◆A-side◆
キスの感想をしつこく聞いてくるのっちをグーパンチで黙らせ、あ~ちゃんは布団の中で目を閉じた。
妹の上手なキスに動揺を隠せないまま、あ~ちゃんは眠りについた。
◆◇◆◇
体が入れ替わって、二日目を迎えた。
爽やかな朝。
良く寝れた。すっかり体が軽い。のっちの手錠を外して、朝ご飯を食べて、着替えて、準備して…。
だが、ちゃあぽんの顔がまともに見れない。なんか、あのキスの感覚が甦ってくる…。色んな意味で成長した妹に複雑な心境です。
「ちゃあぽん、早いね?」
でも、やっぱり可愛い妹だから、他愛も無い会話くらいしたいんだ。
「あ、のっちおはよう。今日、日直当番だから早く行かにゃならんのよ」
昨夜の事は、忘れたみたいな明るい笑顔。いつもの爽やか美少女なちゃあぽん。眩しいよ。
「行ってきまーす、」
手を振って出て行くちゃあぽん。
「行ってらっしゃい!」
そう言って手を振ってお見送り。すると、駆け出したちゃあぽんが立ち止まって、振り返った。ん?忘れ物かな。
「…お姉ちゃん…?」
首をかしげるちゃあぽん。
え…。
「まさかね」
小さく笑って、ちゃあぽんは駆けて行った。
ちゃあぽんの後ろ姿に目を細める。ビックリした。バレたかと思った。
「あ~ちゃん、遅刻するよ?」
のっちが靴を履きながら言う。うちらも早く学校に行かなくちゃ。
ちゃあぽんの後を追う様に、うちらは家から駆け出した。
◆N-side◆
二人で登校。なんだか緊張する。自分は今あ~ちゃんなんだ。周りの子達の視線が無駄に気になる。
学校の前で、ゆかちゃんと合流した。二人が入れ替わった事を知っているのは、ゆかちゃんだけだ。
「昨日あれから、大丈夫じゃった?」
「大丈夫じゃないよぉ、のっちがやらしい事ばっかするけぇ」
あ~ちゃん、それは言わなくて良いよ。ゆかちゃんがクスクス笑う。
昨日の事を報告しながら、生徒玄関に辿り着いた。あ~ちゃんはのっちの下駄箱に向かう。のっちだけクラスが違うから、少し離れているんだ。ちなみに校舎も一人だけ別。
靴を履き換えて、あ~ちゃんを見る。なんだか、固まっている。様子が変だ。
「どうしたん?」
近付いて、声をかけた。あ~ちゃんの手には無数のラブレター。今日は多い方だな、なんて考えてると、あ~ちゃんが口を開いた。
「モテるねぇ、のっちは」
そう言ってニッコリ微笑むあ~ちゃん。なんか恐い。目が笑ってないよ。
「え、…そう?」
恐いよ。逃げ出したいよ。助けてゆかちゃん。ゆかちゃんの方を見ると、あからさまに目を逸らされた。なんて薄情な。
「ちゃあぽんにも迫られとるしねぇ」
そ、それは…。てか実際に迫られたのはあ~ちゃんだし、のっちは見てただけだし。
「え?のっち、ちゃあぽんに迫られたん?」
ゆかちゃんが食い付く。もう、こんな話好きだよね、女の子って。まぁ事実ですよハイ。
なんてゆーか、気まずい。ラブレターは毎日貰ってるけど秘密にしてた。すぐにバックに隠してバレない様に。バレたら嫌われる様な気がして、言えなかった。
「のっち、こんなモテるんじゃったら誰か可愛い子と付き合いんさいよ」
その言葉に、胸が痛んだ。張り裂けそうに痛い。苦しいよ。沈黙が襲う。耐えれんわ、もう。
「あ~ちゃんが付き合ってよ」
のっちはこの時、何を考えてたんだろ。自分で抑制出来ない冷たい感情が一気に熱を奪った。
「のっちが好きなんは、あ~ちゃんじゃ。他の子に何言われようが変わらんけぇね」
そう言って、ゆかちゃんの手を引いて教室に向かった。あ~ちゃんを残して。
「のっちーそんな怒りなさんな」
「だって…他の子と付き合えとか言うんじゃもん…」
「本気で言っとる訳無いやん。アレは嫉妬なんよ、可愛いヤキモチじゃ」
え。嫉妬?ヤキモチ?あ~ちゃんが?
「それほんまなん!」
「もう、のっち乙女心分からな過ぎじゃろ」
ゆかちゃんは、やれやれと溜め息。ヤキモチ焼くなんて、どんだけ可愛いんよあ~ちゃん!ツンデレーションめ。素直じゃないんだから。
「どーしよ…謝って来た方が良ぇんかな…?」
「今はやめといた方が良ぇよ。あ~ちゃんも今頃…」
そこまで言って、ゆかちゃんは教えてくれない。あ~ちゃんも今頃…何よ。気になるじゃろ。
うちらは教室に入る。あ~ちゃんの席は、確か窓際の一番後ろ。
◆A-side◆
のっちの言葉が信じられない。ずっと頭の中でリピートされている。
「のっちが好きなんは、あ~ちゃんじゃ。他の子に何言われようが変わらんけぇね」
…凄くドキドキした。あのヘタレのっちが、あんな事を言うなんて。ずっと胸の高鳴りが止まらない。
どうしよう。カッコ良かった。王子様みたいだった。
でもやっぱり、言われるんなら本当ののっちに言われたいよ。また言ってくれるかな?言って欲しいな…。なんて考えながら、のっちの教室に入るのだった。
◆◇◆◇
午前の授業は難なく終了。意外と順調で拍子抜け。大変だと思ってたのに。
「お腹空いたぁ~」
そう言いながら、のっちとゆかちゃんがお弁当を持ってやって来た。
「のっち、変な事してないよね?」
お母さんの作ってくれたお弁当を食べながら尋ねた。ビクッとして、小さくなるのっち。
「またやらかしたん!」
そう声を荒げると、さらに小さくなる。子犬みたいにプルプルしながら。
「ちょっと居眠りして先生に注意されただけだよね?のっち」
ゆかちゃんが慰める様に言う。
「ダメダメダメ!あ~ちゃん居眠りなんてせんけぇね」
先生には優等生で通ってるんだ、評価下げる様な真似だけはよしてよね。
「ごめんって!午後からは、ちゃんとするから許して!」
謝るのっち。眉毛がハの字。自分の顔だから微妙な感じだ。
「午後からは内科検診じゃよ?」
ゆかちゃんの言葉に、うちらは固まった。
◆7:End◆
最終更新:2008年10月10日 16:20