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「のっち、爪伸びたね」

のっちの手を取り、あ〜ちゃんはめいっぱい顔を近付けてそう言った。そういえば伸びたかも。あ〜ちゃんはのっちの体に敏感だ。
髪が伸びたとか、ニキビが出来たとか、顔が赤いだとか、唇が乾燥してるだとか、痩せただとか、太っただとか。いちいち変化を見つけてはのっちに教える。自分でも分かんない様な事でも、あ〜ちゃんはすぐに気がつく。

「あ〜ちゃんが切ってあげる」

ピンクの可愛いポーチから爪切りとやすりを取り出すと、なんとも機嫌良くのっちの爪を切り始めた。ぱちん、ぱちん、飛び散った爪の欠片はのっちが集める。
さっきまで体の一部だった物が、こんなにも呆気なく捨てられてしまうなんて。あ〜ちゃんの手によってゴミになれるなら、お前達も本望だろう。

綺麗に切り揃えると、今度はやすりをかけ始めた。のっちの指先に真剣になってるあ〜ちゃんは最高に愛しい。のっちも真剣にその姿を見つめた。
ふうっと息を吹き掛けられると、くすぐったくて指がビクッと震えてしまった。するとあ〜ちゃんは目線だけをこちらに寄越し、小さく笑った。

チクショー誘ってやがんのか。

「今ね、トップコート塗って、マニキュアも塗ってあげるね」
「うん…」

透明のトップコートがポーチから出て来た。ピンクやらイエローやらのマニキュアも顔を出す。毎日持ち歩いてんだ。さすがだな、あ〜ちゃん。真剣な表情も可愛いな。
短い丸い爪からはみ出さないように、あ〜ちゃんの手は震えていた。独特の強烈な匂いは、嫌いじゃない。あぁ、はみ出しちゃった。あ〜ちゃんは慌てて長い綺麗な爪でのっちの爪と皮の間をこすった。

トップコートを全て塗り終えると、乾かして、と言われてのっちは爪に息を吹き掛けた。透明に爪が光ってる。綺麗な光沢。だけどあ〜ちゃん、右手の人さし指は少し切り過ぎだと思うんだ。まぁ別に良いけど。

「どの色が良い?」

マニキュアをズラリと並べる。あ〜ちゃんと同じの、って言ったら「お揃いなんて嫌」と意地悪な顔をされた。結局あ〜ちゃんが選んだのは一番減りの少ない濃いブルー。
ちょっとセンス悪いよあ〜ちゃん、その色は無いと思うな。だけどまぁ、良っか。あ〜ちゃんに体の一部を変えられるなんて、そんな幸せな事は他にないんだし。


だけど変えられるなら、同じが良かったな。




End






最終更新:2009年04月09日 23:23