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「もう、今日で…あ〜ちゃんと会うの、最後にする…」
「……」
「…ごめんなさい…」

…ああ、本当に終わっちゃうんだね。
過去の後悔も、引きずったままの想いも、断ち切らなきゃいけないんだ…。


滲む視界はゆらゆらと彼女の姿を認識出来ずに、それでも何となく、彼女も泣いているのだと感じる。
「……ばいばい、あ〜ちゃん…」
心の奥の気持ちが、今度こそ終わりを告げた。






「…もう、帰るんだね」
見送りに来たのは、意外にものっちだった。

「てっきりのっちは、あ〜ちゃんの顔も見たくないんじゃないかと思っとったよ」
「まさか」
「…それぐらい、憎まれても仕方ない事したのに」
「それでも、やっぱりあ〜ちゃんだからさ…のっちには、そんな事出来んかった」
のっちはそう言って、あの頃と何等変わりない八の字眉をした。
でも、あの頃より何倍も大人になって。



…何だか、淋しく思った。

「…のっちは、これからもゆかちゃんの傍にいるの…?」
「うん…まぁ、友達としてだけど…」
「そう…」
「あ、でもそれはあ〜ちゃんの事があっただけじゃなくて……のっちも、一歩を踏み出さなきゃなって思って、だから」
「…どういう事?」
途端に、蝉の声が辺り一面に広がった。
ゆらゆらと揺れる地面を、のっちは目を細めて見ている。

「過去の自分に、さよならする為だよ」


優しく微笑むのっちに、ゆかちゃんへの想いに対する臆病の影は、微塵も感じられなかった。

…きっと彼女も、後悔と想いの板挟みになっていたに違いない。
それでも、前を向いて行かなきゃいけないと悟ったんだ。
多分きっと、ゆかちゃんも…。

もう二度と、後悔しない為に。


「…電車、来たね」
「うん」
「また帰ってきてよ。のっち、待ってるから」
「それは……どうじゃろ…」
「……ゆかちゃんも、きっと待ってるよ」
「……。そうだと、いいけど…」
発車音が流れる。
…閉まる扉の向こうで、のっちが微笑んでいた。
「……ありがとう」
もう二人には届かないけど、ありったけの想いを込めて呟いた。




流れる景色の中、なんとも短くて濃い夏休みを思い返す。
でもそれは、決して後悔ではなくて。
「……」

それから思い出すのは、やっぱりゆかちゃんの事。


…あたしにとって彼女は、世界で一番大切な女の子でした。


  • 終-








最終更新:2009年04月09日 23:17