゃんのメールばっか気になった
気になって気になって仕事も手につかんかっ
…いや、仕事はちゃんとした、しましたよ
大学の人か…今みたいに騒がれる状況になる前に交換してたんだろな
ラッキーだよねその人
ゆかちゃんとメールできるなんて
今もしてんのかな…?
…やだなーあーもう!
だめだ!寝れん!
時計に目をやると午前1時を回っていた
さすがにもうしてないかな
こんな時間だし、明日も仕事だし…
あ〜モヤモヤするよー
そもそも、なんでメールなんかすんのさ
めんどくさいなら無視したらいいじゃん
ハッキリせんから脈ありかと思われてしつこくされるんだっての
…はーもうやめやめ
こんな事に嫉妬してアホみたいじゃ
のっちはアホだ
メールとかどうでもいいじゃん
そうだよどうでもいいよ
そんなもんに負けないもん
負けるようなアレじゃないもんきっと
のっちの方が勝ってるもん絶対
そうだ、そうに違いない!
って、勝ち負けってなんなん…
…だめだ
いつの間にかこんなになってたんだ
こんなにこんなに大きいんだ
もう、だめだ
(K)
“それじゃあまた大学でね”
なんて心にもないことを送って、携帯を閉じる
あーあ疲れたな。今日は疲れた
精神的にも疲れたよ今日は
時計を見ると夜中の1時を回ったところで
ゆかまだ何もしてないよ
なんて思いながらベッドに仰向けになった
のっちのベッドに比べたら少し小さいゆかのベッド
ふわりと優しく体が沈み込む感覚がない
のっちの匂いも、しない
…とりあえずお風呂入ろ
と、重い腰を上げた時
家について、マナーモードをとっぱらっていた携帯がうるさく鳴った
なんだろ、まだなんかあんのかな?
もうバイバイしたのにな
そう思いながらよく聞くと、これメールじゃない
電話の着信音だ
誰?
画面を見て一瞬思考が止まる
…のっちだ
止まった頭がせわしなく動く心臓にのせられて
働きだすのに時間はかからなかった
のっちだのっちだのっちだ
珍しい人からの着信に心ははずむけど、
通話ボタンを押す指には無駄な力が入る
「はい、」
『あ、ども』
「あ、ども。ふふっどうしたん?」
『ん…いや、うん』
「へへっなんよ〜。なんか用事?」
『…用事ないとかけちゃダメなん?』
「!どうしたん…?」
のっちのセリフに普通に戸惑う
どうしたんのっち
『今だめ?』
「や、そういう訳じゃないけどさ。珍しいから…」
『だね。うん、ただ…』
「ただ?」
『いや、うん』
「うん、ばっか」
『うん…じゃなくて、えっと…ちょっと声が…』
「声?」
『聞きたい、なって思っ、て』
「…のっ、」
『あぁー!嘘嘘!やっぱ嘘!冗談!ほんじゃ、』
「待って!待って…待ってよ…」
『…』
何それ何それ!なんなんよそれ!
のっちどうしたんほんと!
頭は軽くパニック状態に陥る
けど、トクトクと静かに、でも確実になっていた鼓動が、
ドクドクとうるさく騒ぎだすのがわかった
「声…ゆかの声聞きたかったん?」
『………ん』
「へへっ、何それ。嬉しい」
『ゆかちゃん』
「なぁに?」
『のっちのこと…好き?』
「…好きだよ…?」
『そっか、ほんじゃいいです。んじゃ切るね、』
「ちょっとやだっ切らんで。…なんよそれぇ、」
『…確認?』
「なんの確認よっ。アホ…」
『…アホだもん。』
「のっち何考えとんのかわからん…」
『ごめん』
ああもぉ…今ののっちはおかしいよ
ゆかのスイッチをわざと押しにきたみたい…
好きだよ、好きに決まってんじゃん
わかってるくせに
知ってるくせに
もう…ずるいよ
「のっち?…好きだよ」
『うん…、ゆかちゃんあのね、』
「好き…」
『…』
「好きだもん。大好き」
『…あっあのね、』
「のっちは…今、何考えてるの?ゆかのことどう思ってるの?」
自分から出た言葉に戸惑う
どう思ってるの?なんて…聞いてどうするの?
せかしたって何もいいことないのは分かってるくせに
けど、聞かずにはいられないよ
けど…やっぱ怖い
『…うん、あのねゆかちゃんのっちね…あの、』
「あ…やっぱいい、」
『好きみたい、です』
「!」
言葉が出なかった
心臓にぐるぐる巻きになってた細い糸がプツっと切れたみたいに
一気に体中の血が流れこむ
ふわっと膨らんだかと思ったら、今度は勢いよく押し出されて
途端に苦しくなる
今なんて、言ったの…?
『…、ゆかちゃんのこと好きです』
「…うっそだぁ」
『嘘じゃないよ。』
「だって、だって!今日も全然関心なかったくせに…」
『今日?』
「メール…」
『あぁ、関心ないように見えた?』
「…うん」
『めちゃめちゃ関心あるよ…。今日はそればっか気にな、うん』
「うそ…」
『ほんとだって』
「ゆかを好きなの…?」
『…うん。好きです』
「………」
『ゆかちゃん?』
「今からそっち行っていい?」
『へっ?だめだめ!もう遅いから危ないよ!』
「でも…!会いたいよ。のっちに会いたい」
『…また明日すぐ会えるじゃん』
「今会いたいんだもん…行くね?」
『待って!じゃあのっちが行くから!』
「えっ?でも、」
『10分で行くから動かんでねっ』
プツっと切れたのっちの声
のっちがくる。ゆかに会いにくるんだ…うそ
どうしよ…何これ急展開すぎるよ
好きって言ったよね?ゆかを好きだって
のっちが…?うそ
やばいこれ現実なん?
にぎりしめた携帯に目をやると
時計が目に飛び込んできた
あっ…すっごい遅いや
どうしよ、のっち危ないじゃん!
わーゆかアホだ!
でも会いたい!
あーどうしよう!
さすがにパニックだよ!
…少し落ち着こう
目を固くつむって携帯をにぎりしめて大きく息を吸った
焦って動きまくる心臓に新しい空気を送り込んでやると
少し落ち着いてきた気が…する
ふぅっと吸った息をはくと、
さっきのやりとりが頭の中で勝手にリプレイされる
『好きみたい、です』
のっちの言葉
これは現実で、夢なんかじゃなくて
でもふわふわと思考が漂う今は真実味がない。
感じられない
でもこれは現実で…
のっち…とりあえず今は早く会いたいよ
けど…危ないよね?大丈夫かな?
あぁ分かってるのに…危ないから来ないでとは言えない自分がいて
会いたい気持ちが強すぎる…早く…会いたい
会いたい
最終更新:2009年03月30日 21:20